第19話「砂と崖の狭間で(前編)」
一行は街を離れ、乾いた風が吹き荒れる砂漠地帯へ。
かつて文明が栄えたとされる西方の都市跡。 今では砂に埋もれ、風に削られた廃墟が広がるだけの無人地帯となっていた。 この地に足を踏み入れた者の多くが、二度と戻らなかったという噂がある。
「オゾンが言ってたんだよな…たしか、この辺りが教団の実験区だったかもって」 ユウが瓦礫の上に腰を下ろし、ぼんやりと空を見上げながら呟く。 レイナは地図を広げて答える。「でも、記録は曖昧よ。教団が本当にここで何かしてたかは、はっきりしてない」
リナは周囲の地形を分析していた。 「崖の向こうに補給拠点があるかもしれない。でも、道は危険よ。地形が不自然すぎる。人工的に削られてる感じがする」
一行は崖へ向かって進み始める。岩肌がむき出しの急斜面を登る途中、砂の中から突如現れたのは――グラヴァル。
鋼鉄の外骨格に覆われた四足獣。 その背には放熱板が広がり、地中を潜って奇襲を仕掛ける能力を持つ。 熱感知・振動探知・自己修復機能を備えた、異常な構造のモンスターだった。
「三体いる…!」リナが叫ぶ。 ユウが前衛に出て剣を構えるが、一体が地面を割って背後から飛び出す。 「ぐっ…!」ユウが吹き飛ばされ、岩に叩きつけられる。
レイナが魔術で熱を集中させ、放熱板を狙う。 一体の動きが鈍るが、残りの二体が猛攻を仕掛けてくる。
「リナ、左から来る!」レイナが叫び、リナが素早く回避する。 だが、崖の上から飛び降りたグラヴァルが、爆風と砂煙を巻き起こす。
視界が白く染まり、音が消えた。 レイナが倒れたユウに駆け寄る。「ユウ…!しっかりして!」
砂煙の向こうで、グラヴァルたちがゆっくりと歩み寄ってくる。 その瞳は、冷たく、確実に獲物を狩る者のそれだった。
「こんなの…普通のモンスターじゃない」 レイナが呟く。 教団が関わっているのか――確証はない。だが、この異常な構造と動きは、自然発生したものとは思えなかった。
この地に残された教団の影。 そして、仲間たちの限られた戦力。 崖の向こうに希望があると信じて、彼らは今、最大の試練に立ち向かう。
次回、第20話――「砂と崖の狭間で 後編」




