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異世界と性犯罪者が嫌いです。〜ざまあごときじゃ済まさない〜  作者: 小村ユキチ
おまけの冒険

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3

「何するかと思って見てたんだけどね……まさか自爆するとは。ウケる」


 ホワイトは爆心地に降り立ち、焼け焦げで炭火の残骸のようになった大男の死体を片足で踏みつけた。引きちぎれた腕には未だにフェミニストが握られている。威力が高すぎる武器が勝手に手から離れないようにする『セーフティ』機能が生きていたようだ。


「狭い世界で変な進化しやがって……でも面白かったぜ。名前くらい聞いときゃよかったが——まあ、クソフェミでいいか」


 そう言って笑ったホワイトだったが、実際、ゴミ箱整理のつもりで訪れた今回の異世界探訪は彼にとってもまるで予想していなかったことばかりだった。奴隷魔法を使った『改造』とフェミニストの『多重使用』、どちらもホワイトの知らない技術である。もっと効率の良い魔法がいくらでもあるからだ。


(少ねえ手札極めると変な進化をするやつがいるのはあるあるだが……流石にキモすぎたな)


 ホワイトは考える。そもそも、なぜこの世界がまだ生きているのだろうか。ここははるか昔に魔物の増殖に抑えが効かなくなり放棄した世界なのだ。人間は皆殺され魔物同士で永遠に共食いでもしてる地獄絵図、それがホワイトの予想だった。


 久しぶりに起動して、意味なく50年ぶりにモンスター大氾濫の〝コマンド〟を入力した。そのコマンドだけ残っていて面白かったからだ。


 インしてみて世界の8割が森に埋まっているのを見て、萎えてオチた。


 それなのに、なぜかクリアフラグを踏んだやつがいて、戻ってきたらこの有り様だった。


 もしかすると、どこかに人間が生きているのかもしれない——。


 また、ホワイトは黒焦げの死体を見下ろす。殺すのは少し惜しかったと思わないでもなかった。


 焦げた男の頭上には、黒い光輪がまだ浮いている。


(ところでこの輪……なに?)


 ドンッと、突然体に衝撃を感じた。


 ()()()()()が、背後からホワイトの体に組みついていた。


(こいつ、奴隷に撃たせて……!)


 ホワイトは理解する。奴隷の首輪すらこの男は変異させていたのだ。


「くそっ、ゴキブリ野郎が……ッ!」


 頭に血が上る。弾も的もあれだけでかいなら、奴隷に撃たせても外さないなんていうのは当たり前の判断である。気が付かなかったことが腹立たしい。


(ってか、ゴクリの指輪まであんのかよ! 空からも見つからねえわけだ……)


 全体重でのしかかられながらも、ホワイトは、体術スキルで抵抗しようとした。素手だろうがスキル振りをしていない雑魚になど負けるよしはない。そもそもホワイトは無敵である。


 そう、思っていた。


 なぜか体が少したりとも動かせないことに気がつくまでは。


(……は?)


「あ? なんだよ」


 クソフェミの低い声。


 馬乗りで、顔面傷まみれの男が嗤っている。


「普通に効くんじゃねえか……奴隷魔法」





 奴隷魔法にはルールがあった。


『レベル』が同じ男同士では、互いが互いを奴隷にできない。


 レベルは魔物を倒した数だけ自動で上がる。強い魔物やボスほど経験値が高い。奴隷が殺した分は、そのうちの半分が主人に入る。


 ホワイトと名乗った男は5つの世界を作る過程で、数多の魔法の実験のために殺した膨大な魔物を殺し続けてきた。その数は1万を下らない。


 一方で凪は、殺した魔物は数千程度であるが、とにかくそれを()()()()()()()()()()()殺してきた。あるいは、ムカデにオートで殺させ続けた。


 怠惰なチーターと、勤勉に殺しを積んだ無課金ユーザー。


 本当に、奇跡的に釣り合っていたのだ。


 そして凪は今、この戦いで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ——届いていた。


 はみ出した経験値はわずかゴブリン9体分。


 創造主〝ホワイト〟が50年かけて上げていた『レベル』を、一匹の男の3年が、凌駕した。





 新月の下に、悲鳴が響く。


 楽に勝てる状況ばかり作ってきたがゆえに、ナメてかかって後手を踏んだ結果負けた男の哀れな叫び。半世紀ぶりの恐怖に震えるその声は、悲惨なほどに、ありきたりな叫びだった。


 それを見下ろすのは、浅川凪。


 彼は心の底から喜んでいた。


 ついに見つけた、()()()()()()が、しかも()()()()()()()。奴隷魔法を作った男なのだから、こいつがいた場所にはもっとたくさんの被害者がいる。加害者もいる。


 まだ殺せる。まだ拷問できる。まだ改造できる。



 ——性犯罪が、嫌いだった。


 ただの暴力よりも、不完全な社会の隙間を無理やり接着している数多あまたの理不尽よりも、手前に〝性〟とついたその存在が何より嫌いだった。


 性犯罪者は純然たるゴミだ。


 奴らは決して反省などしない。そんな機能を持っている心であれば、()()()()は絶対に超えないはずの一線なのだ。


 それがわからなかったのなら、反省も謝罪も、どうせ全ては自分のため。


 ならばつぐないは苦痛と死をもって代替する他ない。


 ハッキリそう信じていた彼の前に、再び新たな、異世界への扉が開いた。


「さあ……教えろ」


 凪は呟く。


「お前はやってきた性犯罪は、なんだ?」

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