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残骸。Les Épaves.  作者: シャルル・ボードレール/萩原 學(訳)
禁断詩篇 PIÈCES CONDAMNÉES, 『悪の華』削除対象 TIRÉES DES FLEURS DU MAL.

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7. 吸血鬼の変身 LES MÉTAMORPHOSES DU VAMPIRE

挿絵(By みてみん)

禁断詩篇ここまで

原稿『逸楽の革袋』L'Outre de la Volupté (1851 - 1852)

脚韻AABB 『悪の華』初版87(1857)

詩想そのものはゴーティエ『死女の恋』(1836)に範を得たものであろう。


憐む可きクラリモンドは、聖水がかゝると共に、美しい肉体も忽ち塵土ちりひぢとなつて、唯、形もない、恐しい灰燼の一塊と、半ば爛壊らんゑした腐骨の一堆とが残つた。(芥川龍之介訳)


吸血鬼ファンに注目して頂きたい点として、「陽光で滅ぶ吸血鬼」の概念が登場しており、おそらく文学史上これが初出。映画で初めて視覚化されたように言われているけれど、舞台の奈落を vampire と呼ぶくらいだ。早くから舞台では「何かのきっかけで居なくなる吸血鬼」の表現があったはずで、あるいは詩人も観たのではないか。

かの女はしかし、イチゴのような唇から、

炭火の上の蛇のように身をくねらせては、

鉄の張り型に胸をこすりつけつつ、

麝香浸けのこんな言葉を垂れ流す。

「私は唇もしっとりして、(すべ)を知っているのよ

寝台の奥深くで、骨董品の意識を奪うための。

勝ち誇る胸で涙を拭い、

老人に子供の笑いを誘う。

ベールを脱いだ私の裸を見た代償

月、太陽、空、そして星までも!

親愛なる学者よ、私は快楽に精通。

恐るべき腕の中で男を窒息させる、

あるいは、臆病であり奔放であり、脆くもたくましい

この胸を、噛みつかれるままに委ねるとき、

このマットレスで情事に悶絶する、

不能の天使も私と地獄に堕ちてくれよう!」

La femme cependant, de sa bouche de fraise,

En se tordant ainsi qu’un serpent sur la braise,

Et pétrissant ses seins sur le fer de son busc,

Laissait couler ces mots tout imprégnés de musc:

— «Moi, j’ai la lèvre humide, et je sais la science

De perdre au fond d’un lit l’antique conscience.

Je sèche tous les pleurs sur mes seins triomphants,

Et fais rire les vieux du rire des enfants.

Je remplace, pour qui me voit nue et sans voiles,

La lune, le soleil, le ciel et les étoiles!

Je suis, mon cher savant, si docte aux voluptés,

Lorsque j’étouffe un homme en mes bras redoutés,

Ou lorsque j’abandonne aux morsures mon buste,

Timide et libertine, et fragile et robuste,

Que sur ces matelas qui se pâment d’émoi,

Les anges impuissants se damneraient pour moi!»


彼女が私の骨髄を吸い尽くした後、

私が愛の口づけ返そうと

うっとりと振り返ると、そこに見えたは

粘い膿で一杯のヌルヌルした革袋のみが!

冷たい恐怖に目を閉じた、

その後、鮮やかな陽光の中で再び目を開けた

私の側には、血を蓄えたかのように

見えた、力強いマネキンの代わりに、

混乱して震えている骸骨の破片が、

それ自体がまるで、風見鶏か看板が

軋みを鉄の棒の先に響かせているかのように、

悲鳴を上げる、冬の夜、風に揺られるように。

Quand elle eut de mes os sucé toute la moelle,

Et que languissamment je me tournai vers elle

Pour lui rendre un baiser d’amour, je ne vis plus

Qu’une outre aux flancs gluants, toute pleine de pus!

Je fermai les deux yeux, dans ma froide épouvante,

Et quand je les rouvris à la clarté vivante,

À mes côtés, au lieu du mannequin puissant

Qui semblait avoir fait provision de sang,

Tremblaient confusément des débris de squelette,

Qui d’eux-mêmes rendaient le cri d’une girouette

Ou d’une enseigne, au bout d’une tringle de fer,

Que balance le vent pendant les nuits d’hiver.

訳注

le fer de son busc: busc は主にコルセットなどの婦人服において、前中心に入れて形を整える「張り骨」を指す。のであるが、直前に son「息子」が付くので「鉄の息子張り骨」となり、何じゃそりゃ…


musc: 麝香は香料・薬の原料であり、媚薬としての効果を期待されてもきた。


l’antique: 古美術品。老学者の類を蔑んでいう


la clarté vivante: 実は「陽光」ではなく「生き生きとした明るさ」の中で、と書いてあるのだが。では「生き生きとした明るさ」とは何であるかと考えたら、「高く上がった陽の光」しかあるまい

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