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第18話 疑惑の婚約者、反撃開始

王城は大騒ぎになった。

それもそのはず。

秘蔵のサファイアのネックレスとイヤリングが無くなったのだ。

騒ぎにならない方がおかしい。

直前まで確かにそこにあった。

目を離したのは、ほんの数分。


――にもかかわらず、消えた。


……侍女は何人いた?

三人?四人?

思い出せない。


紛失はない。

ということで、盗難を疑われている。

しかも容疑者が、王太子殿下の婚約者となる私。

そりゃ、大騒ぎよね。

当然、私は足止めを喰らった。


「では、リザベッタ様は侍女に渡されたというのですな」


厳めしい顔をした王宮警務長官が問う。


「ええ」


「誰にに渡されました?」


「隣室にいた侍女です」


そういえば、あの部屋、出入り自由そうだった。

大切なものを受け渡しするには管理が甘すぎる気がした。


「どの侍女に?」


声音が僅かに低くなった。

それを聞かれると痛いのよ。

隣室にいた侍女に手渡したのは事実。

けど、顔は伏せていたし、渡しただけだから、はっきりとは見ていない。

奥に行った気はするけど。


「覚えていらっしゃらないと?」


「違う。正確には顔を見てないから答えられないの。事実は正確に」


「……困りましたな」


そう言って、ため息を吐く警務長官。

反対に私的には困っていない。

これは起死回生、一発逆転満塁ホームラン。

疑惑の渦中の人間を王太子殿下の婚約者にしておくわけにはいかない。

王太子殿下が何を言おうが、マリエッタが斜め上の証言をしようが、お天道様が許さない。

このままグレーの人間のままでいれば、断罪とはならずとも普通の公爵令嬢に戻れるはずだ。

偶然の産物とはいえ、計画通りになって、脳内の小久保恵子がビール掛をしている。

よしよし。


「エヴァンス卿も困られておられました。いまにも泡を吹いて倒れそうでしたよ」


「そうですか」


あー

父はね。

あの人、婚約解消を心配してるのよ。

娘を心配しろと言いたい。

今日、帰れないのならアルちゃん連れて来てくれないかな。


「王太子妃になられる貴方を我々も疑いたくはないのです」


別に。

こののままでいい。


「正直に話しては頂けませんか?」


正直にと言われても、すでに正直に話しているのでこれ以上話せない。

私はだんまりを決め込む。


「エヴァンス卿は猫がきたばかりに娘に災難が降りかかったと、猫のもらい先を探し始めましたよ」


ーは?

な、なんて言った!?

あの子、銀太を他所にやる?

何勝手なことしてんのよ。

許さない。

絶対に。

こんなところになんていてられない。

さっさと容疑を晴らす。

銀太を他所になんてやらせない。


「よろしいでしょうか?確認したいことが……」


「何ですか、リザベッタ嬢」


警務長官が片方の眉を上げた。

器用だな。


「いくつかあるので、書きつける紙を貰っても?」


「よろしいでしょう。おい、何か書くものを」


警務長官が部屋の外に声をかけた。

部下が紙とペンを持ってきた。

受け取り、質問事項を書いていく。


「保管場所はあの部屋だけですか?」


「いや、もう一部屋ありますよ」


「触れられる人は決まってました?」


「女官長と王妃宮の侍女たちです」


「侍女全員?」


「ああ」


「どう管理しているのでしょう?」


「部屋で保管していると聞いてます」


「それだけ?」


「それだけです」


「個数確認とか、場所の指定とかは?」


「ありません。必要ないと」


開いた口が塞がらない。

管理体制杜撰過ぎる。

探すときとうするのよ。

一々中身を見ながら探してるとか時間の無駄でしょ。

それに誰でも触れるって防犯体制ザルでしょ。


「探したのは私が入った部屋だけ?」


「その部屋だけで事足りますよ」


「聞き取りをしたのは、侍女全員?」


「あの場にいた者には」


……はい。

完全にアウトです。

なんか見えてきた気がする……

国の管理体制、抜本的に見直した方がいい。

ふうっ······

今度は私が一つため息を付いた。

……頭痛薬ください。


「侍女を全員集めてください」










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