15.佐倉と二人の手相鑑定(2)
「佐倉君の手は相変わらずすごいね。本当にこんな手相みたことないよ。私は何万人もの手相をみてきたんだけどね」
手相の先生はしみじみとつぶやいた。
先生は着席するなりまず佐倉の手相をじっくりと見て「でも佐倉君、最近なにかあった?まさか恋人できた?来年か、うーん再来年かな、結婚するね。きっと幸せになるよ」と言って先生はそれは嬉しそうににっこりと笑った。
佐倉を含めた三人は大声で『えええええええー!』の大合唱である。
響き渡る大声に先生は耳を抑えて笑いながらこらこら静かにね、と言ってから更にじっくりと佐倉の手を見て、
「もうこれはまるで銀河だね。プラネタリウムとかそういう……星の点を線で繋げたみたいだよね。もう何十年何百年も生きてきたような、エルフの長老の手相みたい。エルフなんて会ったことないけど」
先生が本当にずっとニコニコしているので、英介と静はだんだん緊張もほぐれてきたようだった。
「佐倉さんの手相そんなにすごいの?いいなあ」
英介がこう言うと、先生は「うん、ほんとにすごい。その上綺麗なんだよ。花火みたいでもあるね」と言って「さあ、こちらにおわす長老の御手をみてごらん」と笑いながら佐倉の手を指さした。
「先生、長老はひどいですよ。でも、未来で悪い何かとかは出てませんか?」佐倉が聞くと、
「君に怖いものはないでしょう?まわりを幸せにする人だから。能力が高すぎてもう爆発しているしね。何かあっても周囲の人から助けられるから全く心配なし。
たとえ一時的に困難があってもすぐになんとかなるから安心しなさいね」
「そうですか、ならよかったです。先生にそう言っていただけると安心するんです」
佐倉は本当にほっとした様子だった。
英介は「佐倉さん恋人いるんだ。結婚するってほんと?」と聞いた。
佐倉はそれに首をかしげながら苦笑いして、先生にこう聞いた。
「もはや“年齢イコール彼女いない歴男“の私が結婚できるんですか?ほんとに?」
「うん、きっと幸せな結婚。もう決まってるよ。去年来た時は全くでてなかったのに一体何があったの佐倉君?」
「いや相変わらず何もなくて。今はとんでもないお方の秘書業務で手一杯で、疲れ果ててますよ」
「でももう出会ってるでしょ?絶対素敵な人。きっと最高にいいよ」先生は言い切った。
静が「マザコンの佐倉さんも年貢の納め時か」というと、
先生は「ええっ?どちらかというとファザコンじゃないの?」と笑い出した。
佐倉はぷっと吹き出して「私は筋金入りのマザコンなんですが。まあ、なんというか逆の意味で父とは縁が深いです」なんてことを言った。
「なるほど。縁が深い……そうか」先生はまたしみじみと佐倉を手相を眺め、君はいつだって大丈夫ですよと繰り返した。
英介と静もドキドキしながら手をみてもらったが、佐倉の言った通り、先生は脅かすようなことは一切言わなかった。
二人の手相を順々に見て「いいねえ!二人とも、絶対頑張るぞ、っていう線がちゃんと出てる。とても頑張り屋さんだってわかるよ。それにとっても運がいいんじゃない?仮に何か苦しいことがあっても絶対助けてくれる人が現れるよ。二人ともそう、とっても優しい。きっと魅力のある人間になっていくよ。大丈夫、佐倉君みたいに大丈夫だよ。すごく良い線がたくさん出ている。なかなかないよこんなにいい手は」
先生はそう言ってくれた。
その後も二人の性格だったり、得意な分野だったり、驚くほど次々と当てられて、英介も静も「ええええー!」の連続だった。
そして、英介はついに決心したように「先生、かあちゃん……俺のおかあさんは、これから大丈夫なのかな、大丈夫だと思う?」と小さな声で先生にたずねた。
先生は心配そうに「お母さんが心配なの?」と言いながら、もう一度二人の手をじっくりと見た。
「病気ってことはないんでしょう?私はお医者さんじゃないからなんともそれはね。それに、お母さんの手相を見ないと分からないんだけど、でも、ね、うんそういうことはないと思いますよ。
だって、君たちの未来に陰りは全くないから。今後もしお母さんに何かピンチがあったとしても、君たちもお母さんもきっと大丈夫ですよ。なんたって佐倉君がついてるってのが大きいよ。彼は本当のエース。
それにね、なんと!佐倉君も君たちも同じ時期のところに凄いマークが出てる。二つもだよ!
これは君たちは負けない、ってマークなんだ。
こことここ。佐倉君と君たちが、一緒に負けないというシルシだよ」
こんなふうに先生に大丈夫と言われると、本当に大丈夫だと思えてきて英介も静も嬉しくなった。
先生はそれから何度も英介と静の手を確認し「うん、強い子たちだ。本当に頑張り屋さんだ」と言ってうんうんと頷いた。
あっという間の一時間だった。
最後に先生は佐倉に向かって「長老さん、それでも君はまだ若いんだから、この二人のようにみずみずしく、青臭い青年のように生きていきなさい。心から盛り上がって生きなきゃだめだよ」と微笑んだ。
この14話~15話を書いてからずいぶん後のことになりますが、実はとても素晴らしい手相家の先生にお会いすることが出来ました。『こんな先生がいたら一度みてもらいたいな』と思っていた自分のイメージそのまんまの方だったのでびっくりしました。
次回からは麹町爺の危機(1)~(3)となります。
今週は投稿が初めてだったので調子に乗って朝に夕にじゃんじゃんUPしたのですが、土曜日からは基本朝に一話予約投稿していこうかと思います。
またよろしくお願いします。




