第8・1節 小田原へ、いざ出陣
連日の猛特訓は、あっという間に過ぎ、小田原へ出陣することとなった。
重たい鎧を着て、カチャカチャと音をさせながら玄関まで行くと、宗恩が声をかけて来た。
宗恩:「お待ちください、利休様。こちらをお持ちください。」
私:「えーと、これは何でしょう?」
宗恩:「帛紗で作ったものです。薬包みにでも使っていただけますか。」
私:「見て良いですか。」
それは、細川と古田から聞いていた畳十七目×十九目の帛紗であった。
私は以前から準備していた言葉を口にした。
私:「帛紗は、この大きさが一番手ごろですね。これからのち、帛紗はこの大きさにしましょう。」
宗恩:「そう言ってくださると、大変うれしゅうございます。」
また一つ歴史が作られたな、と一人頷いていると、
宗恩:「どのように、帛紗の大きさを周知いたしますか?」
私:「どのように?」
宗恩:「はい。どなたかに周知いたしませんと、大きさが変わりません。」
これは困った。
セリフは考えていたのに、周知の仕方は考えていなかった。
宗恩:「利休様?」
私:「そうですね。私から関白様や弟子達には伝えましょう。宗恩からは、友人や知人に、私が帛紗の大きさを変えた旨を伝えてください。」
宗恩:「承知いたしました。では、気を付けて行ってらっしゃいませ。」
玄関には知らない人Aがいた。
知らない人A:「お久しゅうございます、利休様。本日から身の回りの世話をするよう仰せつかりました。」
私:「ありがとうございます。宗恩、それでは行ってきます。」
宗恩:「はい、行ってらっしゃいませ。」
しばらく知らない人Aと歩いていると、また知らない人BとCが現れた。
知らない人B:「利休殿、お待ち申した。一緒に関白様の本陣へ参りましょう。利休殿の馬も用意されています。」
私:「ありがとうございます。」
知らない人C:「利休殿、鎧は重たいでしょう。私どもですら重たくて仕方ないくらいですので。」
私:「そうですね。すごく重たいです。」
更に歩いていると、蒲生氏郷、瀬田掃部、それと知らない人Dが現れた。
知らない人D:「利休殿、我々もご一緒させて頂きます。」
瀬田:「今日は晴れてよかったですね。」
蒲生:「利休殿は鎧姿も似合っておりますぞ。」
私:「ご冗談を。」
細川と古田が現れた。
細川:「おはようございます、利休殿。利休殿のお世話は名古屋山三郎殿かな。」
知らない人A:「はい、名古屋山三郎でございます。細川様に名前を憶えていただき光栄です。主君の蒲生様には、時々忘れられてしまいますので。」
蒲生:「私のいる前でそういうことを言うな、三郎。私の部下でなければ、切られているぞ。」
知らない人A:「肝に銘じておきます。」
どうやら知らない人Aは、名古屋山三郎といって蒲生氏郷の部下らしい。
それにしても美少年だな。
細川:「名古屋山殿の奥方は、確か出雲阿国殿でしたな。以前お会いしたことがありますが、今もお元気ですか?」
名古屋山:「はい。元気でございます。阿国の事まで気にしていただけるとは、本当に光栄でございます。」
知らない人B:「細川殿の博識は、今に始まったことではないですからね。」
細川:「そういうな高山殿。ところでうちの玉が良く世話になっていると聞いたが。」
知らない人B:「はてさて、なんのことやら。」
知らない人Bは、高山右近で決まりだな。
細川玉子との話しという事は、キリスト教の事で、何かあったのかな?
知らない人C:「高山殿、以前から言っていますが、キリスト教はやりませんぞ。」
高山:「わかっておりますよ、芝山殿。そのうち、キリスト教の良さをわかっていただければ。ですよね、蒲生殿、牧村殿。」
知らない人D:「そうですね。」
蒲生:「一笑一笑。わしと牧村殿は好きでやっている事。気にするでない芝山殿。」
知らない人C:「ありがとうございます。蒲生殿。」
知らない人Cは高山右近で、知らない人Dは牧村兵部か。瀬田掃部と古田もいるので、利休七哲が勢ぞろいしたことになる。
それと名古屋山三郎か。
未来人・出雲阿国の夫みたいだ。
瀬田:「利休殿もいることですし、茶の話をした方が、良くありませんか。」
私:「どうぞお気になさらずに。今は関白様に点てる茶のことで頭が一杯です。」
蒲生:「毎日ですからな。利休殿も大変だ。はっはっはっ。」
ぞろぞろと利休七哲で歩いていると、知らない人Eが声をかけて来た。
知らない人E:「これまた豪華な顔ぶれですな。」
古田:「お久しぶりです、秀次殿。兄の秀長殿の御病気はいかがですか?」
知らない人E:「あまり良くありません。」
蒲生:「それは心配ですな。こたびの戦には出陣されるのかな?」
知らない人E:「兄は出陣したがっておりますが、父は反対しております。」
蒲生:「関白様も子供がかわいいですからな。はっはっはっ。」
知らない人Eは、もしかして豊臣秀次かな。
なんだかすごいメンバーで歩いている気がするけど。
そして、前から現れたのが何と、馬に乗った関白秀吉だった。
秀吉:「宗易、随分な顔ぶれと歩いているな。わしより偉そうだ。」
私:「私もそう思っていた所です。人生最後の戦に向かう老人には、なんとももったいない人ばかり、本当に果報者です。」
秀吉:「うむ。さて秀次。」
豊臣秀次:「はっ。」
秀吉:「秀長の代わりに全軍の総大将を務めよ。」
豊臣秀次:「かしこまりました、父上。」
秀吉:「では、本陣へ参るぞ。」
本陣は町の外に布陣していた。
石田三成が、こちらを見て嫌味を言ってきた。
石田三成:「茶坊主ごときが、弟子を引き連れ偉そうにやってきた。」
秀吉:「わしも弟子か。そうかもな。宗易、何か言ってやれ。」
私:「こんな重たい鎧を着て走れる皆さまを尊敬しています。運動不足の茶坊主では、立っているだけで汗が出てきます。もう、鎧を脱いで良いですか関白様。」
石田:「重たい鎧か。そうかもしれないな。」
蒲生:「はっはっはっ。」
秀吉:「茶坊主に鎧は似合わぬな。だが、出陣式までもう少し着けていろ。」
私:「かしこまりました。」
なんとなく場が和み、出陣式が始まった。
秀吉:「皆の者、こたびは良く集まってくれた。敵は小数。既に勝敗は決している。恐れるものは何もない。勝って京都に戻ってくるぞ。では出陣じゃ。」
皆んな:「おー。」
この作品は「YouTube(
https://www.youtube.com/watch?v=HaRDUaqFfdM&list=PLH33wsaeFCZVs3pm2qrdF_X2PLHNqSU-v&index=12&t=1s
)」にも掲載しています。




