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残骸。Les Épaves.  作者: シャルル・ボードレール/萩原 學(訳)
禁断詩篇 PIÈCES CONDAMNÉES, 『悪の華』削除対象 TIRÉES DES FLEURS DU MAL.

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6. 宝石 LES BIJOUX

挿絵(By みてみん)

『悪の華』初版20(1857) 脚韻ABAB

最愛の人は裸だった、私の気持ちを知っていた、

その身に着けるは、キラキラ光る宝石のみ、

その豪華な装いが、勝ち誇る雰囲気を放っていた

ムーア人の奴隷たちが、幸福な日々を誇るに近い。

La très-chère était nue, et, connaissant mon cœur,

Elle n’avait gardé que ses bijoux sonores*1,

Dont le riche attirail lui donnait l’air vainqueur

Qu’ont dans leurs jours heureux les esclaves des Mores*2.


けたたましい軋みを踊りながら上げる時、

金属と石の輝く、この世界こそ

私を恍惚とさせ、私は狂おしいほどに

愛する、音と光の交じり合いを。

Quand il jette en dansant son bruit vif et moqueur*3,

Ce monde rayonnant de métal et de pierre

Me ravit en extase, et j’aime à la fureur

Les choses où le son se mêle à la lumière.


そこに横たわり、愛されるままに身を委ねて、

長椅子から嬉しそうに微笑んだ

海のように深く甘い私の愛に向かって、

崖に向かうように彼女へと押し寄せた。

Elle était donc couchée et se laissait aimer,

Et du haut du divan elle souriait d’aise

À mon amour profond et doux comme la mer,

Qui vers elle montait comme vers sa falaise.*4


飼いならされた虎のように見つめてきて、

ぼんやりと夢見るような雰囲気でポーズを試し、

無邪気と淫らさが一体になって、

彼女の変身に新たな魅力が加わり。

Les yeux fixés sur moi, comme un tigre dompté,

D’un air vague et rêveur elle essayait des poses,

Et la candeur unie à la lubricité

Donnait un charme neuf à ses métamorphoses;


そして腕そして脚、それに太腿そして腰が、

油のように滑らかで、白鳥のように優雅に、

澄んだ穏やかな、わが目の前を通り過ぎた。

そして彼女の腹と胸、わが葡萄の房は、

Et son bras et sa jambe, et sa cuisse et ses reins,

Polis comme de l’huile, onduleux comme un cygne,

Passaient devant mes yeux clairvoyants et sereins;

Et son ventre et ses seins, ces grappes de ma vigne,


前に出ていた、悪の天使より愛らしく、

揺さぶるは、わが魂の鎮まれる所を、

水晶の岩を目茶苦茶にしようとする

静かに独り、魂が座っていた処の。

S’avançaient, plus câlins que les Anges du mal,

Pour troubler le repos où mon âme était mise,

Et pour la déranger du rocher de cristal

Où, calme et solitaire, elle s’était assise.

挿絵(By みてみん)

私には、新たな素描(デッサン)で一つにされたように見えた

アンティオペーの腰回りと、髭も生えていない青年の胸像が、

彼女の腰こそが、その骨盤を際立たせていた。

その黄褐色の肌には、化粧が素晴らしく映えていたのだ!

Je croyais voir unis par un nouveau dessin*5

Les hanches de l’Antiope*6 au buste d’un imberbe,

Tant sa taille faisait ressortir son bassin.

Sur ce teint fauve et brun le fard était superbe!


……やがてランプは消えゆく運命を甘受し、

暖炉だけが部屋を照らす中、

かっかと熱い溜息をつく毎に、

琥珀色の肌を血の色に染めた!

— Et la lampe s’étant résignée à mourir,

Comme le foyer seul illuminait la chambre,

Chaque fois qu’il poussait un flamboyant soupir,

Il inondait de sang cette peau couleur d’ambre !

訳注

*1 bijoux sonores:bijoux は「宝石」に加えて加工後の「装身具」を含む。必ずしも高価なものばかりではない。sonore は英語 sound に当たり、専ら「音響」を言う。しかし sound にも形容として「健康な」「堅固な」、名詞として「海溝」「入り江」などの意味があり、この場合「音のする宝石」では意味がないので、「傷一つない無垢の宝石」「健康そのもの」といった意味合いが窺える。つまり bijoux sonores は、女性の装身具であると共に、女性の健康の象徴でもある。もっとも「音のする石」が存在しないわけではなく、サヌカイトによる「石琴」もある


*2 Mores:"of the Moors"「ムーア人の」を言うフランス語。ムーア人 Les Maures は元来、モーリタニアの民 Maurétanie を言うものであった。が、ヨーロッパから見て似たようなアフリカ人または黒人一般あるいはアラビア人ほか回教徒などにまで際限なく拡張されたため、「異国風の黒っぽい人」以上の意味はない。早い話が、ジャンヌ・デュヴァルのイメージ。


*3 bruit vif et moqueur:bruit 「雑音」「騒音」、vif 「活発な」「鮮やかな」、moqueur「嘲笑する」と並べられて、翻訳機は「生々しくも嘲笑的な音を放つ」「鋭く嘲る音を響かせる」「活発で嘲笑的な騒音を放つ」と提案してきた。何れも日本語表現として今一なので置き換える。但し具体的に何の音か不明。石なり金物なりを黒板のようなものに押し付けて擦れば酷い音を立てるけれども、装身具でそんな真似はしない筈


*4 Qui vers elle〜:この行は前行の la mer に懸かっているようだが、普通に訳すと韻が踏めない


*5 dessin:「素描」であり「構図」でもある


*6 Antiope:アンティオペーは女性の名で、ギリシャ神話に多数出てくる。絵画では美女の典型とされてきたが、それだけに美の女神ウェヌスと取り違えた可能性が高いものも多い。コレッジョ『ユピテルとアンティオペー』も、あるいは『ウェヌス、キューピッドとサテュロス』であるとも

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