第1・4節 秀吉登場
茶室に入り、しばらくすると亭主がやってきた。
蒲生:「本日はお招きいただき、ありがとうございます。」
秀吉:「今日は氏郷が正客か、宗易、なぜ次客になった。」
細川:「本日は趣向を変え、この細川忠興めが決めさせていただきました。」
秀吉:「忠興も随分と偉くなったものだな。」
煌びやかな服を着た背の低いこの人が関白秀吉か。
そこは黄金のまぶしい茶室。
秀吉:「宗易。この茶室どう思う?」
なんて答える。良いというか、悪いというか、そもそもどんな感想を言えばいいのか。
秀吉:「どうした、何か申してみよ。」
私:「きらきらと素晴らしい茶室ですね。」
秀吉:「何を申しておる。そなたが設計したのではないか。まあ良い、始めるとしよう。」
一同、総礼する。
帛紗を捌き始める秀吉、何かぎこちない。
秀吉がこちらをちらちら見ている。
どうやら手順を忘れたようだ。
かといって、私も手順を言えるほどわかっているわけでもない。
何と言おうか逡巡していると、横から助け船が出た。
古田:「そういえば利休殿。利休殿の師・武野紹鴎殿が、かつてこのように言っていたそうですね。
本来もなきいにしへの法なれど 今ぞ極る本来の法
と。関白様の点前こそ、天下の点前ではないでしょうか。」
私:「ありがとうございます。古田殿。」
秀吉:「宗易。今日はいつもの覇気がないな。何かあったか?」
まずい、どうしよう。
蒲生:「利休殿、もしかして先日の一輪挿しの件を悩んでおられるのでは?」
私:「庭の花をすべて切って、茶室に一輪だけ花を生けた件ですか?大胆なことをしたと思います。」
秀吉:「宗易、率直に聞こう。一輪挿しの件、反省しておるな。」
この雰囲気は、肯定しかできないな。
私:「申し訳ございませんでした。」
秀吉:「正忠よ、例の水がめを持ってまいれ。
では、宗易よ、その水がめに花を生けてみせよ。
それで許そう。」
心配そうな顔の瀬田が、心配そうな顔の瀬田が、
私の前に水がたっぷり入った水がめと、紅梅の乗った花台を運んできた。
そういえば、水がめに紅梅の花びらを散らすという逸話があったはず。
花台を持って水がめの前に進み出て、紅梅の花弁を一枚ずつ水に浮かべていった。
秀吉:「くだらぬ、実にくだらぬ。今日の茶会は、これでお開きとする。」
秀吉は、怒って茶室から出て行ってしまった。
あれ、こんな顛末だったろうか。
確か、お褒めの言葉をいただけたはずだが。
瀬田に見送られ、門前まで進むと、蒲生から、安堵のため息が漏れる。
蒲生:「今日は疲れましたな。よろしければ、我が家でもう一席、いかがでしょう。」
池坊:「そうですね。どうでしょう皆さん。」
皆さんと言いつつ、明らかに私の方を見ている池坊。
少し考えていると、細川が助け船を出した。
細川:「利休殿もお疲れでしょう。幸い、私の駕籠がそこにおります。よろしければ利休殿の家まで、お送りしたいのですが。」
古田:「その方が良いでしょう。夜、坊主が街を歩くのは、物騒ですしね。」
私:「ありがとうございます。細川殿。」
全員に軽く会釈し、細川と共に、駕籠に乗る。
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