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『小銭稼ぎをこよなく愛する貧乏貴族、四人のエリートに人生を狂わされる』 ~楽して生きるはずが、なんでこんなことに~  作者: 佐藤なつ
任務開始

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想像以上

まず、シオン。


火は起きた。

驚くほど、簡単に。

ただし、業火だった。

火柱が立った。

たき火程度にしろと言うが、無理と即断される。

やったこと無いらしい。


急遽、薪を拾い集めて火打ち石で火をつけた。

「そんな原始的な道具、まだ実存するんですね。」

俺の事を、骨董品を見るような目で見るな!



次に、ルカ。


これも簡単に水が出た。

噴水のように大量に。

シオンの起こした業火を消してくれたのはありがたかったが、俺はびしょ濡れになった。

俺だけ。

「避けられないんですか?」

心底、不思議そうに聞かれ、更に、

「乾かせないんですか?」

なんて首を傾げてくる。

乾かしてくれたが、俺のメンタルはボロボロになった。



次にエリアス


愛馬の世話はできる。

ただし、リンゴあげたりブラッシング程度。

「・・・ボロが落ちているんだけど。」

「触れない。」

キラキラしいオーラ出して言われる。

高位貴族圧にやられて、謝りそうになるのを堪えて一言。

「・・・・今日だけだぞ。」

・・・俺がやるしかないだろう。



次に、バルド。


馬車の足回り点検は完璧。

さすが騎士団長子息。

むしろ、俺より詳しい。

この馬車は空間拡張できて、寝床も完備してあるらしい。

四人は快適な馬車内で休むと引っ込んでいった。


俺だけ、ぽつんと残された。


食事?

彼らは自分のマジックバックから高級形態食を出して優雅にお召し上がりになるらしい。

なんでもあるんだな。

マジックバック。


俺は何も無い。


あいつら可哀相とか思った、自分を殴りたい。

呆然としている内に、たき火も消えた。

火の番をするヤツもいないし、たきぎを集める人もいない。

また、火を起こす気力もない。

じわじわと寒さが迫ってくる。

このままでは凍えてしまうだろう。

すると、後ろで、カチャカチャと音が。

平民君だ。

御者台を触り、カバーみたいなもの・・・恐らく風よけだろう・・を出してくれた。


「これで少しはマシになる。」

神?!


その上、黙って携帯食まで出してくれた。

神の二段階進化!

俺、こっちの神に魂売るわ!

心の底から宣誓した。

「俺、同情するの止めた。明日、早朝に出て、休憩無しで飛ばして明日中に到着する。指導は現地に丸投げする。」

「・・・そうして下さい。あなたには無理だ。」

冷たく切り捨てられる言葉に聞こえるが、なんか優しさを感じた。

「なぁ、あんたの名前教えて。」

ダメ元で聞いてみる。

平民君は背中を向けた。

やっぱり、ダメか。


「・・・カイだ。」

小さな小さな声。

それでも確かに聞こえた。


「わかった。これから宜しく。カイ。」

「あまり、呼ぶな。」

顔だけ振り返って小さな声で拒絶される。

そのまま去っていってしまった。


本名かどうかわからない。

それでも、俺の胸は少し温かくなった。

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