第5・4節 茶巾の扱いと茶碗の仕込み方(割り稽古)~高山茶筌について~
次に、古田は茶巾の説明をはじめた。
古田:「茶巾には、真の茶巾と草の茶巾があります。違いは茶巾の端を縫ったか縫わないかで、大きさも違います。このうち、利休殿には草の茶巾の扱いを覚えていただきます。茶巾は茶会の都度、新しいものを使います。まず、茶巾洗を使って茶巾を濡らし、茶巾を真ん中で一度ねじり、左右に広げて下三角形を二つ作ります。」
古田が茶巾を木の桶でさっと洗い、下三角形を二つ作って私にみせた。
私:「茶巾洗というのは、そこにある木の桶のことですか?」
古田:「そうです。杉の木でできた曲物で、茶巾を洗うので茶巾洗と言います。まずは、茶巾をしっかり洗うために、一度、両手で手前へ二つに折り、左右の端を合わせた所を右で持ち、袋になった部分を茶巾洗で濡らします。右手を茶巾洗の上で、左右に揺する感じで濡らしてください。最後、茶巾洗の端に、茶巾の端をひっかけて置きます。ここまでやってみましょう。」
私は、茶巾を茶巾洗で濡らし、茶巾洗の端に置いた。
古田:「では、茶巾をしぼりましょう。右手で茶巾の端を持ち、左手に反対側を載せ、右手を左手の上に重ねるようにして半分にします。このとき、茶巾の端を少し出します。右手を離し、茶巾の端を出したまま、縦に丸めていきます。最終的に、円筒の上から、兎の耳のように茶巾の端が出ます。この状態で、耳を持たずに両手の茶巾をしぼります。しぼった茶巾の両耳を取り、茶巾を左右にひろげます。」
私は、茶巾をしぼって左右に広げた。
私:「下三角形が二つできました。」
古田:「縫い目の部分、かがりと言いますが、上部と下部で逆になっています。茶巾を開きます。このとき、二通りの開き方があり、上部のかがりが内側になるようにして、右手で開く場合と、左手で開く場合が出てきます。」
私:「先生、かがりが外側にしかなりません。」
古田:「利休殿、先生というのはおやめください。本来、利休殿が師匠。誰かに聞かれたら大変です。さて、茶巾の左右を逆に持ってしまったようですね。いくつかの点前では、客前で見せる茶巾のたたみかえがありますが、利休殿は、水屋の場合のみを考えて、普通に左右を入れ替えてください。本来は、茶巾の端を持つときに注意します。」
私は、茶巾の左右をひっくり返した。
古田:「次に、しわを伸ばしながら上三分の一を向こうへ折り、さらに向こうに折って三分の一にします。右手で端を持ち、左膝頭で縦にし、左手の親指と人差し指で茶巾の中ほどを挟み、二つに折り端を揃えます。右端を下に二つに折り込み、さらに右端を下に三分の一ほど折りこみます。左手の親指を抜き、ふくだめをふくらませたまま、右手で持ちます。」
私:「ふくだめ?」
古田:「最後、左手の親指を抜いた部分が、膨らんでいると思います。その部分をふくだめと言います。福を溜めるということからそう呼びます。」
古田は茶碗、茶筌、茶杓を2つずつ持ってきて、茶巾洗の横に置いた。
古田:「次に茶碗の仕込み方です。茶碗へは、茶巾、茶筌、茶杓を仕込みます。茶巾は、ふくだめを手前にして、茶碗の中央より上に仕込みます。茶筌は、穂を茶巾に載せ結び目を上にします。茶杓は、櫂先を下向きにして茶碗の右側、茶筌とは平行にして茶碗の上に置きます。」
細川:「これは高山茶筌ですね。茶筌は、鷹山村の入道宗砌が、茶道を考案した村田珠光に依頼され、茶道にふさわしい抹茶を攪拌する道具として仕上げたものです。以降、高山と名乗り、北野大茶会には茶筌二百本を献上しています。しかしこの茶筌は良い仕事ですね。使い捨てするにはおしい。」
古田:「利休道歌に
水と湯と茶巾茶筅に箸楊枝
柄杓と心あたらしきよし
とあります。茶の湯は心配りが大切です。親しき中にも和敬を保ち、慇懃であることが必要なのです。茶筌は口にする茶に直接触れるものなので、清潔さが欠かせません。使い捨ててこそ良い仕事が引き立つのではないでしょうか。」
細川:「私は良き友を持ちました。
いかにも互いの心にかなうがよし
かないたがるは悪しし
ただ迎合するのではなく、互いに心が通じるような主張をするのは難しい。ですが、その心こそ大切なのです。」
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