表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残骸。Les Épaves.  作者: シャルル・ボードレール/萩原 學(訳)
禁断詩篇 PIÈCES CONDAMNÉES, 『悪の華』削除対象 TIRÉES DES FLEURS DU MAL.

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/23

4. 忘却 LE LÉTHÉ

挿絵(By みてみん)

『悪の華』初版30(1857) 脚韻ABBA

残酷で耳の遠い魂よ、わが心へおいで、

愛しき虎よ、怠惰な態度の怪物よ。

震える指をずっと突っ込んでいたいよ

貴女の重々しいたてがみの奥深くまで。

Viens sur mon cœur, âme cruelle et sourde,

Tigre adoré, monstre aux airs indolents;

Je veux longtemps plonger mes doigts tremblants

Dans l’épaisseur de ta crinière lourde;


貴女の香りのペチコート

痛みに苛まれる頭を埋める

枯れた花のように吸い込む

亡き愛の甘い香りを

Dans tes jupons remplis de ton parfum

Ensevelir ma tête endolorie,

Et respirer, comme une fleur flétrie,

Le doux relent de mon amour défunt.


眠りたい!生きるより眠りたい!

死のように甘い眠りにあって、

惜しみなくキスを注ぎ込んで

銅のように磨かれた美しい体に。

Je veux dormir! dormir plutôt que vivre!

Dans un sommeil aussi doux que la mort,

J’étalerai mes baisers sans remord

Sur ton beau corps poli comme le cuivre.


わが啜り泣きを飲み込ませる

に、貴女の寝台の深淵に勝るものなし。

強力な忘却が貴女の口元に宿り、

レテの川が貴女の口づけに流れる。

Pour engloutir mes sanglots apaisés

Rien ne me vaut l’abîme de ta couche;

L’oubli puissant habite sur ta bouche,

Et le Léthé coule dans tes baisers.


我が運命に、今や我が喜びとして、

定められた者のように私は従う。

従順な殉教者、無実の死刑囚、

その熱情が苦痛を煽る者として、

À mon destin, désormais mon délice,

J’obéirai comme un prédestiné;

Martyr docile, innocent condamné,

Dont la ferveur attise le supplice,


私は、恨みを飲み込むために、

ネペンテスと善きドクニンジンを、

この鋭い胸の魅惑的な先端から吸おう、

かつて心を囚えたことがない。

Je sucerai, pour noyer ma rancœur,

Le népenthès et la bonne ciguë

Aux bouts charmants de cette gorge aiguë,

Qui n’a jamais emprisonné de cœur.

訳注

LÉTHÉ: 冥府に流れる『忘却』の川、及び『忘却』の擬人化。


népenthès: 今日では専ら、食虫植物ウツボカズラをいう。しかしこの語は、古代ギリシャ語の形容詞 νηπενθής / nêpenthês(否定の接頭辞「νη-」/ nê, noと名詞πένθος / pénthos、「悲しみ、悲嘆」から派生)に由来し「悲しみがない」「悲しみを忘れる」という意味。ホメーロスの物語の中で、パリスがヘレネーを誘拐した後、故郷を忘れさせるために飲ませた飲み物に由来。17世紀の化学者は、用語 Laudanumアヘンチンキと Nepenthes を互換的に使ったという。


ciguë: 死を求められたソークラテースが仰いだ毒と伝えられる。bonne「良い」を添えるのは、「善きサマリア人」の慈悲を意識したものであろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ