第4・4節 初座・席入と挨拶(正客)~松柏千年青について~
私と細川が茶席に入り、細川に指導されながら床と炉の拝見をし、席に着くと、古田が茶席の入り口で礼をし、私に話しかけてきた。
古田:「本日は寒空の中、ようこそおいで下さいました。利休殿に置かれましては、慣れない世界で大変だとは思いますが、どうぞ茶の湯を楽しむ気持ちで臨んでください。」
私:「楽しむ気持ちですか。」
古田:「茶の湯とは、ただ湯を沸かし、茶を点てて、飲むばかりなる事と知るべし。利休殿の言葉です。難しい作法を覚えるより、点てた茶を飲み、亭主の心意気を感じてください。」
私:「茶の湯とは、ただ湯を沸かし、茶を点てて、飲むばかりなる事と知るべし。」
古田と細川は、私を見ながら笑顔になり、何度か頷いた。
古田:「そうです。
茶の湯とは、ただ湯を沸かし、茶を点てて、
飲むばかりなる事と知るべし、
です。先日に続き、今日も様々な所作を勉強しますが、究極的には、おいしい茶を飲むのが目的です。今は、まだわからないことが多いと思います。ですが、茶を楽しむ気持ちを忘れなければ、必ず、利休殿は草庵の茶にたどり着くことができますよ。」
私:「なんだかできそうな気がしてきました。」
古田は細川の方を向き、簡単な挨拶をしたのち、再び私の方を向いた。
古田:「では利休殿、本日の掛軸について、私に質問してください。」
私:「本日のお床の軸について、教えてください。」
古田:「本日は、松柏千年青でございます。近年は松樹千年翠として、松の木の緑色が千年の長い歳月を経ても風雪に耐えぬいて、少しもその色を変えないという意味の祝語として使われています。ですが本来は南宋末期の僧・石田法薫が弟子へ訓戒した際の言葉です。
松柏 千年の青
時の人の意に入らず
牡丹 一日の紅
満城の公子酔う
松柏之操と言われる松や柏槇は、青という見た目の美しさに捕らわれ、万古不易の美に気づかないことが多い。一方、牡丹の花のように、刹那の美を見せられれば、世間を知らない貴公子たちは歓喜してしまう。茶道の精神は侘びです。本質を見抜き、美とは何かを考え、究極的に到達したのが草庵の茶です。その心を、この茶席で感じていただきたいと思い掛けさせていただきました。」
私:「茶聖・千利休。私はその心を理解できるのでしょうか?」
古田:「茶の湯とは、ただ湯を沸かし、茶を点てて、飲むばかりなる事と知るべし。」
私:「なんだかできそうな気がしてきました。」
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