表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
利休になった日  作者: shoundo
第7節 馬と書と花と料理
72/150

第7・3節 正午の茶事(縁高の所作) ~五徳について~

細川玉子は、私の前に縁高(ふちだか)を置き、茶道口(さどうぐち)まで下がった。

玉子:「お菓子お召し上がりの上、席を改めとうございます。どうか中立を。」

私:「それでは中立させて頂きますが、ご用意が整いましたら、お鳴りものでお知らせください。」

玉子:「ことによりまして。」


細川玉子は(ふすま)を閉めて水屋の方へ下がっていった。

私は次礼(つぎれい)をし、三段の縁高をおしいただいてから、二段目以降の縁高を一番下の縁高上でずらし、蓋の上に載っている黒文字を一番下の縁高中に入れた。

二段目から上を全部持ち上げ、私と細川の間に置き、懐紙(かいし)の丸い方を手前にしてひざ前に出した。菓子は黒い羊羹(ようかん)だった。

私:「細川殿、もう菓子は取っても良いのでしょうか。」

細川:「どうぞお取りください。」


私は、羊羹を黒文字(くろもじ)で軽く刺し、懐紙を縁高の方へ持って行った。

古田:「懐紙は畳の上に置いたまま、左手を添えて、菓子を懐紙の方へ運んできてください。」

私:「はい。わかりました。」


カラになった縁高を次客へ送り、古田が縁高を重ね終わったのを確認してから、菓子を食べようとした。

古田:「全員に、それではいただきましょう、と言ってください。」

私:「それでは、いただきましょう。」


三人が菓子を食べ終わり、細川に次礼をして、床の間の軸、風炉を拝見した。釜はもう少しで沸騰(ふっとう)しそうだった。

私:「良い感じで釜が沸騰してきていますね。」

古田:「そうですね。少し、沸騰するのが早いですね。おそらく一度、釜を降ろして、炭をつぎ直す必要があるでしょう。一番良いのは、濃茶点前の時に松風(しょうふう)の煮えになっていることです。ただ、玉子殿ならば、うまく火加減を調整されるでしょう。」

私:「なるほど。」

細川:「利休殿、そろそろ待合(まちあい)へ進みましょう。」


三人で待合へ進み、五徳(ごとく)の話題になった。

細川:「利休殿は五徳の由来をご存知ですか?」

私:「そもそも五徳って何ですか?」

古田:「茶釜(ちゃがま)などを()える三つ足の鉄輪です。桃山時代に入り、利休殿が釜師(かまし)たちに開発させたものです。」

細川:「もともとは、今の五徳とは逆で、足を下に輪を上に向けて使っていました。茶道の始まりと共に、室内で用いる風炉用に、爪を上にして使うようになったのが、五徳の三つ足を上に向けるようになった始まりです。」

私:「三つ足なのに五徳ですか。」

古田:「確か、釜を置く竈子(くどこ)の読みが逆さまになって、五徳と言うようになったはずです。」

細川:「良くご存知で。古来、日本では、囲炉裏(いろり)において鍋や釜で煮炊きをするとき、自在鈎(じざいかぎ)竈子(くどこ)のいずれかを用います。竈子(くどこ)は三本足で、環を上にして用います。古代の(かなえ)が由来です。五徳の名の由来は、竈子(くどこ)以外にも、火所(くとこ)火床(ことこ)が転訛したという説や、仏教の六徳から自在徳を除いた五徳から来たという説もあります。」

古田:「利休殿が五徳の開発を依頼した釜師・辻与次郎(つじよじろう)殿は、最近、まむし頭や長爪、牛爪、方爪なども作っているようですね。」

私:「まむし頭?」

細川:「日本マムシは、2尺程の毒蛇(どくへび)です。毒性は強く、噛まれて3・4日で死ぬ場合もあります。まむし五徳は、爪がマムシの頭のような形から、その名がついたものです。風炉用の五徳は輪の部分を欠けさせて、前瓦(まえがわら)を置きます。前瓦は、村田珠光が使い始めたものです。それまでは眉風炉(まゆぶろ)を用いていたため、不要でしたからね。」

古田:「風炉の場合、五徳を据える高さは、筒釜(つつがま)などの様に丈がある釜には、五徳を低く据え、平釜のように丈の低い釜には高く、真形釜(しんなりがま)に準ずる場合には、釜をかけてみて、風炉の上縁より釜の羽や羽落(はおち)が、低くならないように据えます。炉の場合は、炉の切り方で違いますが、炉正面に向かって右側に爪の一本を左に向くように、左側には縦に二本並ぶように据えます。据えた五徳の高さは、風炉同様、釜に合わせます。釜をかけてみて、口に柄杓をあずけ、柄杓を斜めに流した状態で、畳の縁との間に指が一本入る程度です。」

細川:「まあ、黄金の茶室の風炉は眉風炉なので、五徳は不要でしょう。むしろ、灰の作り方を覚えた方が良いかもしれません。」

古田:「灰は簡単には作れませんので、小田原征伐(おだわらせいばつ)の前は、灰型だけを教えて、戦場に持って行った分を使い回すようにしてもらいましょう。」


銅鑼が鳴り始めた。私達は立ち上がり、それぞれ石の上でつくばった。

銅鑼が鳴り終わり、少しして、私はそろそろだろうかと思い、二人に声をかけた。

私:「それでは参りましょう。」

細川:「だいぶ慣れてきましたな利休殿。」

古田:「そうですね。ここまでは良い感じです。」

私:「ありがとうございます。」


この作品は「YouTube(

https://www.youtube.com/watch?v=HOED_hjd3X4&list=PLH33wsaeFCZVs3pm2qrdF_X2PLHNqSU-v&index=3

)」にも掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ