第2・21節 濃茶点前・飲み方と会話(次客)~茶銘と詰について~
古田の濃茶点前がはじまった。
細川:「亭主が、建水から蓋置を出し、柄杓を置いたら、総礼します。」
私:「薄茶は飲んだことがあるのですが、濃茶は初めて飲む気がします。」
細川:「この時代、薄茶の点前はあまりしません。棗も濃茶用に使っています。ただ、利休殿は以前、薄茶を真の茶であると山上宗二に語っています。」
私:「山上宗二?」
細川:「山上宗二は利休殿の弟子で、私や古田殿の兄弟子でした。関白様の不興を買って、今は敵方の北条氏に仕えています。」
古田が濃茶を練り、細川がにじって茶碗を取り、正客の席でお茶を一啜りした。
古田:「お服加減は。」
細川:「たいへん結構でございます。」
古田:「詰がいる場合は、次礼をします。今は誰もいませんが、詰がいると仮定して、お先にと次礼をしてください。」
私:「お先に。」
古田:「では、細川殿がお茶を飲んだ後の所作をよく見ていてください。」
細川が濃茶を飲み、右袖から出した茶巾で茶碗の口を拭き、左袖に茶巾を仕舞った。
細川:「利休殿の茶巾も用意しました。これを右袖に入れてください。」
私:「ありがとうございます。」
古田:「茶碗は、正客と次客が互いに礼をして、斜めに向き合い手渡します。」
細川:「では利休殿、こちらを向いてください。私が茶碗を両手で持ちますので、上から両手で持ち上げてください。そのまま左掌に載せ、右手を添えてから正面に向き直ります。おしいただいて、二回回してください。」
私:「おしいただいて、回す。」
古田:「次客が一啜りしたら、茶銘を正客が聞きます。まずは、そこまでやってみましょう。」
私が濃茶を一啜りした。
細川:「本日のお茶は。」
古田:「無上にございます。」
細川:「お菓子は饅頭でしたが、ご菓銘は。」
古田:「紅梅と名付けました。」
細川:「床の間の花は、椿の蕾とお見受けしますが。」
古田:「さようでございます。」
細川:「花入は。」
古田:「備前焼でございます。」
古田が私の方に向き直った。
古田:「お茶というのは、茶の品質のことで、別儀、無上、揃、砕、簸屑、山茶などがあります。」
細川:「最近だと、極上というものも出ているそうです。飲んでみたいものですね。濃茶の茶葉は、玉露などと同じく若芽や若葉の時期に覆いをかぶせ、直射日光が当たらないように栽培した茶の古木の新芽を、蒸して乾燥したものを、茶臼で挽いてつくります。揉捻を行わずに乾燥させるのが、煎茶や玉露との大きな相違点です。濃茶には○○の昔という銘の茶があります。最上級の茶の初摘みとなる三月廿日の、「廿」と「日」を組み合わせ、昔と名付けたものです。あと数十年もすると○○の白という茶も出ます。」
古田:「今は○○の昔という別儀のみです。」
細川:「別儀の名は、村田珠光の弟子・筆屋が茶会を催したとき、無上の袋を茶壺から抜き出して卓上に広げ、好き葉ばかりを細箸で選び、臼で挽いて客に供したところ、その美味に驚いて客が茶の銘を尋ねたため、別儀にいたしましたと言ったことからついた名です。」
古田は細川の話に少々疲れた感じだったが、何食わぬ顔でこう言った。
古田:「細川殿の話はいつも勉強になりますね。では、お菓子の話に移りましょう。利休殿、お菓子は先ほど縁高に入っていたものの菓銘を聞きます。お菓子を自分で作った場合は、季節感を出した銘を付けます。購入したお菓子の場合は、屋号も言います。その後、床の間の花と花入を聞き、一連の問答が終わりになります。では、残りの茶を飲んでいただきます。飲み方は、三口半で飲み干し、最後は吸い切ります。」
細川:「吸い切りというのは、『すっ』と音を出して飲むことです。」
古田:「利休殿、やってみてください。」
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