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利休になった日  作者: shoundo
第6節 お点前と炭手前
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第6・2節 細川家の蔵

細川家で思わぬ茶道の練習の機会が訪れた。

私:「今日は、何をしますか?」

細川:「そうですね、細川家で練習できるのですから、風炉の濃茶点前を復習しましょう。(くら)に道具を取りに行きます。せっかくですから、一緒に蔵へ行きましょう。」

私:「素人の私が入って良いのですか?」

細川:「壊さなければ、道具に触っても良いですよ。」


二人は細川家の裏にある大きな蔵の前にいた。

屋根は三角形で二階に窓があり壁が白い、良くも悪くも、よくある形の蔵だった。

ただ、大きさが違った。私が感心していると、細川が蔵の説明を始めた。

細川:「この蔵は、長屋を改装したもので、通常の蔵より大きく作られています。ただ、だいぶ傷んできていますので、近々建て替えようかと思っています。では利休殿、中へ入りましょう。」


蔵は何部屋かに分かれていた。三つ目の部屋へ移動すると細川が茶道具を漁り始めた。

私:「中はかなり明るいですね。」

細川:「窓が多いのもそうですが、ところどころ壁が壊れているせいです。ただ屋根が無事なので、雨はしのげます。あまり道具には良い環境ではないですがね。利休殿、こちらへ来て好きな道具を選んでください。先に言っておきますが、この部屋にある道具は、割と安いものばかりです。最悪、壊しても良いので安心してください。」

私:「後から、壊した茶道具の請求書を送らないでくださいね。」

細川:「大丈夫ですよ。利休殿なら払える範囲ですから。」

私:「注意して扱います。え~どれかな。この茶碗は良さそうですね、楽茶碗ではないようですが。」

細川:「それは天目茶碗ですね。本当は高いものなのですが、割れてしまったので、私が金継ぎしました。ではそれを使いましょうか。」

私:「はい。茶杓はこれを使いたいです。先が少し曲がっていて面白い。」

細川:「良いですね。これは私がこの時代に来て間もない頃、利休殿の教えで作った茶杓です。いや懐かしい、こんな所にあったのですね。銘は正宗です。」

私:「良いのですか、そんな貴重なものを使って。」

細川:「数多くある道具をも押しかくし

無きがまねする人も愚なり。

利休百首の一つです。気にせず使ってください。次は水指を見ましょう。」


四つ目の部屋へ移動すると、右手の壁側には大きい木箱が沢山置いてあった。

反対側の壁には木箱に入っていない水指が、多数並べてあった。

細川は、木箱に入っていない水指を指差し、私に選ぶよう促した。

私:「木や焼物、金属でできたものがありますが、どれを使えば良いのですか?」

細川:「今回は、焼物を選んでください。それと木でできた丸い桶のようなものは曲水指(まげみずさし)と言います。その隣にある四角い木の水指は釣瓶と言います。金属製の物は唐金というものです。黄金の茶室で用いる真台子では唐金の茶道具を使います。」

私:「これはどうでしょう。模様が華やかで良い気がします。」

細川:「染付ですね。1300年頃の中国・景徳鎮で焼かれた磁器です。江戸時代になると伊万里焼として日本でも焼かれるようになるのですが、この時代は輸入物しかないです。この模様はよくある山水画ですね。あまり特徴はないですが良いでしょう。次は蓋置と建水です。隣の部屋へ行きましょう。持てますか利休殿。」

私:「今のところは大丈夫です。」


五つ目の部屋へ移動すると、大きな屏風が沢山置いてあった。

細川は屏風の横にある棚の前で手招きした。

細川:「利休殿こちらです。右の棚が建水、左の棚が蓋置です。蓋置はこの竹を使いましょう。利休殿は焼物の建水を選んでください。」

私:「えー、これが良さそうですね。なんとなく素朴な感じがします。」

細川:「南蛮半練(なんばんはんねら)ですね。本来は江戸時代に入ってから輸入されるものです。隠していたのが出てきたようです。せっかくですし、使いましょう。茶巾や茶筅などは用意してあるので、道具はこれで全部ですね。利休殿、少し持ちましょう。では、戻って特訓しますよ。」

私:「よろしくお願いいたします。」


部屋へ戻ると、三回続けて濃茶点前をし、細かい所作を注意された。

最後、お吟と細川玉子に、お茶を出して飲んでもらった。

お吟:「苦~い。」

玉子:「正直に言います。美味しくありません。おそらく問題はお湯の温度です。熱いうちに手早く練ることが出来ていないのでしょうね。もう少し手荒く茶筌を扱っても良いのではないでしょうか。」

細川:「利休殿は、茶碗の値段を気にしすぎているかもしれません。それと利休百首にこういう句があります。

 茶を点てば茶筅に心よくつけて

  茶碗の底へつよくあたるな

強すぎず、かといって弱すぎず。力加減が難しいですが、毎日練って、関白様のお口にあう濃茶が出せるよう、練習しましょう。」

お吟:「お父様、頑張って。」

私:「はい、頑張ります。」

お吟:「玉子様、お水を下さい。お口が苦い。」

私:「ああ、私もお吟も苦い経験ですね。」


この作品は「YouTube(

https://www.youtube.com/watch?v=XYtE8bfxAOY&list=PLH33wsaeFCZWhaiIBx24yNxr-fPINhaRS&index=60

)」にも掲載しています。

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