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残骸。Les Épaves.  作者: シャルル・ボードレール/萩原 學(訳)
禁断詩篇 PIÈCES CONDAMNÉES, 『悪の華』削除対象 TIRÉES DES FLEURS DU MAL.

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5. 陽気すぎる人へ À CELLE QUI EST TROP GAIE

挿絵(By みてみん)

脚韻ABBA

[編集者注]を書いたのは、おそらく詩人自身

貴女の顔、貴女の仕草、貴女の表情

美しい風景のように美しく、

貴女の顔に笑みが浮かぶ

澄んだ空に吹く涼しいそよ風のよう。

Ta tête, ton geste, ton air

Sont beaux comme un beau paysage;

Le rire joue en ton visage

Comme un vent frais dans un ciel clair.

挿絵(By みてみん)

悲しげな通行人もすれ違うと

健康に目もくらむから

それはあなたの腕と肩から

光のように溢れ出るもの。

Le passant chagrin que tu frôles

Est ébloui par la santé

Qui jaillit comme une clarté

De tes bras et de tes épaules.


彩りも華々しく

貴女は織り込んだ、装いに

それらは詩人たちの魂に

花のバレエを映し出す

Les retentissantes couleurs

Dont tu parsèmes tes toilettes

Jettent dans l’esprit des poëtes

L’image d’un ballet de fleurs.


この奇妙奇天烈な装い

紋所よ、貴女の多彩な魂

変な女にどうかしてる私、

貴女が嫌い、愛するのと同じくらい!

Ces robes folles sont l’emblème

De ton esprit bariolé;

Folle dont je suis affolé,

Je te hais autant que je t’aime!


時には、ただ引き摺る

美しい庭園で、無気力を

感じたのは、皮肉にも

太陽が胸を引き裂く。

Quelquefois dans un beau jardin

Où je traînais mon atonie,

J’ai senti, comme une ironie,

Le soleil déchirer mon sein;


そして春と新緑と

わが心を深く傷つけた、

一輪の花に罰した

自然の傲慢さを。

Et le printemps et la verdure

Ont tant humilié mon cœur,

Que j’ai puni sur une fleur

L’insolence de la Nature.

挿絵(By みてみん)

だから私は、とある夜に

快楽の時が訪れるとき、

貴女という秘宝へ行き、

音も立てずに這い寄りたい、臆病者のように、

Ainsi je voudrais, une nuit,

Quand l’heure des voluptés sonne,

Vers les trésors de ta personne,

Comme un lâche, ramper sans bruit,

挿絵(By みてみん)

貴女の喜びに満ちた肉体を罰し、

貴女の赦された胸を傷つけ、

そして貴女の驚愕の脇腹へ

大きく深い傷を負わせるために。

Pour châtier ta chair joyeuse,

Pour meurtrir ton sein pardonné,

Et faire à ton flanc étonné

Une blessure large et creuse,


そして、目も眩む甘美よ!

この新たな唇を通して、

より輝き、より美しい唇を通して、

わが毒を注ぎ込んでやる、わがシスターよ!

Et, vertigineuse douceur!

À travers ces lèvres nouvelles,

Plus éclatantes et plus belles,

T’infuser mon venin, ma sœur[1]!


原註1.

判事たちは、最後の二節に、血なまぐさいと同時に卑猥な意味を見出したと考えた。詩集の深刻は、その手の悪ふざけを許容するものではなかった。しかし、「毒」が「癇癪」や「憂鬱」を意味するという解釈は、犯罪学者たちにとっては些か単純すぎたようだ。彼等の梅毒的な解釈には、彼等自身の良心が重く伸し掛かるに任せよう。

(編集者注)

Les juges ont cru découvrir un sens à la fois sanguinaire et obscène dans les deux dernières stances. La gravité du Recueil excluait de pareilles plaisanteries. Mais venin signifiant spleen ou mélancolie, était une idée trop simple pour des criminalistes.

Que leur interprétation syphilitique leur reste sur la conscience.

(Note de l’éditeur.)

訳注

編注とどめの一言は『ハムレット』亡霊の台詞を想わせる


汝が心を傷つけず、汝が魂謀らせず。

汝が母に何もせず、天に委ねよ。

その胸に宿れる棘の、刺し貫けるに任せよ。

Taint not thy mind, nor let thy soul contrive

Against thy mother aught; leave her to heaven,

And to those thorns that in her bosom lodge,

To prick and sting her.


あるいは、「脇腹の傷」が聖痕である以上、これを娼婦に与え、聖女扱いした事が、それと言うのも憚られる程の冒瀆と取られたのかもしれない。編注が指摘する深刻とは、その表沙汰にできない事情を表すとも見える。


*1 Gaie:世界的に今では「ゲイ」の意味が変わってしまったが、元来は「陽気な」「華麗な」ポジティブ面をいう


*2 toilettes:今日では、複数形だと「トイレ」単数形で「お洒落」「身だしなみ」を指す。ボードレールの時代は、これで衣裳一式を意味したようである


*3 emblème:今では普通に「ワッペン(独)」同様、「エンブレム(仏)」で通じるとは思う。ただ、「紋章」だけでなく、その元とかる「象徴」をも言う


*4 Une blessure:脇腹の傷は、聖痕の一つ。


ヨハネによる福音書14章

34 しかし、ひとりの兵卒がやりでそのわきを突きさすと、すぐ血と水とが流れ出た。


このモチーフは、コールリッジ『クリスタベル姫』そのままで、おそらくは『吸血鬼の変身』と同一対象を歌うものであろう。


*5 sœur:「妹」であると同時に「修道女」でもある。一例として聖女マリア・マグダレーナを挙げておく

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