第5・1節 細川ガラシャ登場 ~お吟の人生について~
予定通り、細川邸に行くと外国人風の女性が現れた。
外国人風の女性:「利休様、お久しぶりでございます。いえ、初めましてでしょうか。私は細川ガラシャと申します。ですが、夫・三斎の前では玉子とお呼びください。」
初めまして?細川の妻が、千利休と会ったことがないなどありえない。
私:「お久しぶりです玉子殿。細川殿はいらっしゃいますか?」
玉子:「夫より聞いていた通り、良い反応ですね。まずはお上がり下さい。」
いろいろ警戒しつつ細川邸に上がり、細川玉子が家の奥に下がってから、古田と細川に事情を聞いた。
私:「玉子殿は、私のことを未来人と知っているようでしたが、何かご存知ですか?」
古田:「もうお気づきとは、さすがですね。」
細川は立ち上がり、手を叩き細川玉子を呼んだ。
細川:「玉、ちょっと来なさい。」
細川玉子が全員分の飲み物を持ってきた。
玉子:「どうぞ、煎茶でございます。」
古田:「これは湯飲茶碗ですね。それに煎茶とは。」
細川:「煎茶は今から60年後、江戸時代に登場するお茶です。特別に用意させました。利休殿には、この方が飲みやすいでしょう。」
私が困惑していると、細川が説明をはじめた。
細川:「玉はこの時代の人物で、我々の味方です。私の作った装置のことをある程度は知っています。以前、未来に2名帰すことが出来たのも、玉のおかげです。」
古田:「実は、私が最初に出会った人物も玉子殿です。おかげで本当に命拾いしたと思っています。ありがたい。」
玉子:「古田様、もう何度もそのような。おやめくださいませ。照れてしまいます。」
私:「なるほど。それでは、あらためまして。初めまして細川玉子殿、千利休と申します。」
玉子:「初めまして利休様。ようこそ桃山時代へお越しくださいました。」
細川:「では、挨拶も終わったことですし、話を始めましょう。玉も座って下さい。」
細川は、いつものように長い話をはじめた。要約するとこうなる。
半月前の堺、自殺しようとした利休の娘・吟を玉子が保護した。
吟の正体は未来で10歳の子供。
未来で親に虐待を受け、自殺する気でいた。
利休と宗恩には、まだ知らせていなかったが、いつまでも秘密にできないと、
大阪から玉子と吟を呼び寄せ、京都についたのが昨日。
吟をどうするか、相談したいという。
なお、彼女が未来に帰る為に自殺する日は、来年の1月18日だとか。
古田:「未来に帰っても、このままだと問題ですね。何か対策しないといけません。」
細川:「宗恩殿にも、どのように話せば良いのか。そもそも10歳だと、この時代の歴史を勉強するのは大変です。来年まで桃山時代を生き残れるかどうか。」
玉子:「利休様にお願いです。宗恩様に、お吟様を細川邸で預かること承諾してもらいたいのです。」
私:「細川殿、宗恩に未来の事がばれないようにするには、どう言えば良いのでしょうか?」
細川は少し考え、こう切り出した。
細川:「未来人の事は伏せますが、自殺未遂の件は言いましょう。ただ、自殺の理由を夫の円乗坊宗円から逃げて来たことにすれば、千家以外で預かる方が安全だと、宗恩殿を説得できるのではないでしょうか。」
古田:「宗円殿は今どこに?」
細川:「実は、お吟殿を探しに出かけ、行方不明になっています。」
私:「では、宗円殿が現れたら、あなたは吟に嫌われたと言って、吟のことをあきらめさせましょうか?」
古田:「それは宗円殿が、かわいそうなのでは?」
細川:「いえ、案外良い案かもしれません。いろいろ辻褄も合います。史実では、お吟殿は関白様に見初められたものの、高山右近殿が忘れられず、関白様を暗殺しようとして失敗、自殺します。そこで、お吟殿は高山右近殿を追って京都に来たが、利休殿が右近殿には合わせたくないので、細川邸に入れた。とすれば良いのでは。」
私:「えっ、関白様の暗殺未遂ですか!」
細川:「はい、暗殺未遂です。そして、関白様の側室・淀の方様に暗殺を阻止されます。利休殿が切腹する遠因の一つです。玉は本物の細川三斎のことが嫌いです。切支丹になったのもその為でした。ですが、私の三男・細川忠利のある事件をきっかけに仲直りします。利休殿、宗恩殿とは家庭内別居中とか。お吟殿の話題があれば、きっと宗恩殿と仲良くなれますよ。」
私:「ある事件?」
玉子:「とりあえず利休様、お吟様の件、宗恩様によろしくお伝えください。私が責任を持って育てますので。暗殺者として。」
私:「暗殺者?それで良いのですか、細川殿。」
細川は話題をすり替えた。
細川:「では、茶道の練習をしましょう。今日は利休殿には亭主をしていただきます。時間もだいぶ使ってしまいました。急ぎ始めましょう。玉、ご苦労様でした。下がって良いですよ。」
玉子:「はい。それでは利休様、失礼いたします。」
古田:「利休殿、練習を始めますよ。」
私:「はい。頑張ります。」
なんとなく納得できなかったが、細川が良いと言うのなら、たぶん良いのだろう。
この作品は「YouTube(
https://www.youtube.com/watch?v=702UnQHJrj4&list=PLH33wsaeFCZWhaiIBx24yNxr-fPINhaRS&index=45
)」にも掲載しています。




