10. 讃歌 HYMNE
押韻ABAB
初出はサバティエ夫人への手紙(1854)であるが、『悪の華』には 21. 美への讃歌 Hymne à la Beauté に題名内容とも重複するためか未収録。
讃歌 Hymne は、主に宗教歌として、特にカトリックでは「マニフィカト」「テ・デウム」の2種類が多く作曲されている。それ以外にも国歌 Anthems を指すこともあり、オリンピック讃歌やヒット曲「愛の讃歌」などというものもある。
なお、無関係と思うが、ベルリオーズ『テ・デウム』は1849年作曲。パリ万博(1855)で演奏された。
いとも愛おしい、いとも美しい
光もてわが心満たす人よ
天使に、末永き崇拝の的に
末永く幸せあらんことを!
À la très-chère, à la très-belle
Qui remplit mon cœur de clarté,
À l’ange, à l’idole immortelle,
Salut en l’immortalité!
それはわが人生に広がって
塩漬けにされた空気よろしく、
飽くことを知らぬわが魂へ
永遠の味を注ぎ込む。
Elle se répand dans ma vie
Comme un air imprégné de sel,
Et dans mon âme inassouvie
Verse le goût de l’éternel.
いつも爽やかな匂い袋
大切な小さな部屋の空気、
夜通し忘れられた香炉
人知れず煙を吐き、
Sachet toujours frais qui parfume
L’atmosphère d’un cher réduit,
Encensoir oublié qui fume
En secret à travers la nuit,
示し給え、不朽の愛よ、
如何にか真を表さん?
目に見えない麝香の粒よ、
眠れるはわが久遠の深淵!
Comment, amour incorruptible,
T’exprimer avec vérité?
Grain de musc qui gis, invisible,
Au fond de mon éternité!
いとも善良、いとも美しい、
喜びを、健康を遣わし給う方よ、
天使に、末永き崇拝の的に
末永く幸せあらんことを!
À la très-bonne, à la très-belle,
Qui fait ma joie et ma santé,
À l’ange, à l’idole immortelle,
Salut en l’immortalité!
訳注
Salut: 今日では「Hi !」「Bye !」「んちゃ!」「んじゃ!」といった、かなり軽い挨拶。出会いと別れに共通の挨拶で済ませるのも、元はラテン語で「救済」「健全」であったというのも、我々からすると異様に見えるばかりであるが、これも「昔のパリはもう何処にもない」ということなのであろうか
de sel: マタイによる福音書5章
13 あなたがたは、地の塩である。もし塩のききめがなくなったら、何によってその味が取りもどされようか。もはや、なんの役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々にふみつけられるだけである。




