第2・14節 飯器の所作と鉢の拝見(次客)~桐紋について~
飯器を持ってくると、古田と細川は問答を始めた。
古田:「おつけしましょう。」
細川:「おまかせを。」
古田:「お汁替えをさせていただきます。」
細川:「お断りいたします。」
古田:「水屋で相伴させていだきますので、御用があればお手をお鳴らしください。」
細川:「お持ちだしの上で、ご一緒に。」
古田:「本来なら、亭主はもう一度、辞退の挨拶をして退出するのですが、今回は詰の席でご一緒しますね。利休殿、飯器の中を見てください。今度はご飯がいっぱい入っていると思います。好きなだけ食べてください。」
私:「先ほども気になっていたのですが、この飯器は豪華ですね。」
細川:「これは、萩薄蒔絵飯器です。関白様の所には五七桐や、将来的に太閤桐と呼ばれる紋の飯器が多数あります。桐紋は関白様が制限されていて、他家では使用できません。ただ、利休殿にはお許しが出ていて、利休桐という紋が使えます。茶碗などにも意匠を加えて造ったものがあります。」
古田:「では、器の拝見をしましょう。いくつか見どころがありますので、少しずつ説明していきます。」
詰の席に戻った古田は、強肴の取箸を、膳の上に置き、正客へ送るよう促した。
古田:「細川殿の動きをよく見てください。強肴の鉢などは、あのように両手で持って拝見をします。」
細川:「鼠志野の鉢ですな。向付も鼠志野で全体に落ち着いた雰囲気が出ていますね。こちらの向付にも半環足がありますね。少し高めな気がしますが。」
古田:「よくお気づきで、底面の半環足は、一度、扁平にした後、紐状の粘土を曲げて、わざわざ後から足したものです。全体に大きく見えるところが良いですよね。」
細川:「この強肴の鉢、手で触った感じ丸みがありますな。轆轤で作った割には歪に感じますが、何か作り方に特徴でもあるのですか?」
古田:「一度、轆轤で丸く作った後、四隅を手で角ばらせたものです。向付と同様の作りですが、やや丸みを残して作ったため、丸く感じるのでしょうね。」
細川:「器の中の模様も良いですね、鼠色中に白く浮き出る草文。やわらかな雰囲気が出て非常に趣がある。この草文は紅葉ですかな?」
古田:「なるほど、葉の切り込みが多いので、紅葉にも見えますね。」
細川:「失礼した、今は2月、松の葉ですね。」
古田:「おみごとです。さて、利休殿も手に取ってみてください。」
細川が私の横に強肴の器を置き、手に取るよう促した。
私:「思った以上に重いですね。」
古田:「そうかもしれませんね。では利休殿、簡単に見方を説明します。まず器を置いて、全体を眺めます。次に両手で軽く傾け側面と底をみます。最後にもう一度、全体を眺め詰に渡します。また、器を拝見しているときに、感想を述べるのも良いです。手で触った時の感触や図柄など見た目、場合によっては器の謂われなどを聞くのも良いでしょうね。」
私:「謂われですか。」
古田:「この強肴の器は美濃で焼かれた志野焼で、利休殿が鼠志野向付と一緒に私に下さったものです。私が志野焼に魅かれるようになった要因でもあります。私が窯を開くとすれば、美濃を置いて他にないでしょうね。」
詰の古田が鉢を横に置き、懐紙を出した。
古田:「次に、煮物椀を懐紙で軽く清め、汚れた懐紙は左袖に入れてください。高価なものが多いので、傷がつかないよう、このような感じで丁寧に清めてください。そして、詰の私は正客の上座に盃台持っていってから、燗鍋・飯器・強肴を茶道口に置きます。」
亭主としての古田が、茶道口の燗鍋、飯器、強肴を取り込んだ。
古田:「お相伴いたしましたが、不加減で。」
細川:「まことに結構にいただきました。」
この作品は「YouTube(
https://www.youtube.com/watch?v=0KaVU3x77d8&list=PLH33wsaeFCZWhaiIBx24yNxr-fPINhaRS&index=19
)」にも掲載しています。




