15. ローラ・ド・ヴァランス LOLA DE VALENCE
XV
LOLA DE VALENCE[1]
脚韻ABBA
原註にある通り、マネ『ローラ・ド・ヴァランス』への讃辞。この舞姫はローラ・メレアという人だが、ヴァレンシア出身ゆえに「ヴァレンシアのローラ」と呼ばれ、これがフランス語では de Valance となり、フランス語でもやはり balance の発音と近いので、「Valance で balance 失いそうだ」と昭和臭い駄洒落をやっている1篇
至る所に見て取れる数多の美の中、
友よ解るぞ、欲望がバランスを失うのは。
輝いている、ローラ・ド・ヴァランスには、
ピンクと黒の宝石の思いがけない魅力が。
Entre tant de beautés que partout on peut voir,
Je comprends bien, amis, que le désir balance ;
Mais on voit scintiller en Lola de Valence
Le charme inattendu d’un bijou rose et noir.
原註
[1] 以上の詩は、スペインのバレリーナ、マドモアゼル・ローラの、エドゥアール・マネによる素晴らしい肖像画の讃辞として作詩されました。マネの他の作品と同様に、この作品もスキャンダルを巻き起こしました。シャルル・ボードレール氏のミューズはあまりにも疑わしい存在であるため、酒場の批評家たちが、ピンクと黒の宝石に卑猥な意味を見出そうとした程です。しかし私たちは、この詩人が単に、暗くも遊び心のある美女が、ピンクと黒の組み合わせを夢想させる、ということを表現したに過ぎないと考えています。
Ces vers ont été composés pour servir d’inscription à un merveilleux portrait de mademoiselle Lola, ballérine espagnole, par M. Édouard Manet, qui, comme tous les tableaux du même peintre, a fait esclandre. — La muse de M. Charles Baudelaire est si généralement suspecte, qu’il s’est trouvé des critiques d’estaminet pour dénicher un sens obscène dans le bijou rose et noir. Nous croyons, nous, que le poëte a voulu simplement dire qu’une beauté, d’un caractère à la fois ténébreux et folâtre, faisait rêver à l’association du rose et du noir.
(Note de l’éditeur.)
訳注
ボードレールが「第一人者」と称揚した画家マネの作品としても、本作は当初、毀誉褒貶相半ばするスキャンダラスな受け取られ方をしたらしい。対してボードレールは次のとおり、この讃辞を作品に付すことを求めた。
「以上の詩句は肖像画の下部に、絵筆にて絵の具で描くか、あるいは額縁に黒い文字で記されたし」
« ces vers au bas du portrait, soit au pinceau, dans la pâte, soit sur le cadre en lettres noires »
結局、1863年の展覧会に於て、この讃辞は楕円型扁額装飾として額縁に貼られ、この絵画の副題となるに至った。
訳者から一つ指摘しておきたい。この舞姫が見せている立ち姿は既に、現代のモデルさんが脚を細く高く見せるために決める、あの姿勢に通じるものがある。




