第6・6節 初炭手前・懐石・菓子・退席 ~喚鐘について~
古田の炭手前が始まった。
細川:「以前も言いましたが、炭手前は、水を沸かす所作で、江戸時代に入ってから、正式に行われるようになるものです。特に初炭手前は見せないでしょうね。」
古田:「通常は、最初から火がついてますからね。東陽坊長盛殿などは、一生涯、炉の火を絶やしませんでしたから、私もまだまだ精進が足りません。さて、初掃きをしますので、利休殿、細川殿に声をかけ、にじって移動してきてください。」
私:「細川殿、それでは参りましょう。」
細川:「良い、にじり方です。何度も練習した甲斐があります。」
炭がつぎ終わり、古田が中掃きを始めた。
細川が私に次礼をして、席に戻り始めた。
古田:「利休殿も、そろそろ席へ戻る頃ですが、今回は、近くで見ていてください。来週は利休殿にも火をおこしてもらいますので。香のつぎ方、灰の蒔き方、釜の置き方、覚えることは沢山あります。」
私:「たいへん過ぎて、涙が出そうです。」
炭手前が終わり、古田が懐石膳を持ってきた。
細川:「懐石膳の受け取り方は覚えていますか?」
私:「懐石膳を受け取る時は、右、左、右と膝を動かしてお辞儀。懐石膳を受け取って、亭主が立ち上がったら、お膳を置いて、左、右、左の順に下がるのでしたね。」
細川:「その通りです。」
その後も、1つ1つの所作を古田や細川が質問し、私が答えるということが続いた。
細川:「だいたい覚えておいでですね。利休殿は優秀です。」
私:「ありがとうございます。この桃山時代で生き残るため、必死に覚えています。どんどん覚えていきますよ。」
細川:「良いですね。教え甲斐があります。」
食事が終わり、箸を膳の中に落とすと、古田が現れ、中立の挨拶を始めた。
古田:「お菓子をお召し上がりの上、席を改めとうございますので、中立を。」
私:「それでは、中立させていただきますが、用意が整いましたら、お鳴りもので。」
古田:「ことによりまして。」
縁高の所作も無事終了し、退席時に掛軸を拝見し、待合へ進んだ。
細川:「銅鑼が鳴り始めたら、何をするか覚えていますか?」
私:「その辺で、しゃがんで銅鑼が鳴り終わるのを待ちます。」
細川:「銅鑼は、何回、鳴りますか?」
私:「大・小・中・中・大と5回鳴ります。」
細川:「その通りです。同じように、夜間は喚鐘を鳴らします。利休百首に
喚鐘は大と小とに中々に
大と五つの数をうつなり
というのがあります。喚鐘は、半鐘・小鐘・報鐘・けん稚とも言います。僧侶らを集合させたり、儀式の開始の合図として打ち鳴らすものです。合図として鳴らす場合は、儀式の直前または5分前で、直前の場合は前焼香という作法がつきます。前焼香の中身は省きましょう。5分前の場合はやや大きめの法要であることが多いですね。鳴らし方は、大を五回鳴らした後、小から大へ徐々に打ち鳴らし、もう一度、大を五回鳴らした後、小から大へ徐々に打ち鳴らして、最後に大を三回鳴らします。」
私:「今日は銅鑼ですよね。」
細川:「そうですね。銅鑼の場合、貴人客などのときは、五つのうち四つまで打ち、最後を残して、亭主自ら迎えに出ることもあります。これを打ち残しと言います。まあ、私たちは貴人客ではないので、打ち残しされることはありませんが、関白様などを招くときは、打ち残ししないといけないでしょうね。さて、銅鑼が鳴り始めたようですよ。」
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