第10話 悪役令嬢、なぜか好感度上昇中
学生に試験は付き物。
何十年ぶりかに中間試験を受けた。
張り出された結果は首席。
結果に思わず、眉を顰めた。
……しまった。
やり過ぎた。
ここは中の上で押さえておくべきだった。
つい、真剣に解いてしまった。
この性格、どうにかしないとヤバいわ……
マリエッタの順位を確認する。
中の上。
ちょうどいいヒロインの位置。
王太子殿下や取り巻きに勉強を教わり、上位に上がるという美味しい位置。
よくやった、マリエッタ。
気分よく教室に入り、授業の開始を待っていると、クラスメートが近づいてきた。
「リザベッタ様、ありがとうございました」
……感謝?
何かした?
悪役令嬢には不要なんだけど……
首を傾げていると、
「数学です」
「写さずに自分で解いたために、私たち、解けたんです」
「このグループだけ、全員が正解でした」
ああ、あれね。
自分で考えるのが普通でしょう。
写してた連中は知らないけど。
「感謝やお礼は不要よ」
悪役令嬢=高飛車。
高飛車な態度ととけば、間違いない。
「……普通なら偉ぶるのに……リザベッタ様」
マリエッタがなぜか紅潮する。
周りもうんうんと頷いている。
マリエッタ、ここで私を陥れないでどうする!
周囲と手を取り合って、盛り上がるな。
それが何を騒いでいると様子を見に来た教師にも伝わり、
「自分で考える力を育てる……さすがは王太子殿下が認めたリザベッタ嬢だ。感服しました」
と、教師にまで褒められた。
当然、このことは学園中に広まった。
王太子殿下どころか、学園長の耳にまで入り、直々にお褒めの言葉を賜った。
違う!そうじゃない!
悪役令嬢なのよ、リザベッタは!!
泣きたい……
しかも、王太子殿下との交流は迷惑さが爆上がり状態で続いているし。
計画の進捗はあと数歩で暗礁に乗り上げそうだ。
しかし、
諦めは愚か者のすること。
お局様の往生際の悪さを甘く見てはいけない。
一回や二回失敗したからってくじけるもんか。
歌にもある。
一日に一歩、三日で三歩。
三歩進んで二歩下がる。
3-2=1
進めばいいのだ。
と、私は日々、決意を新たにしている3-2≒1
アルちゃんに会いたい……
進捗が思わしくなく、心が折れそうだ。
あの子にそっくりなアルちゃん成分を補充しないと干からびてしまう。
アルちゃん……
我にアルちゃんを……!!
「アルちゃんは、元気ですか?」
「変わりないが」
「いいですね、アルちゃんがいて」
「リザベッタは、なぜそこまでアルを気にする?」
このストレスの元凶が……
「恐れながら、めりはりは大事かと」
……分からないだろう。
社畜じゃないから。
業務効率を上げるためには、オンとオフの切り替えが大事だ。
アクセル全開だと、いつか焼き切れる。
気づいたらメンタル疾患。
適応障害。
うつ病。
最悪の場合‥‥‥
ブルブル。
そのためにも、オフや癒しは大切なんだ。
「動物との触れ合いは、人の心身の癒しです。その他にも健康機能の向上、コミュニケーションの促進効果と有意義なのです」
まぁ、私の場合は趣味と実益を兼ねている。
「王太子殿下もアルちゃんのぬくもりで癒されているのでは、ありませんか?」
「ああ、そうかもな……」
「疲れたときこそ、猫です!猫談義です!!」
私はきっぱりと言い切った。
「リザベッタは、相変わらず面白いな」
王太子がふっと笑う。
……何か、嫌な予感がする……




