第2・10節 亭主との挨拶と懐石膳(次客)~漆について~
古田は一度、水屋へ下がり、茶道口から顔を出した。
細川:「どうぞお入りを。」
古田は少し茶室に入り、茶道口前に座った。
腰には帛紗がつけてあり、扇子は持っていなかった。
古田:「ここで、正客と亭主が挨拶をし、続けて、次客以下にも挨拶します。扇子のカナメを右にして膝前に出し、真のお辞儀をして挨拶します。利休殿は適当に答えてください。」
私:「適当ですか。」
古田:「場の雰囲気を見て、正客の話をよく聞けば、きっとできますよ。その後、正客と亭主が掛軸の話をしますが、次客以下は、何も話しません。ある程度、説明が済んだら、亭主が茶道口へ下がり一礼しますので、同じように、真のお辞儀をしてください。ちょうどお昼ですね。懐石を始めましょう。」
亭主が懐石料理を運んできた。
古田:「懐石料理の載った黒漆のお盆は、脇引または湯盆と言います。将来的には、懐石膳の基本は、湯盆から折敷になります。折敷には真・行・草があり、皆、朱の角切折敷が真、黒塗りの角不切折敷や角切折敷が行、摺漆などの丸折敷や半月折敷は草になります。ただこの桃山時代は、湯盆が基本ですね。」
細川:「お盆に使用されている漆は国産が基本ですが、輸入漆で塗られたものもあります。輸入漆は粗悪だという人もいますが、暹羅国・真臘国・波斯国などで手に入る高級漆は、良質で良い味を出します。高価な国産漆と言いつつ、輸入漆を使った漆器もあるようです。」
古田:「京都には輸入漆を扱う店が何店舗かあるみたいですね。」
細川:「何より国産漆は、製造過程で良質で微細な黒粉を混入しますが、輸入漆はやや固まりにくいものの、固化被膜は黒艶が強く、黒粉を混入せず済みます。そのため、輸入漆と国産漆を混ぜることで、黒粉を使わず、良質な黒を出すこともできます。京都の輸入漆を扱う店では、混合比率を変えることで、目的に応じた比較的優良な漆器を製造しているのです。なので、輸入漆を安価な代替塗料と考えてはいけません。これには・・・」
古田が話をさえぎるように手を叩いた。
古田:「さて細川殿、そろそろ懐石膳の授受をいたしましょう。では利休殿、これから行う細川殿の膝の動きをよく見ていてください。亭主が正客前に座ったら、正客は、右膝、左膝、右膝の順に前へ進み、亭主が差し出したお膳を受け取ります。亭主が左膝、右膝、左膝の順に下がり、お辞儀をしますので、正客はお膳を持ったままお辞儀をします。亭主が立ち上がったら、お膳をヘリに掛けて置き、左膝、右膝、左膝の順に下がります。その後、お膳を丁度良い位置に移動します。さあ、やってみてください。」
古田が再びお膳を持ってきて、私の前に座った。
私:「右、左、右、お辞儀。」
古田:「今回は、亭主の私も茶室で一緒に食べます。食べ方をお教えします。少々お待ちください。」
古田が自分のお膳を持って私の隣に座り、再び説明を始めた。
古田:「今度は、私は詰の役目もしますので、利休殿は私の詰としての動きもよく見ながら、覚えられる範囲で覚えてください。では細川殿、よろしくお願いいたします。」
細川:「はい。それではいただきましょう。」
細川と古田が、左手で飯椀の蓋、右手で汁椀の蓋を同時にとり、飯椀の蓋の上に汁椀の蓋をかぶせるように重ね、お膳の右横手前に置いた。
古田:「もう一度、今度は三人一緒にこの動作をしてみましょう。それと、箸は右、左、右と三手でとり、戻す時も、右、左、右と扱います。箸は膳の左端にかけ、箸先を汚さないようにしてください。」
三人一緒に飯椀と汁椀の蓋の動作を行い、古田が立ち上がった。
古田:「では細川殿と利休殿はご飯とお汁を先に食べていてください。燗鍋を温めて持ってきます。それと利休殿、お膳の上にある向付には、箸を付けないでください。後ほど、向付に関する所作もありますので。」
私:「わかりました。それでは、お先にいただきます。」
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