第7・11節 山上宗二と手紙の送付
細川:「利休殿、小田原へ行く前に知っておいていただきたい人物がいます。山上宗二殿です。山上宗二殿は、もともと私の茶道の師匠で、利休殿を私に紹介してくださった方です。」
私:「細川殿の茶道の師は、利休百首の元を作ったという細川殿のお父さんだと思っていました。」
細川:「父・幽斎にも習いましたが、山上宗二殿にも、茶の湯を習いました。」
古田:「利休殿、利休百首のこと、よく覚えていましたね。」
私:「ありがとうございます。」
細川:「さて、山上宗二殿についてですが、今は、関白様の不興を買ったために京都から追放され、小田原城にいる敵方の北条氏に身を寄せています。実直な性格で知識も豊富、茶の湯も上手な方です。ただ、誰に対しても思ったことをすぐ口に出し、持論を曲げず、人に憎まれやすい性格です。それでも、織田信長様には厚遇されていたのです。関白様の茶頭も務めています。」
私:「信長様に厚遇されたということは、ずいぶん前から利休の弟子だったのですね。」
細川:「20年以上、利休殿に師事していました。」
私:「20年ですか。それなら茶道は超ベテランですね。」
細川:「利休殿、そろそろカタカナ語は卒業してください。聞くたびに冷や汗が出ます。さて、ここからが本題です。山上宗二殿は敵方の北条氏に身を寄せているため、小田原城に籠城することを選び、落城の際、皆川広照殿の助力で関白様に投降します。小田原城落城の後、小田原で利休殿が茶会を催すのですが、北条氏に一宿一飯の恩義を感じていたのでしょう、利休殿の目の前で関白様の不興を買い、目と鼻をそがれた上で死刑になります。」
私:「えっ!目の前でですか!」
細川:「はい。しっかり目を背け、見ないようにしてくださいね。それと皆川広照殿は、北条氏照と小田原城竹浦口を守備しているのですが、4月8日夜、徳川家康殿の元に投降します。このとき、山上宗二殿は、皆川広照殿とは別行動をとって、利休殿の元へ来ますので、迎え入れてください。」
私:「顔がわからないのですが。」
細川:「悪人面の坊主が面会を求めてくるので、すぐわかりますよ。それから、もし皆川広照殿も一緒に関白様の元に投降する可能性が出てきたら、必ず断って下さい。皆川広照殿には徳川家康殿と会って『山上宗二記』を世に広めるという大役があります。」
私:「『山上宗二記』?」
細川:「未来における、茶道の重要な歴史書です。利休殿に伝え聞いたことを、村田珠光の時代からさかのぼって書いています。利休殿に批判的な部分もありますが、それだけに、この本がないと、茶道の歴史がかなり改変されるでしょうね。では利休殿、4月8日に山上宗二殿が投降して来たら、まずは関白様に助命を乞い、4月11日の茶会では、逆に助命せずに殺されるのを黙って見ていてください。それが正しい歴史です。いいですね。」
私:「わかりました。」
細川:「次に、利休殿には陣中から手紙を書いてもらいます。まず4月10日、山上宗二殿が処刑される前日ですが、関白様の命で、大政所様への朱印状を利休殿が代筆します。関白様に言われた通り書けば良いので、難しくはないと思います。」
私:「朱印状って何ですか?」
細川:「要は、関白様の実印を押した手紙のことです。次に滝本坊実乗殿宛ての手紙を4月22日に書いてください。この方には利休殿が直接会うことはありません。ただ、男山八幡宮社僧・滝本坊実乗殿に宛てた手紙を書けば良いだけです。内容は関白様の近況報告です。ただ、山上宗二殿のことは書かない方がよいです。」
私:「4月22日?滝本坊実乗殿?これは覚える必要があるのですか?」
細川:「はい、覚えてください。次に、5月末から6月初めごろ、古田殿から手紙が来ますので6月4日に近況報告を出してください。」
私:「6月4日、古田殿へ手紙を返信ですか。」
細川:「次に6月10日、伊達政宗殿に言伝を頼む手紙を木村吉清殿に宛てて出してください。5月、伊達殿は、利休殿に茶を習いたいと関白様に申し出ます。残念ながら今の利休殿では、人に教えられるほどの技量はありません。断りの文を出してください。」
私:「6月10日、木村殿に断りの文を出す。」
細川:「同じころ、古田殿から武蔵鎧という手紙が届きます。6月20日に返信してください。内容は決まっています。特に、小田原石垣山城、俗にいう一夜城の話は必ず書いてください。
武蔵鎧さすがに道の遠ければ
問わぬも床し問うも嬉しし
から始まる文章になります。後でたっぷり練習しますが、要は、いろいろと愚痴を述べた文になります。戦争中ですから精神的にもつらいのでしょうね。」
私:「今度は6月20日ですか。」
細川:「次に・・・。」
私:「細川殿、いろいろと有り難いのですが、頭が一杯でもう覚えられません。メモを取って小田原へ持っていきたいのですが、駄目ですか?」
細川:「暗記できるまで、数日かけて同じ話をしましょう。歴史を改変しないための事柄です。まあ、とりあえず、今は休憩しましょう。」
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