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利休になった日  作者: shoundo
第5節 亭主
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第5・11節 懐石 ~未来人・雀部重政について~

古田が正客(しょうきゃく)、私が次客(じきゃく)、細川が(つめ)に座り、細川玉子が懐石料理(かいせきりょうり)を運んできた。

私は、古田の動きに合わせて料理を食べ、酒を飲み、時々注意されながら懐石が進んでいった。玉子の料理は、見た目が質素(しっそ)にも関わらず、とても美味しく豪華(ごうか)な味がした。

私:「玉子殿、これらの食事は美味しいものばかりですが、どことなく豪華な感じがします。隠し味に、特別なものでも使われているのでしょうか?」

玉子:「同じことを夫にも言われました。利休殿はとても口が()えていらっしゃいますね。実は特別なことは何もしていないのです。ただ、素材が未来のものと比べると、かなり美味しいそうです。」

細川:「生のまま、人参や大根を食べてわかったのですが、野菜に甘味があり瑞々しい。それに醤油や味噌に使う大豆は、茹でただけでも美味しい。まあ、調理の腕も一流ですしね。」

古田:「これはこれは、ごちそうさまです。」

私:「いやぁ、こんな食べやすい野菜は初めてです。毎日でも食べていたいです。」

玉子:「そんなに褒めないでください。それに宗恩様もかなり料理上手だったはずですよ。」

私:「またまた、玉子殿の方が数段上ですよ。宗恩の食事をこんなに美味しいと思ったことはないですから。」

細川:「利休殿、玉が赤面しています。褒めるのはそのくらいにしていただくと助かります。」


私は無言でうなずいた。宗恩の料理をこんなに美味しく感じたことはなかった。

料理上手というのは、玉子殿のお世辞か。

宗恩の料理もこれくらい美味しければ、毎日、無理してでも家で食べるのだろうけれど。


その後、食事が一段落し、玉子が水屋へ下がると、古田がある話題を持ち出した。

古田:「ところで雀部重政(ささべしげまさ)殿の死因はわかりましたか?」

細川:「皆目、見当もつきません。侍所の知り合いが言うには、これといった外傷はなく、溺死でもないとのことでした。病死してから川に落ちたという侍所の見解が、正しく思えるほどです。」

私:「雀部重政殿?」

古田:「2日前に死亡した未来人です。溺死でないというのは、橋の上から川に落ちて助け出されるまでの目撃者が何人もいたためです。」

私:「殺された可能性があるということですか?」

細川:「歴史上、雀部重政殿は、利休殿が切腹する際に介錯するはずだった人物です。特に、利休殿が未来人となった以上、死んでもらっては困る人物でした。」

私:「どういう人物だったのですか?」

細川:「2年前の1588年9月にこちらに来た未来人・羽生友則は、フィギアスケートのオリンピック選手で、次のオリンピックにも出場予定でした。こちらに来てからは、豊臣秀次(とよとみひでつぐ)殿の家臣として活躍し、利休殿の茶道の弟子になっていました。当然、古田殿にも茶道を習っています。雀部重政殿は、一週間程前から何か視線を感じると私に手紙で訴えていたのですが、運動神経も抜群なので、一人でも大丈夫だと思い、油断していました。」

私:「私の介錯は、誰になるのでしょう?」

細川:「候補は何人かいます。古田殿もその一人ですね。ただ、最終的には関白様が決める事、どうなることやら。問題は、兄・山田一郎がどうやって雀部殿を未来人と見抜き、病死に見せかけて殺したかということです。現状だと対策すら立てられない。ああ、どうしてもっと早く、雀部殿に連絡を取らなかったのだろう。明後日、雀部殿が火葬されるまでに死体を調べられれば、何かわかるかもしれないのに。」

古田:「細川殿、少し冷静になって下さい。質問しておいてなんですが、雀部殿の死因は別に調べなくても良いはずです。それに、川から落ちたとなると、私たちが未来人であることが、雀部殿の口から洩れた可能性も少ないと思います。こちらからは動かない方が良いのではないでしょうか。」

細川:「そう、ですね。ありがとうございます、古田殿。この件は、いったん保留にしましょう。」

私:「古田殿は、良いアドバイザーになれそうですね。」

細川:「利休殿、それを言うなら助言などと言ってください。アドバイザーという英語は、この時代、まだ使えません。」

古田:「利休殿のおかげで、細川殿の調子が戻ってきましたね。」


この作品は「YouTube(

https://www.youtube.com/watch?v=RH8mM9vgpaU&list=PLH33wsaeFCZWhaiIBx24yNxr-fPINhaRS&index=55

)」にも掲載しています。

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