第21話 社畜が逃亡計画を立てる
物事は客観的に見ることが大事だ。
ダブルチェックできないなら、時間をおくのがセオリー。
とりあえず、今日は銀太と寝た。
朝。
眩しい光が差し込む中、私は机に向かった。
朝は頭が一番冴えている時間帯だと聞いたことがある。
よし。
…冷静に現状の確認をしよう。
計画では、生贄を用意し、断罪されるはずだった。
結果は――
断罪どころか、ヒロインポジションになっている……
おかしい。
どこで間違えた?
…想定外の事態への対応か?
抑えきれないお局根性か?
いや……全部か。
このままでは対極にあるヒロインだ。
それではダメだ。
目指せ、ヒロイン失格!
計画書を練り直す。
マリエッタ……✖(パンしか頭にない)
父……✖✖✖(論外)
王太子の取り巻き…✖(役に立たない)
王太子…✖✖(元凶)
アルちゃん…◎(正義)
関係者を書いてみて、ガックリと頭が落ちた。
……詰んでいる。
つくづく手駒に欠ける。
誰も当てにできない状況と知った。
味方は私ひとり。
計画を練ろうにも手駒がないから練りようがない。
消えたい…
消えて無くなりたい。
うん?
消える…そうだ。
消える=出奔!
この場から消えればいい。
透明人間になって消えるわけにはいかないからどうするか。
出奔すればいいのよ。
やっぱり、朝は頭が冴えている。
そうとなれば、出奔に必要なものを書き出さないと。
先ずは銀太。
これは絶対だ。
当座の生活資金。
居住先。
仕事。
これくらいか。
次、逃亡準備。
銀太はキャリーバッグに入れれば問題なし。
根っからの庶民の私だ。着替えなんで三日分あればどうとでもなる。
問題は生活資金と居住先、仕事だ。
居住先はできれば、王都内でそこそこ安全な地域。
住居に関してはペット可物件。これは譲れない。銀太がいる。間取りは一人暮らしだ。1LDKで十分。防犯面は譲れない。あと、できれば礼金・敷金なしだと嬉しい。
賃貸料の相場はいくらなんだろう…
くっ、早めに調べておけばよかった。
誰か知らないかな…?
貴族が通う学園で世間相場を知っている人物がいるかと言われるとねぇ…
あっ、いたわ。
マリエッタ!
実家は平民寄りの貧乏男爵家だと言ってたから、相場にはきっと詳しいはず。
街の様子も知っているだろう。
使える。
実物をみるのと話を聞くだけとでは大きな差がある。
重要だ。
居住先条件の下に”マリエッタに要相談”と記した。
次は…っと
生活資金と仕事かぁ…
リザベッタが持っている宝石類を売るって手もあるけど、ちょっとね。
足が付きそうだし、なにより自分のものじゃない。
あれらはリザベッタのもので小久保恵子のものではない。
稼がねば。
手っ取り早く稼ぐには日雇いのバイトだけど、お貴族様相手にそういう斡旋は当然こない。
一攫千金を手にしようにも為替相場もなければ株式相場もない。
父相手にオレオレ詐欺に走りそうだ。
…これは精神的慰謝料として最終手段で採っておこう。
何かないかな……
私が売れるものは……
王太子殿下から押し付けられたサファイア。
これは返品するからダメだ。
身体を売る。
売春斡旋法に抵触するし、春をひさぐ気もない。
なにより変な病気でも貰ったらと思うと、背筋が震えるので論外だ。
うーん…
何かないか…
ひねり出すのよ、頭から。
頭から…?
そうよ、アイデア!
アイデアを売ろう!
穴だらけの制度に対して改革案を提示して対価を求める。
FPの資格が役立つはず。
証券アナリストや簿記二級の資格だってある。
あの王城のザル体制ならいけるはずよ。
こんなところで、会社に無理やり取らされた資格が役立つとは人生分らないもんだ。
仕事も商会の事務をすればイケる。
お金をためて、猫喫茶と猫グッズ販売店を開く。
趣味と実益を兼ねた仕事。
休日には酒を片手に銀太…バラ色の未来だ。
やる気スイッチが押され、俄然やる気が出てきた。
私は時間が経つのも忘れ、計画書を書き続けた。
――逃げるために…




