第5・9節 水指の蓋の扱い(割り稽古)~未来人・出雲阿国について~
引き柄杓の練習が終わると、すぐに水指の蓋の説明がはじまった。
古田:「平点前では、水指の蓋は三手で取って、三手で戻します。まずは蓋の取り方から。右手で水指の蓋のつまみを取り、左手で左横を持ち、右手で左手の上に持ち替えて、水指の左横に立てかけます。続いて蓋の閉め方。水指の横にある蓋を右手で取り、左手で右手の下を持ち、右手で蓋のつまみを持って閉めます。何度かしてみてください。」
私は、水指の蓋を何度か開け閉めした。
細川:「利休殿、手のしびれは取れましたか?」
私:「だいぶ良くなりました。」
古田:「利休殿、無理はしないでおきましょう。細川殿、少し休憩を挟みたいので、よろしければ、他の未来人の話もお願いします。そうですね、出雲阿国殿はどうでしょう。」
細川:「わかりました、未来人・エリザベート草刈は1585年9月に出雲阿国殿としてこちらの世界に来た方です。1585年10月、私が関白様から羽柴姓を賜ったお祝いに、出雲に旅行していた時のことです。鍛冶屋の横で父娘喧嘩を目撃します。娘・出雲阿国殿を詰問する父・中村三右衛門殿でした。なんでも娘が急に意味のわからないことを言いだし、何度か家出しようとするのを制していたとのこと。娘と話すうち、すぐ未来人であるとわかった私は、人払いをした鍛冶屋に一泊させてもらい、父の中村殿も同席して、現況と未来へ帰る方法を説明します。」
古田:「中村殿の方が、この状況への理解が早く、翌日から出雲阿国殿を未来へ返す為に奔走するのですよね。」
細川:「はい。一方のエリザベートは、自身のバレー公演の為にフランスから来日していたトップバレリーナで、ファンの為に東京へ戻りたい一心だったようです。興奮するとフランス語になるので、私もフランス語で説得し、一刻以上かけてようやく納得してもらいました。」
古田:「阿国殿は、無事なのでしょうか?」
細川:「無事なようです。今も蒲生殿の部下・那古野山三郎殿に監視をしてもらっています。最近の定期報告では、踊りの上手さが買われ、出雲大社の巫女に抜擢されたと聞いています。このまま順調に行けば、予定通り1603年5月に京都でかぶき踊りを披露し、1607年5月に自殺してもらえると思います。それと蒲生殿の話だと、どうも那古野殿は阿国殿に恋心を抱いているとのこと。」
古田:「史実だと二人はどうなるのですか?」
細川:「那古野殿と阿国殿は結ばれますが、1603年6月、那古野殿に先立たれます。本人たちには言わないでくださいね。」
私:「私たちの他にも、この時代で頑張っている未来人がいるのですね。なんだか勇気が湧いてきました。」
古田:「私も、彼女の話を聞くと勇気が湧いてきます。細川殿、時々で良いので、彼女の近況を教えてください。」
細川:「わかりました。」
私:「ちなみにかぶき踊りというのは、歌舞伎と何か関係があるのですか?」
細川:「歌舞伎は江戸時代、1603年5月に行われる阿国殿のかぶき踊りを元に作られた芸能です。もし阿国殿に何かあった場合、歴史が変わります。なので、先ほどお話した丹羽長秀殿と違い、監視をつけています。」
私:「山田一郎は、歴史を改変しようとしているのですか?」
細川:「どうなのでしょう。ただ、未来人であることが彼にばれた場合、過去の例から、殺される可能性は高いでしょうね。何としてもこの時代の山田一郎を見つけ、説得します。」
私:「説得できなかった場合は?」
細川が答えるより早く、古田が私に茶道の練習を促した。
古田:「利休殿、そろそろ割り稽古を再開しましょうか。では、水次の扱いを教えます。」
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