第12話 風紀指導、なぜ称賛される
……おかしい……
なぜ、こうなる……
どこで間違えた。
「少し派手ね。場所を考えなさい」
朝から風紀委員のように登校してくるクラスメートの服装をチェックする。
ふふふ。
新人に指導をしてきた私だ。
手慣れたものよ。
「露出し過ぎ!」
「おしゃれをしたいなら学園の外でなさい」
「ここは勉強をする場所よ」
冷たく言い放つ。
完璧に小うるさいお局だ。
こんなお局は煙たがれる。
身をもって知っている。
さあ、反発しなさい。
「リザベッタ様、横暴ではないでしょうか?」
「みんなこれくらい着てます」
一部の女生徒が騒ぎ出す。
そう、それ。
もっと来なさい、もっと言い返して。
「リザベッタ様は正しいです」
えっ?
誰?
余計なことをいうのは……
マ、マリエッタ!?
あ、あなた、何を……
「リザベッタ様は間違ったことを言っていません」
いや、いや、マリエッタ。
ここ学園だし、少しのおしゃれくらいしてもいいかと思うよ。
というか、あなた私と共犯関係よね、マリエッタ……
「服装の乱れは、心の乱れだと思います!」
言い切った……
私でも恥ずかしくって言えないセリフを。
えっ。
なんで”褒めて”って顔でこっちをみているの?
褒めないから。
「そういう根拠は何があるの?」
鋭いツッコミだわ。
「そ、それは···」
マリエッタが口篭る。
「無いのね」
「根拠がないなら守らなくてもいいわよね」
はぁっ···
今の若者らしい。
口だけは達者だ。
だか、敢えて、ここは説教くさいことを言おう。
悪役令嬢の名にかけて。
私は女生徒一人一人に目を合わせた。
もちろん、上から目線。
「私が言いたいのは、相手を不快にさせないということです。時、場所、場合により合わせて正しい身だしなみをする。それは、社会性や規律ある生活態度を養うことでは? 」
説教ババア降臨。
「······」
押し黙る女生徒たち。
よし。
いい感じだ。
上から目線が効いている。
「言われてみればそうよね」
誰がぽつりという。
えっ?
それ、彼女たちへの賛同よね?
間違っても私へのじゃないわよね?
それを聞いた別の生徒が間違った方向へ走る。
「そのために学園で学べと。学園なら間違っても許されるけど、社交の場では許されない事もあるでしょうし···」
走るなーっ!
走る方向違うから。
戻ってきて。
カムバックーっ!
「衣服の機能や役割を学ぶ教育的アプローチですね」
マリエッタ、もう黙って。
お願い。
誰も服育なんて語ってない。
「リザベッタ様、なんて思慮深い」
「これが淑女なのね」
ないから、思慮なんて!
あるのは策略だけよ。
いいや、悪女と呼ばれたい。
「···私、見習いたいです」
マリエッタ······
あなたは見習わなくてもよろしい。
それより、もっと大切なことがあるでしょ!
さっさと、王太子殿下を射止めなさい。
称賛なんていらない。
心の中でがっくりと両手足を地面につく自分が見えた。
「リザベッタ、君はどこまで私の興味を引くんだろうな」
昼食時に王太子殿下がいう。
引きたくなんてない。
それどころか、無視されたい。
どんどん計画からかけ離れて行く情けなさよ。
こんな時はヤケ酒飲んで、あの子を触ってたっけ···
小久保恵子、35歳。
今、無性に居酒屋に走りたい。




