第7・10節 細川ガラシャのお料理教室 ~麩の焼せんべいについて~
私達は細川家の台所へ移動した。
そこにはお吟がいた。
お吟:「おはようございます、お父様。ご機嫌はいかがですか?」
私:「今日も元気いっぱいですよ、お吟。」
玉子:「それでは利休様、さっそく利休様の腕前を披露していただきましょう。ここに大根が一本あります。こちらの皿に載っているような細切り大根にしてください。その後、味噌汁を作っていただきます。」
私:「厳しい教育者の古田殿が二人いる。」
古田:「利休殿、私はここまで厳しくありませんよ。」
私:「厳しいのは認めるのですね。」
私は一人暮らしで培った腕前を披露した。
まず輪切りにした大根を桂むきにし、何枚か重ねて細切りを作った。
盥で水洗いし、水をよく切ったのち、皿に盛った。
一方で、鍋で沸騰した湯に昆布を二回くぐらせて出汁を取り、味噌と塩で味を整え、細切りにした大根を入れた。何度か味見をして、細川夫婦と古田、お吟に提供した。
我ながら良い出来だと思った。
玉子:「文句なしの腕前ですね。茶道から料理の先生へ転身しても良いくらいです。」
私:「普通のサラリーマンが私の夢です。」
お吟:「サラリーマン?」
私:「プログラマーだったので、パソコンがないと何もお見せできないのが残念ですけどね。」
細川:「利休殿、カタカナ用語は禁句です。」
古田:「利休殿の腕前は、料理人・千利休の名に恥じないもののようですね。本当によかった。」
そして、次のお題が発表された。
玉子:「麩の焼せんべいを作っていただきます。作り方は知っていますか?」
私:「まったく知りません。何ですか麩の焼せんべいって。」
玉子:「では一度、私の方で作ってみます。よく見ていてください。」
まず小麦粉に水を少量入れ、木地を作り、次に胡桃を細かくして、皿に盛った。
木地をフライパンのような大きめの鍋に、クレープのように丸く敷いて焼いた。
クレープのようなものに、味噌と胡桃を載せ、くるりと巻いて完成である。
玉子:「熱いうちに食べてください。皮が固くなってしまうので。」
私:「素朴な感じですが、すごく美味しいです。胡桃の甘さと味噌の塩加減が絶妙ですね。」
玉子:「ありがとうございます。では利休様、さっそく作ってみましょう。」
私は、見様見真似で作ってみた。
味見せず、ぶっつけ本番となったのがまずかったのだろう。
玉子:「これでは人にお出しできませんね。」
私:「しょっぱい。味噌が多すぎたかな。皮も厚すぎで、粉っぽい。ひどいですねこれは。」
細川:「お吟殿、全員にお水を出して下さい。」
お吟:「かしこまりました。」
古田:「利休殿、はじめはこんなものです。気を落とさず、もう一度作ってみましょう。」
玉子:「小麦粉が足りませんね。丁度良い機会ですので、小麦粉を作ってみましょう。」
私たちは、台所の横の餅つき用の臼の前に集合した。
玉子:「小麦粉は臼に小麦を入れ、杵でつぶして篩にかけて作ります。小麦ふすまは手で取り除きます。一緒にやってみましょう。」
私:「小麦ふすま?」
細川:「小麦の皮の部分です。篩にかけても全部は取り除けないです。この桃山時代では、白い小麦の製粉方法は、まだありません。将来、小麦を少しずつ小さくし、段階的に小麦粉を作って行く段階式製粉方法が確立するのですが、複雑な上、様々な機械も必要なので、作るのは難しいですね。」
古田:「では、餅つきならぬ、小麦つきをしましょう。」
男三人、交代で小麦を杵でつき、篩にかけては杵でつくという作業を繰り返した。
玉子:「このくらいで良いでしょうね。では利休殿、小麦や味噌の分量をお教えします。次は美味しく作りましょうね。」
私:「はい。よろしくお願いいたします。」
分量を正確に聞いて作った麩の焼せんべいは、先ほどとは別物であった。
私:「素朴なのに美味しい。」
古田:「これは良いですね。私の師・千登美子夫人の麩の焼を思い出します。」
玉子:「合格です。では利休殿、縁高に麩の焼せんべいを五つ入れ、茶室に持っていきましょう。」
細川:「良かったですね。利休殿。」
私:「皆さん、ありがとうございます。」
五段重の縁高に一つずつ麩の焼せんべいを入れ、五人で茶室に移動して食べた。
玉子:「ご馳走様でした。では、次の料理をお教えしましょう。台所へ移動しますよ、利休殿。」
私:「うわー、これは・・・」
細川:「利休殿、カタカナ用語は禁止です。」
古田:「私は、ここまで厳しくないですよ。」
私:「まだ何も言ってません。」
玉子:「ささ、早く。」
その後、私と細川玉子、お吟の三人で、全員分のお昼ご飯を作った。
割と美味しくでき、お昼ご飯は合格した。
玉子:「お夕食も利休殿には手伝っていただきますので、あなた、古田様、時間になったら、台所へ利休殿を連れてきてくださいね。」
細川:「利休殿、カタカナ用語は禁止です。」
古田:「私は、ここまで厳しくないですよ。」
私:「まだ何も言ってません。」
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