第22話「はじまりの依頼、四人の誓い」
朝、旅人の灯の窓から差し込む光に目を覚ましたユウは、塔の影を見上げながら静かに息を吐いた。記憶域――その敷地に入ることが、今の彼らの目標だった。だが、Fランクのギルドカードでは正門を通ることすらできない。
食堂で朝食をとる4人。リナが地図を広げながら言う。「記憶域って、円形に三つの区分があるんだって。生活圏、商業圏、工業圏。それを囲む塀の内側が全部“記憶域”って呼ばれてるらしい」
「塔はその中心にある。つまり、どこから入っても、最終的には塔に近づけるってことか」ライが呟く。
「でも、正門はDランク以上じゃないと通れない。なら、別の方法を探すしかないね」レイナが言う。
ギルドに向かい、依頼掲示板を確認する。初心者向けの任務の中に、“商業圏への物資搬入補助”という依頼があった。報酬は銀貨5枚。目的地は記憶域の外縁にある商業ゲート。
「これなら、敷地の近くまで行けるかも」ユウが言い、4人は依頼を受けることにした。
任務は、荷車を護衛しながら商業ゲートまで運ぶというものだった。道中、荷車の車輪が壊れたり、野盗に襲われたりとトラブルが続く。ユウは水流跳躍で敵の背後を取るが、足場が悪く着地に失敗。リナの魔力矢も風に流され、狙いが外れる。
「初心者って、こういうことか…」レイナが苦笑する。
ライが冷静に指示を出し、なんとか荷車を守り抜く。商業ゲートに到着すると、門の前には記憶管理局の兵が立っていた。
「ここから先は、登録者以外立ち入り禁止だ。ギルドカードを見せろ」
4人はカードを提示するが、Fランクでは通行許可が出ない。だが、荷車の依頼主が「彼らは正式な任務で来ている」と証言し、ゲートの外側の搬入口まで同行を許される。
「ここが記憶域の外縁か…」ユウが塀を見上げる。高く、重厚な壁。その向こうに、塔の尖塔がわずかに見えた。
「塔に入るには、教会に銀貨10枚をお布施する必要があるらしいよ。チャレンジは一人一回だけ。しかも、階層ごとに試練があるって」荷車の職人がぽつりと語る。
「教会って、教団の関係者が運営してるの?」リナが尋ねる。
「さあな。昔は教団が管理してたって話だけど、今は“記憶管理局”が仕切ってる。真相は誰も知らないよ」
任務を終え、ギルドに戻った4人は報酬を受け取る。銀貨5枚。宿代を差し引けば、残りはわずか。
「塔に挑戦するには、銀貨10枚。つまり、あと倍は稼がないと」レイナが計算する。
「でも、今日の任務で分かった。正門以外にも、敷地に近づく方法はある。情報を集めながら、任務をこなして、少しずつ進もう」ユウが言う。
その夜、宿の部屋で4人は語り合う。塔の謎、記憶域の構造、そして自分たちの目的。
「俺は…塔の中にある“記憶”を探したい。誰にも言ってないけど、そこに答えがある気がするんだ」ユウが静かに語る。
仲間たちは黙って頷いた。それぞれが、まだ語られていない思いを胸に抱えていた。
窓の外、塔は月光に照らされていた。その影は、まるで彼らを見守るように、静かに夜空に浮かんでいた。
次回 第23話「塀の向こう、記憶管理局との接触」




