第59話 王城にて
ウエストが苦しい……
きつめにハーフアップにされた髪が引っ張られて地味に痛い……
化粧で顔が強張る……
公爵令嬢としての装いなんてするもんじゃない。
すっぴんで締め付けもなく、適当に束ねていれば良かった庶民万歳と改めて思った。
しかも、
「リザベッタ~っ」
王城についてきた半泣き状態の父がウザい。
泣くくらいなら、付いて来なきゃいいではないか。
すれ違う従僕や侍女がぎょっとしている。
父が青い顔で縋るように聞いてきた。
「大丈夫だよな」
父よ、召されたからには、大丈夫でなくとも登城はしないとだめだろう。
「課題はクリアしたんだよな」
オロオロとするばかりで公爵家の長としての威厳が皆無なんだが。
「失敗したらどうする~っ」
父よ、娘を信じなくてどうする。
銀太とアルちゃんがかかっている以上、失敗できないとなぜ分からない。
あの子たちへの飛び火は何が何でも阻止してみせる。
腹黒王太子に負けてたまるか。
脳内の小久保恵子もブラックスーツを身に纏い、眼鏡を右手で押し上げた。
完全に戦闘態勢に入っている。
ふふふ······
小久保恵子、三十五歳。伊達に年は取ってないところを見せてやろうではないか。
廊下の向こうには謁見の間へ続く大扉が見えていた。
謁見の間には王太子や宰相を始め、高位貴族や各所の大臣が集まっていた。
王太子妃に関することだけに、耳目を集めていることは理解できる。
だが、それにしてもひとが多くないか?
あっ、端っこにマリエッタがいた。
おおっ、お付きの三人もいるじゃない。
……なんでいるの?
シンメトリーな室内は天井が高く、巨大な窓からは陽光が降り注ぎ、神々しさを演出していた。
部屋の奥の玉座には王太子が座り、一段下がったところには宰相が立っている。
大臣や貴族たちは左右に分かれて列席していた。
私は顔を上げ、部屋の中央を胸を張って進む。
玉座の前で歩を留め、先ずは、王太子へカーテシーで挨拶をした。
続けて宰相へ。
「リザベッタ フォン エヴァンス、お召しにより登城いたしました」
「楽に」
王太子からのお声がかりがないと喋ることも動くこもままならない。
不便だ。
「さて、今日、召された理由はすでに伝えた通りである。リザベッタ嬢、分かっておるな」
宰相の言葉に私は頷いた。
「はい。ただ、期限まではまだ日数があったと記憶しております」
あと数日はあったはずだ。
早めに呼び出すのはどうなんだ?
それくらいの嫌味は言わせてもらう。
「確かに。だが、この時点で見通しが立っていなければ、課題を熟すことなどできまい」
「仰るとおりです」
そうね。
この時点で何の成果もなければ、アウトだわ。
「では始めよう」
王太子が書類を机に置いた。
「まず聞こう。リザベッタ」
王太子が怜悧な目で私を見る。
きたな。
ここからが本題だ。
その視線を私は姿勢を正して正面から受け止めた。
「お前の共済制度は、本当に成立するのか?」




