航空祭典に向けて ②
レッドブルから貸し出された専用のエクストラは、見ているだけで心が躍った。
颯は自然と予定よりも早く飛行場に行くようになり、以前より整備に時間を掛けるようになった。それは他の候補生たちも同じで、機体に対する愛着が湧いてるのが見て分かる。
しかし、この日に限っては集まった候補生たちにいつもの浮ついた空気はなかった。
練習場までのフライトを済ませると、一端着陸して、候補生たちが整列する。
「それでは訓練を開始する」
集団飛行訓練を始めてから3日目、クリスがリーダーを決めると言った訓練の最終日だ。
「今日は順々にポジションを変えて、訓練用プログラムのフェイズ1から3までを飛行してもらう。飛行間隔の違いに注意しろ。――まずは初奈からだ」
クリスが説明を終えると、颯たちはそれぞれの機体に向かった。
風防を閉めて、無数の計器が見える操縦席を見渡す。まだ少し慣れない機内の匂いを確かめるように深呼吸をし、ヘルメットを被ると、操縦桿の感触を確かめて集中力を上げた。
「準備完了」
無線通信を済ませて、順々に機体が離陸した。
颯たちはしばらく直進しながら高度を上げると、順々に練習場へとUターンしていく。
緑が取り囲む市街地を抜け、灰色の滑走路が見えてくる。
《みんな準備いい?》
《了解》《うい》――……
初奈からの通信を受け、無線からそれぞれの返事が響く。
《それじゃあ、フェイズ1スタートするよ》
この訓練ではスモークは焚かず、先頭の掛け声が演技開始を告げる。
颯は先頭の左後ろ、本番よりも2メートルゆとりを持つ間隔を保ち、機体を直進させた。
操縦桿の微妙な操作で、先頭の初奈、左後ろの入鹿との距離感を保つ。この訓練で試されるのは、個々に与えられた役割を正確にこなすことが出来るか。――颯はそう考えていた。
《フェイズ2、移行します》
フェイズ2は旋回運動。練習場で数字の〝8〟の字を描くように一周する。
前方の初奈が所定の位置に到達し、旋回を始めるのを目視すると、颯は操縦桿を傾けゆるかに期待を旋回させ始めた。
三日間の練習の成果もあり、五機は揃って旋回しているように感じた。
《――颯、入鹿。間隔をもうちょっと広く持って》
しかしその途中、無線で指摘が入る。それは右翼後方を担当する雪兎の声だった。
「あれ、これが適正じゃ……」
颯は口にしかけて、若干、自分の機体の位置が若干だが初奈と近付いてることに気付く。
《ごめん、私の進路が少しずれたかも……》
初奈が謝罪するが、颯はそれで自分の失敗に気付く。
先頭の初奈は後方との間隔を合わせづらい、自分のルートをただ守るのではなく、周囲に合わせた動きをしなければならない。右翼の貴広と雪兎にはそれが出来ていた。
颯は即座に修正し、入鹿もそれに合わせた。
「――フェイズ3いくよ」
最後のフェイズ3では上昇して散開する。
颯は切り替え、今度こそ周囲の動きを確認しながら、的確なフライトを心掛けた。
5機は機首上げて上昇を始める。
ここは練習不足もありややバラツキが見えたが、最後は無事散開して、この日1度目の訓練用プログラムを終えた。
《――続けて、貴広がリーダーでやれ》
無線の指示を受け、ポジションをローテーションさせると、颯たちは訓練用プログラムを再びフェイズ1から始めた。
全員が先頭を担当すると、訓練用プログラムは終了した。
着陸後、クリスは横一列に整列した候補生たちに向けて、開口一番で結果を告げた。
「リーダーは雪兎に決定した」
反応を見た限りでは、当の本人も含めて、この決定を意外に思った候補生はいなかった。
今日のプログラムの中で、1番正確な操縦をして、周囲が見れていたのは雪兎だった。あるいは――認めたくはないが――それだけなら、貴広も同様だったが、その見えている状況を周囲に伝え、積極的に働きかけることが出来たのは雪兎の方だった。
貴広の何でも1人で行えるストイックさが、ここでは裏目に出たと言えた。
「時間もない。早速、今日から本番に向けた訓練を始める。雪兎は積極的に指揮をとるように」
「はい」
颯はその雪兎のいつも以上にはっきりとした返事を聞いて、将来雪兎がクリスのように怖くなるのではないかという、余計な心配をした。
▲ ▼ ▲ ▼ ▲
リーダーは決まったものの、それ以降の訓練はスムーズには進行しなかった。
《貴広、颯、隊列が乱れてるぞ――》
「すぐに修正します」
颯は注意されて左前方に見える青いエクストラを確認する。
曲に合わせる演技は、割と自由に飛べた訓練用プログラムとは比べると作業は複雑で、周囲と一定の距離を保つのは思いの外難しい。
《おい。近づきすぎだぜ、死ぬだろ》
《そっちがズレてるんだ。ちゃんとを進路を守れ》
《そろそろサークルいくけど。準備できてる?》
《え。ごめん、ちょっと待って!》
無線で飛び交う言葉は余裕がなく、訓練の進みが悪い現状を如実に物語っていた。
エアショーに向けた訓練開始から、あっという間に1週間が経過した。
しかし、まだ1曲目の編隊飛行すらまともに成功していない。
中でも曲の終盤、5機が円を描いて旋回したのち、一列に上昇する動きが難しい。
その日の練習でも、結局一度も通しで成功しないまま、颯たちは練習場を後にした。
「視覚の情報は大事だが囚われ過ぎるな。ちゃんと、個人でやることをやれ。――以上だ」
クリスの叱咤が終わり、颯たちは疲れた体を引き摺って寮に戻る。
「どうして、同じ機体で同じように飛んでるのに、こんなバラバラなんだろうな」
颯はレースの練習以上に精神の消耗を感じた。
「俺はそもそも、ゲームでも協力プレイとか、そーいうの好きじゃねえんだよなあ」
入鹿のエアショーの訓練に入ってから、見るからにストレスが溜まっている。
「レースよりもコツが掴めないのは確かだな」
貴広も訓練用プログラムでの正確さが嘘のように、徐々に訓練の足を引っ張るようになっていた。
原因はおそらく曲にも合わせるというエアショーならではの縛りだ。周囲も気にしなければならない状況で、二重の拘束が元来最速を出すことに特化した貴広を苦しめた。
一方で、颯は徐々に仲間をフォローできるくらいには上達していた。
颯は元々レース状況に応じてプランを柔軟に変更するのが得意だった――プレイスタイルや、性格の違いが現れたのかもしれない。
「難しいけど、少しずつは前進してる。遅くても来週中には一通りこなせるようにしよう……」
雪兎は仲間の愚痴を受け止めたうえで、発破をかけるように言う。
元々、1曲目は前菜のような扱い、入場時と2曲目に入るまでの繋ぎに過ぎない。
リーダーを任された雪兎の負担は、傍から見ても大きいのが分かる。最初は競って奪い合ったポジションだが、こうなると分かってたら誰もやりたがらなかっただろう。
(こんなとき、弥勒がいればな……)
口には出さないが、颯は最近ずっとそう思っていた。
「雪兎ちゃんの言う通り、そんなに難しく考えなくていいんだよ。1曲目が上手く行けば、2曲目以降は楽勝だよ。多分」
初奈は楽観的過ぎるぐらいの見立てで雪兎をフォローした。
歯切れが悪いのは当人もそれを自覚してるからだろう。とはいえ、雪兎の表情を見ると、少なからず初奈の前向きさに救われているようだ。
「ねえ。これから、オーウェンのところに話を聞きに行かない?」
「お、師匠のところか?」
雪兎の提案に余裕の無かった入鹿の表情が和らぐ。
「オーウェンならクリスとは違った視点で指導してくれるかもな」
「駄目元で聞いてみようか。クリスにばっかり負担掛けるのも悪いし」
反対意見もなく、颯たちは飛行場の受付にオーウェンの居場所を聞きに向かった。
▲ ▼ ▲ ▼ ▲
「――始めて1週間なら、そんなもんだと思うが……」
オーウェンは現在颯たちに掛かり切りのクリスの代理で臨時教官をしており、オフィスで航空学生たちの書類を整理していた。颯たちがやってくると仕事の手を止めて、事情を聞いてくれた。
「でも、君たちに時間がないのは分かる。そうだな、映像資料でも見るか?」
オーウェンは颯たちを会議室に移動させると、5分ほどで仕事を済ませて、無地のDVDを持ってやってきた。
「これは去年のエアショーの映像だ。イベントが3回分入ってる」
容量を節約するためか、若干映像が荒い。しかし、参考資料として撮っていることもあり、編隊飛行で会場に入ってくる機体はしっかりと中央に映っている。
「……って、ジェット機だぜ。これ」
「飛ばしてもいいが、これはこれで参考になるぞ」
「ていうか、このチームって――」
入鹿の言葉に颯もようやくそれに気付いた。オーウェンが持ってきたDVDだったので、てっきり海外のチームだと思っていたが、映像に映ってるのは日本の有名なエアロバティックスチームだった。
「これだけ、クリスが焼いてくれた映像だ。それにスタートは同じ曲――」
オーウェンはそこで注釈を入れるのを止めて、音量を上げた。
曲に合わせて白と青のジェット機が、晴れた空で交わり、スモークが完璧な模様を描く。
僅か数分の演技に圧倒的な時間の積み重ね、洗練された演技の全てが入っていた。それが分かるくらいには、颯はもうエアロバティックスに対して無知ではなくなっている。
映像は荒いが、その勇姿はまるで色褪せない。
会場は変わり、続いて複葉機(上下で羽が2枚ある機体)の演技や、2機の単発機による演技が流れた。
ジェット機の編隊飛行とはまた違う磨き抜かれた個人技の応酬、小回りの利いたフライト。知識にはありながらも、レースには無関係という理由で習っていない上級技が惜しみなく繰り出され、縦横無尽の軌跡と観客の歓声を生む。
「彼らはもうこの道で5年や10年、長ければもっと操縦桿を握ってきた猛者ばかりだ」
オーウェンが途中、言葉を失う颯たちに向けて呟いた。
「今の段階で、彼らの域に到達することを誰も求めてはいない。ただし、こうありたいというヴィジョンは持っておくべきだ。私は他人のフライトを見る度に、そこに〝意味〟を見出すようにしている。それが君たち候補生たちのフライトであってもね――」
オーウェンがどういう意図でそれを発言したかは分からない。
けれど、その瞬間、颯はその言葉で胸の奥に忘れていた何かが動いたのを感じた。
熱くて鋭くて、胸を焦がすような感覚。
それがオーウェンの言葉のどこに引っ掛かったのか。〝動いた者〟の正体が何なのか――。
映像が別の会場に切り替わったときには、もう浅い意識の中で見ていた夢の内容ように忘却してしまっていた。
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11月に入り、集団訓練が本格的に始動してから2週間が経過した。
何とか入場時の1曲目が終わり、2曲目の練習に入った。全員分かってはいたが、そこからの難易度は段違いだった。
その日、訓練が終わったタイミングで入鹿が全員を集めた。
「なあ。もう3曲目は諦めねーか?」
入鹿の声のトーンは落ち着いていて、それが逆に普段に比べて真に迫っていた。
「基礎訓練の時間減らしてまでやるもんじゃねーだろ。こんなんで、レースまで失敗したら目も当てられないんじゃねえか?」
貴重な訓練時間の浪費、これがレースに繋がるのかという疑問。
颯にも入鹿と同様の疑問はあった。
「俺は今からクリスに直談判しにいくぜ。必要なら、チーフに連絡とってもいい」
「……たしかに移動日や天候による訓練中止も考慮すると、使える時間はあとせいぜい1カ月。今やってる2曲目を仕上げるのがやっとってところか」
入鹿の投げやりとも取れる提案に対して、貴広は冷静に考察だけを口にする。
「そうだね。このペースじゃ続けるにしても、プランを完遂できるとは思えない」
雪兎の同意する声には失意が滲んでいる。
「つーか、こんな有様じゃ、エアショー自体辞退すべきだと思うぜ。ぐだぐだに続けるくらいなら、キッパリ断るべきだ。引き返すなら早い方がいい」
「いや、落ち着けよ。ブルーカウとの関係とか、会社の立場を考えたら、今更辞退なんかできるとは思えないぞ」
颯は結論を急ぐ入鹿に対して、理屈を並べて説得をしようとした。
「だから、そういうの体面を気にして、肝心のレースが失敗終わったら元も子もねーじゃん」
「俺は別に、この訓練が技術の向上に役に立ってないと思ってない」
「このペースで、来年の5月に、時速250キロでパイロン躱して飛べると思ってんのか?」
「それは……」
颯は入鹿の指摘に苛立った。颯にだってそんなことは分かっていた。
「ねえ、みんな急にどうしたの?」
これまで積み重ねたものが音を立てて崩れようとする状況に、初奈は震える声で割り込んだ。
「言い争うことはあるし、確かに進みは遅いけど……。私はこの訓練も――全員で同じ目標に向かうことが、楽しいと思ってた。みんなは違うの?」
初奈の問い掛けに対して誰も何も答えることが出来なかった。
入鹿が本当に自分本位な人間なら楽しくないと即答しただろうし、貴広は楽しいだけでは意味がないと言うだろう。
リーダーとして責任を感じてる雪兎もそれは同じだ。
颯も本音を言えば、雪兎が辛そうな表情をする現状を差し引いても、楽しさよりもストレスの方が大きい。
(それと、初奈は気付いているのか?)
訓練を楽しめている時点で、初奈はこと集団訓練においては、雪兎どころか他の全員をいつの間にか実力で追い抜いているということだ。
少なくとも颯はこの数日で気付いていた。
他のメンバーだって、その潜在力がいよいよ頭角を現したことを理解しているはずだ。
「レースみたいな勝敗だけじゃない。協力して続ければ、残るものだって絶対あるんだよ」
誰もそれに応えられない。
その沈黙が何よりもそれぞれの内心を物語っていた。
思えば、弥勒が全員の協力を提案したときも、明確に賛成を示したのは初奈だけだった。
元々、厳しい審査を勝ち抜くために、あらゆるものを切り捨ててきた面々だ。
個人主義の集まりに過ぎないといえば、それまでなのかもしれない。
「分かったよ。わたしが馬鹿だったんだ」
初奈は背を向けると、早足で下宿先のアパートへと1人帰ろうとした。
その瞳からは今にも涙がこぼれ落ちそうだった。
「――待って、初奈!」
その背中を引き留めたのは、雪兎の力強い声だった。
「……悪いって。オレが頑固だったよ」
入鹿はこの状況に責任を感じたのか、気まずそうに頭を掻いた。
「ごめん、初奈。私、リーダーの責任とか考えてるようで、結局また自分のことで手一杯だったのかな」
雪兎は足を止めた初奈に向けて、懸命に言葉を繋いだ。
「そうだよ。雪兎は1人で背負いすぎだ」
颯が便乗して指摘すると、雪兎は空気を読めと、恨みがましい視線を返す。
「というか、これくらいこなせないで世界の舞台で戦うなんて無理だよな」
颯はいつもの軽い調子で葛藤を振り切り、貴広の方を向いた。
「黒鳥もそう思うだろ?」
「……そうだな」
貴広が最後に同意したことで、初奈を除く、4人の方向性が言外に決定した。
「そうなると、何か考えないとな。続行するのはいいが、具体的な打開策がなければどのみち本番に間に合わない」
「全員で考えよう。クリスだって、何かしら考えてるはずだ」
「まあ、面倒だけど、やれることはいろいろあるよな……」
「――それなら、初奈も協力してくれる?」
雪兎は他のメンバーの言葉を受けて、初奈への最後の説得をする。
「みんな、こういうときだけ年上してずるいよ……」
初奈は鼻声で答え、振り返ると涙で濡れた顔を綻ばせた。
颯はその様子を見て胸を撫で下ろしながらも、この選択が正しいことを祈った。
入鹿の言う通り、プランを変えるならこのタイミングしかなかっただろう。
こうして全力で打ち込むと決めた以上、あとは突き進むしかない。
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編隊飛行の練習はそれから、順調とまではいかないものの、僅かに成長の兆しを見せた。
全員で同じ動きをするということは、そこから外れた動き、つまり個人の粗を修正するということにも繋がる。
「颯は右に曲がるとき、膨れる癖があるみたい」
「……それ、結構前にサイラスにも言われた気がする。だから、毎回あの隊列が乱れてるのか」
雪兎は各々の練習を見て、自分では気づかない細かい癖を指摘した。
「俺も後ろから見て思ったのは、貴広はシーン3のとき、降下を雪兎に合わせようとし過ぎてワンテンポ早い。そのせいで入鹿とズレてるってことかな」
「私もそれは思った」
また、颯と初奈は後列のため、合わせる際に前方3人の動きを客観的に見ることもできた。
実際はクリスの指導でほとんど足りている部分もあるが、周りを観察する習慣がつけることによって、以前より周りに動きを合わせることが可能になっていった。
1人1人が少しでも歩みを速めようと、積極的に協力をするようになった。
まず、初奈が旅行用に持ってきたデジタルカメラと、バッテリー付きのスマートフォンをスタンドで練習場に設置することを思い付いた。それをクリスの撮っている映像とは別に資料として、練習後に様々な角度から演技を見返すことができるようになった。
「貴広のターンがずれるのは、上昇中の微調整が出来てないからだ」
映像を解析していると、以前からターンが得意だった入鹿は、全員にターンのコツを伝授し始めた。
入鹿のエアロバティックスの技に関する知識は同時期に始めたとは思えないほど、群を抜いて正確なものだった。
「どの教官にも言えたことだけど、こっちが聞き方を変えれば本人が自覚せずにやってたことまで、情報として引き出せる。プログラム外の技も頼み込めば教えてくれる。そういう技の中に、案外、他に応用が効く技術が隠れてたりするんだぜ」
入鹿は人知れずやっていた努力のカードを切ってまで、仲間の技術の向上に貢献した。
颯は貢献度の低さを気にした末、地道な作業を行うことにした。
それは曲の時間ごとの速度と移動距離、高度の計算だ。元々、シーンごとの速度や高さの設定は演技を作っているクリスが行っている。颯は区切りごとに提示された数字を意識してフライトするわけだが、具体的にそれがどう細かく変化しているのかまでは理解していなかった。
曲の設定した普遍的な時間。それに対する流動的な速度や高度、風の動き。
颯は一人でそれを計算しようとしたが、すぐに壁にぶつかった。やむを得ず、颯は貴広や雪兎も誘い協力を仰いだ。終いには遙香まで呼び、クリスに答え合わせまで求めた。
颯はこの練習期間に弥勒が本当にしたかった協力とはこんな形だったのかもしれないと思った。
ライバルである以前に仲間として、まずは企画全体の成功を目指す。
それができていれば、あるいはまだ、弥勒はこの場に残れていたのかもしれない……。
そんな感傷に似た後悔も、目まぐるしい訓練の中で彼方へと消えた。
エアショーの日程が近付く中、地道な計算で描かれたオリジナルの地図は少しずつ、颯たちの通るべき道を浮かび上がらせていった。




