14. オノレ・ドーミエ氏の肖像画に寄せて
XIV
VERS POUR LE PORTRAIT
DE M. HONORÉ DAUMIER[1]
脚韻ABBA
この肖像画というのは、原註にあるシャンフルーリ『戯画の歴史』に収録された挿絵のことらしい。Internet Archive にあった同書の Honoré Daumierの項に、ボードレールのこの詩を含むページがあるので、スクリーンショットを示す。
この元の絵がないか Google 画像検索で探したが、見つからない。この本をダウンロードして切り出した画像がこちら。
ここに我等の提供する貌の、
その芸術は、他の誰よりも繊細で、
自らを笑うことを教えてくれ、
読者よ、これぞ賢者というもの。
Celui dont nous t’offrons l’image,
Et dont l’art, subtil entre tous,
Nous enseigne à rire de nous,
Celui-là, lecteur, est un sage.
風刺家であり、嘲笑者である。
とはいえ「悪」と、その結末を
描き出すそのエネルギーこそ、
彼の心の美しさを証する。
C’est un satirique, un moqueur;
Mais l’énergie avec laquelle
Il peint le Mal et sa séquelle,
Prouve la beauté de son cœur.
その笑いは、あの歪んだ笑いではない。
メルモスやメフィストの
アレークトーの松明の下の
人を焼き尽くす、我々を凍りつかせるような。
Son rire n’est pas la grimace
De Melmoth ou de Méphisto
Sous la torche de l’Alecto
Qui les brûle, mais qui nous glace.
連中の笑い声、悲しいかな!陽気さの
痛ましい重荷に過ぎず。
彼が笑い声は率直に広く、
輝けること、彼が慈悲のしるしも同然の!
Leur rire, hélas! de la gaîté
N’est que la douloureuse charge;
Le sien rayonne, franc et large,
Comme un signe de sa bonté!
原註
1. 以上の詩節はドーミエ氏の肖像画のために書かれたもので、パスカル氏の素晴らしいメダリオンを元に製版され、シャンフルーリ『風刺画の歴史』第2巻に掲載されており、この著者は例によっての情熱的な論証を以て、風刺画家に対して正当な評価を与えています。
(編集者注)
Ces stances ont été faites pour un portrait de M. Daumier, gravé d’après le remarquable médaillon de M. Pascal, et reproduit dans le second volume de l’Histoire de la caricature, de M. Champfleury, où cet écrivain a rendu justice au caricaturiste avec la raison passionnée qui lui est habituelle.
(Note de l’éditeur.)
訳注
この讃辞は、絵を描いたドーミエよりも、描かれたパスカル氏を持ち上げているような気がしなくもない。
Melmoth: マチューリンのゴシック小説『放浪者メルモス』Melmoth the Wanderer だが、明らかに『さまよえるオランダ人』と同じく『さまよえるユダヤ人』の印象をなぞっているので、『さまよえるメルモス』とすべきであった
Méphisto: 悪魔メフィストーフェレがファウスト博士を翻弄するゲーテ『ファウスト』は、第1部が1808年、第2部が1833年に発表された。これにボードレールは強く感銘しつつ、反発も覚えたように見受けられる
Alecto: 運命の女神三柱の一。その名は「絶え間ない怒り」を意味する。ウェルギリウス『アエネイス』では、怒りのアレークトーが女神ユーノー Juno の命を受けて、トロイアー人に混乱を齎し、滅亡に至らしめる




