表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
利休になった日  作者: shoundo
第2節 次客
29/150

第2・23節 茶入・茶杓・仕覆の拝見(次客)~茶入・宝尽紋について~

私は、しばらく楽茶碗・鉢開(はちひらき)を眺め、古田に茶碗を返した。古田は、茶碗を取り込み、お湯ですすいだ。

古田:「お仕舞にさせていただきます。」

細川:「亭主が水指の蓋をしたら、正客は茶入、茶杓、仕覆の拝見を乞います。」


古田が水指に蓋をした。

細川:「どうぞお茶入、お茶杓、お仕覆の拝見を。」


古田は無言で草の礼をし、少し点前を進めたのち、茶入・茶杓・仕覆を客席の方へ出した。

細川はにじって道具を取りに行き、私に説明をはじめた。

細川:「では茶入から説明しましょう。全体と口造りから、おおよその形を見ます。これは有明肩衝という唐物茶入です。数年後、いったん手放すことになりますが、そのあたりの話はまた別の機会に話すとして、この黒飴釉に白鼠色の斑文が景色となっています。他の多くの肩衝では、口造りから胴にかけ釉薬(ゆうやく)が流れたような(なだ)れというものがあります。蓋は象牙、蓋裏は金箔や銀箔がついています。抹茶に毒が入っていた場合、箔の色が変わると信じられていたためですが、実際に変色することはないでしょうね。そして底面は畳付と言います。この模様は唐物(からもの)糸切(いときり)と言って、轆轤(ろくろ)台から切り離したときにできる模様です。この唐物茶入は、(みん)からの輸入物茶入です。和物といって日本で作られた茶入もあります。和物茶入の場合、本糸切と言って糸切の目が唐物とは逆回りになります。」

私:「蓋に傷がついているようですが。」

細川:「よく気が付きましたね。これは傷ではなく、()という虫食いです。利休殿が象牙で蓋を作らせたときにできた()を、面白いとして織部殿との茶会に出し、織部殿も同様に茶会に出したことで話題になったものです。本来、茶入に蓋はありません。この時代では、茶入にいろいろな洲蓋(すぶた)を付け替えるのが流行しているようですね。」


細川は、茶入を私に見せ、拝見するよう促した。

一通り私が茶入を拝見すると、細川は仕覆の説明を始めた。

細川:「これは、紅地梅花紋錦という仕覆です。茶入には複数の仕覆が添う場合があり、この茶入にも、他に4枚の仕覆が添っています。後年、持ち主が変わるごとに仕覆が増え、最終的に11枚の仕覆になり、私の元に帰ってきます。楽しみですね。」

私:「11枚ですか。すごいですね。」

細川:「紅地梅花紋錦以外に、宝尽紋錦、伊予簾緞子、青木間道、富田金襴、菱万字地紋龍紋錦、紅地錦、細川緞子、蜀江錦、龍鳳凰紋錦、紅毛裂が添います。例えば、宝尽(たからづくし)(もん)の宝は明時代以前の元代、中国と言った方がわかりやすいですね、そこで仏教に基づき、八という数字への信仰がはじまり、八宝(はっぽう)として法螺貝(ほらがい)法輪(ほうりん)宝傘(ほうさん)宝瓶(ほうびん)白蓋(はくがい)蓮華(れんげ)金魚(きんぎょ)盤長(ばんちょう)が吉祥の証とされます。室町時代に入ってから日本に伝わり、如意宝珠(にょいほうじゅ)宝錀(ほうやく)打出小槌(うちでのこづち)金嚢(きんのう)隠蓑(かくれみの)隠笠(かくれがさ)丁字(ちょうじ)花輪違(はなわちがい)巻物(まきもの)珊瑚(さんご)分銅(ふんどう)など、縁起の良いものを何でも描くようになります。他にも、七宝(しっぽう)と言って、金・銀・瑠璃(るり)真珠(しんじゅ)瑪瑙(めのう)硨磲(しゃこ)玫瑰(まいかい)を吉祥紋として使用します。次に伊予簾緞子は、経糸(たていと)におよそ13色の色糸が、緯糸(ぬきいと)には浅葱(あさぎ)(いろ)と薄黄色で、梅花紋様と石畳宝尽紋様をひと続きの段替わりとしています。さらに両紋様の間に雷文繋ぎの細かい段文を織り上げたものです。この緞子(どんす)宝尽(たからづくし)には・・・」

古田:「細川殿、利休殿の思考が停止しています。少し休憩しましょう。」

細川:「そうですか。では、仕覆については、ここまでにしましょう。いったん休憩して、茶杓の説明をします。お水を入れてきましょう。」


それからの私は、冷たい水を飲むまでの記憶がない。

細川:「それでは、茶杓の説明をしましょう。通常は茶会の度に使い捨てですが、中には良作もあり、利休殿の師・武野紹鷗殿の頃より、筒に入れ保管するようになりました。この茶杓は、利休殿が若い頃、竹を削って作られたもので、中節の上に雪割れのある蟻腰です。銘はありませんが、共筒があります。」

古田:「共筒というのは、私がもっている真筒です。上下の面が丸く取ってあり、皮目を削った刀目が残っています。下の方に、利休殿のケラ判がありますね。さて、利休殿もお疲れのご様子、最後、拝見の会話を行って終わりとしましょう。」


私は無言でうなずくと、細川は茶道具を古田に戻した。

細川:「大切なお道具ありがとうございました。お茶入のご由緒は。」

古田:「関白様より細川殿の父君が拝領した有明肩衝でございます。」

細川:「お窯元は。」

古田:「唐物でございます。」

細川:「お仕覆のお裂地は。」

古田:「紅地梅花紋錦でございます。」

細川:「お仕立ては。」

古田:「波斯国(はしこく)よりの舶来品にてございます。」

細川:「お茶杓のお作は。」

古田:「利休殿でございます。」

細川:「ご銘は。」

古田:「本日は、船出(ふなで)と名付けさせていただきます。」

細川:「利休殿の新たな船出、確かに良き名ですな。ありがとうございました。」


古田が茶道口に下がり礼をしたので、なんとなく私も礼をした。

細川:「利休殿、今日は疲れたでしょう。明日は千家で、今日の復習をします。今回は私が一人で伺いましょう。」

私:「よろしくお願いいたします。細川殿。」


この作品は「YouTube(

https://www.youtube.com/watch?v=sUZf3o_XNkM&list=PLH33wsaeFCZWhaiIBx24yNxr-fPINhaRS&index=28

)」にも掲載しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ