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第19話 猫のためなら、犯人も暴く

広間に侍女たちを集めてもらった。

うん。

本当に広間だわ。

三十名以上人が集められても余裕だもの。

その広間の空気は重い。

侍女たちの他には、女官長、警務長官、そして、お呼びでない王太子殿下と王妃様がいる。

―出ていってくれない?


「王族の方は退出していただいてもよろしいでしょうか」


と言えないのが悲しい。

気を取り直して、私は侍女たちを見回した。

集められた彼女たちは、なぜ集められたのかが分からず、表情(かお)に不安と困惑を浮かべていた。

唇を噛んで緊張を隠す者、血の気の無い顔色をしている者と様々だった。

ざわりと落ちつかない彼女たちに


「静かに」


女官長の冷ややかな一声が飛んだ。

場が静まり返る。

よく見た光景だ。

女官長にシンパシーを感じる。

後ろにまで届くようにと心持ち声を高くする。


「行方が分からないサファイアのネックレスとイヤリングですが、先に結論から言います。保管されていた部屋にあります」


ざわりとする周囲


「探したけど無かったわよね」


「見当たらなかったわ」


囁くような声で否定が上がる。


「静かに!」


女官長に叱責され、口を噤む侍女たち。

日頃、女官長が彼女たちにどう見られているが伺い知れた。

…小久保恵子の同志だ。

女官長が私をきつい視線で射る。


「お言葉ですが、リザベッタ様、部屋中探した結果、見当たらなかったのですよ。それが、あるとおっしゃるのですか?」


「ええ」


私は一拍置いて


「あります」


「では、どこに?」


後ろの扉から警務官が入ってくる。

警務官は警務長官の耳元で何事かを囁いた。

知らせを聞いた警務長官の目が大きく見開かれ、信じられないと私を見た。

……やっぱり。

あったな。

コホンと一つ咳ばらいをすると、


「サファイアのネックレスとイヤリングが見つかりました」


警務長官の言葉に集められていた人たちが小さな声を上げて驚く。

王妃様が扇で口元を隠した。


「そんな…隅から隅まで探しましたわ」


女官長が呟いた。


「どういうことか、説明を、リザベッタ」


王太子殿下が促した。

私はゆっくりと頷いた。

―ここからが本番だ。


「一つ一つ説明していきます。誰も私からサファイアのネックレスとイヤリングのケースを渡されていないといことですが…」


私は侍女たちを見た。


「警務官から確認をされた方は左へ、確認をされていない方は右へ移動をお願いします。」


気崩れの音を立てながら侍女たちが左右に分かれた。

私は右に集まった侍女たちに


「私から受け取った方、手を上げてください」


「あ、あの……」


中ほどから、おずおずと一人の侍女が手を挙げた。

今にも消え入りそうな声だった。

前へ来るようにとお願いした。

びくびくしなが、小柄な侍女が前へ出てくる。

警務長官が咎める声を出した。


「なぜ、言わなかった!」


「だ、だって…聞かれなかったから…」


うん。

よくあったことだ。

聞かれなかったから言わなかったで、何度苦慮したことか。

ここにもいるのか、このタイプが。

はあ―

報・連・相をどう考えてるんだ。


「責めているわけじゃないから。受け取ったケースはどうしました?」


「あ、えっと、ちゃんと棚に戻しました」


「どこの棚に?」


「開いている場所が無かったから、隣の部屋の棚です」


「戻す位置は決まっている?」


「いいえ。決まってないです」


「ありがとう。警務長官、サファイアのネックレスとイヤリングはどこにありましたか?」


警務長官が憮然とした表情のまま


「もう一つの保管部屋です」


「それは隣の部屋ですよね」


「そうです」


私は王妃様や王太子殿下の方に顔を向けた。


「つまり、“盗まれた”のではなく、“置き場所を変えられた”可能性です。今回のことはいくつもの不備が重なったために起こったと推測されます。一、誰でも保管室に入れたこと。二、保管場所が定まっていないこと。三、確認を全員に行わなかったことです」


「リザベッタ、解決策はあるか?」


「ええ。王太子妃教育を受けているにあたり、管理が杜撰だと感じました。王太子妃教育資料一つを取ってもそうです。体系別、年代別に分かれていない。これでは探すのに時間がかかる上に無くなってもわかりません。整理整頓は基本です」


そこから、一気に、お局、小久保恵子が改善案を並べた。

保管庫に入る人間を決める。

保管庫の入退出の管理簿の設置。

宝物類のリスト作成と保管位置の決定…等々。


「このようにすれば、紛失状況や関わった人間、探す時間の短縮ができます」


王妃様がほうーっと息を吐かれた。

女官長と警務長官は難しい表情をしている。

王太子殿下は目を瞑り、腕を組を組んでいた。

侍女たちはキラキラとした瞳で私を見ていた。

……調子に乗って不興をかったか?


これまでの王城の体制に容赦のないダメ出し。

そりゃ、王族としては面白くない。

女官長と警務長官もプライドズタズタ。

しかも、指摘したのが成人前の小娘だし。


(これは…もしかすると、もしかするかもだぞ、リザベッタ)


と言って、小久保恵子が脳内でいそいそと祝賀会の準備をしている。


「リザベッタ…」


王妃様の声がする


「こんな重箱の隅を粗探しするような嫁はいりません」


とか言うにかな?

こころの準備をしとこう。


「はい」


一瞬の沈黙。


「見事!」


脳内の小久保恵子の頭上に祝賀会の看板が直撃した。

痛みにうずくまる姿が鮮明に映る


「へ?」


「この短期間での問題の洗い出しに解決策の策定。未来の王妃としての素質は十分。誰が異議を申し立てようと私が退けましょう」


は?

いや、退けないで!


「女官長として、リザベッタ様を於いて他にはないと。女官、侍女一同賛同いたします」


目の端で侍女たちが力強く頷いているのが見える。

そうじゃなくて、首は横に振って!


「では、母上…」


「発表を急がせます。誰か、使いを」


では、じゃないし。

そこ、呼びにいくなーっ!!

なぜ?

なぜ、こうなる……

厄年じゃないはずよ…

なんで毎日更新?



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