崩れ落ちる
本日2話目投稿です
ぶしゃ~と言う水音がして、視界が白く染まった。
「完了です。」
顔を拭っても拭っても、ぼたぼた水が滴り落ちる。
「シオン、水くみは繊細な操作が必要なんですよ。水瓶は壊してはダメです。」
ルカのドヤッた説明に無言のシオン。
前回より気を使ったようだが、二人一斉。
つまり二倍。
パンツまでびっちゃりだ。
「だから、ゲホッ。なんで同じ失敗すんだよ!」
叫ぶと咽せた。
「無理して喋らない方が良いのでは?」
そういう気遣いはいらない!
「いいか、よく聞け!水くみって井戸から水を汲んで運ぶことなんだよ!」
咽せる苦しさより、魂の叫びが勝った。
「同じ失敗と言うなら、何故避けられないんですか?」
ルカが不思議そうに言う。
「伝わらない説明は説明ではない。」
エリアスが説教してきた。
その上、
「水を汲んで掃除しろと言う意味だと思いますよ。」
仕事を勝手に先読みするな。
有能嫌い。
もう泣き言が口から止まらない。
「も~、やめてくれよ。今は、そうじゃないんだ。
欲しいのは有能じゃないんだよ~。
嫌がらせに屈する所が欲しいんだよ・・・。」
自分達が何の為にココに流されてきたか考えて。
粛々と罰を受けて欲しいの。
もう、常識通じなさすぎて、嫌い。
ルカが
「そうですか。辛いですね。落ち着いて。大丈夫。」
なんてなだめてくる。
聞き方が優しい。
乾かし方が優しい。
あぁ、そうか神官だったな。
告解か、救済の一環のつもりだろうか。
腹が立つが、凍える身体に暖かい風、優しい言葉。
「はい、乾きましたよ。」
トドメは信じられない仕上がり。
パサパサ髪がツヤツヤ。肌もしっとり。服はふんわり。
嘘!?これが私?
感動に、慈愛の微笑みが返ってくる。
イケメン。
胸がキュンとしちゃう。
「次は、避けてくださいね。」
そうじゃねぇだろ!
気遣いの方向が違うんだよ!
ダメだ。
このままじゃ主導権を握られる。
こっちの世界の現実を見せないと。
俺は、庶民の水くみをやって見せた。
桶を使って井戸から水を汲み、担いで水瓶に入れた。
これが正しい水くみだっていうのを実施してやった。
「信じられないくらい、非効率的ですね。」
「いまだにこんな前時代的な事をしているんですか?」
「この道具は何百年使っているんですか?」
「・・・・だから、俺をそんな目で見るな!」
本気で、膝から崩れ落ちた。
俺は骨董品じゃないんだ!




