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第37話 それって「最強とは」ってことだよね?

 「どうやら、お前の仲間は全員倒れたようだな。」


 クリエストの攻撃を巧みに回避しながら、ノイルが言う。


 「問題ありません。あなた1人倒してしまえば、こちらのものですから。」

「お前1人で、残りの4人は倒せると?」

「もちろん。だからこそ、私は勇者学院最強の男なのです。」


 余裕の表情のまま、クリエストは攻撃魔法を撃ち続ける。

対するノイルも、余裕の表情のままで攻撃を回避し続けた。


 「ウォーター・ソード!!」

魔滅剣ナンバーワン。」

「シューティングスター!」

魔滅剣ナンバーワン。」


 鋭い水の剣も、高速で流れ落ちる星々も、ノイルには届かない。

息を整えつつ、クリエストが言った。


 「噂には聞いていましたが、確かに不思議な剣術ですね。攻撃が、全て消されてしまいます。」

「まあな。お前のその速度なら、100年続けようが200年続けようが当たらないぞ。」

「そうですか。」


 ノイルの答えに頷くと、クリエストは改めて戦いの構えを取る。

そして叫んだ。


 「アクセラレーション!」


 見た目には、変わったように見えない。

しかし、確かにクリエストには変化があった。


 「あなたがそう言うなら、100年や200年を一瞬で超越して見せましょう。」


 クリエストの速度が圧倒的に早くなる。

先程までの3倍はあろうかというスピードだ。

これが、クリエストのオリジナル魔法「アクセラレーション」である。


 「もう避けられませんよ!ファイヤーフィスト!そして、ライトニング・ストライク!」


 ノイルへ真正面からは燃える拳、頭上からは光速の雷撃が迫る。

しかし、やはりその攻撃が当たることはなかった。


 「空離剣ナンバーフォー。」


 勢いよく飛び込んだクリエストが、ノイルの体をすり抜ける。

驚きの表情を浮かべながら急停止し、クリエストはノイルに向き直った。


 「すまないな。」


 ノイルが言った。


 「速度の問題ではなかったようだ。いくら早かろうと、お前が空間を超えてこない限りは俺に攻撃出来ない。」

「全く、ふざけた剣術ですね。」

「何せ、まともな人生は送らせてもらえなかったものでな。」

「あなたは怪物ですよ。」


 クリエストがノイルを睨みつける。


 「出来損ないの平民が、その身の丈にふさわしくない力を手に入れて貴族に歯向かう。これは、許容しておけませんね。」

「妙な理屈だな。俺を出来損ないと呼んだのも、平民としたのも、貴族が勝手にしたことだろう。」

「あなたは分かっていませんね。」


 クリエストが服を整えて言った。


 「この世界においては、貴族のなすことが絶対。そこに間違いが生じることは、決してあってはならないのです。あなたは貴族を追放された時も、こうして力を入れてからも、この世界の欠陥品です。そのあなたは、今ここで倒さなくてはいけません。」

「正気か?」

「いたって。もう、長話は必要ありません。欠陥品の排除といきましょう。」

「お前の攻撃が当たらないと、分かったばかりだろう。」


 ノイルの言葉に、クリエストが暗い笑みを浮かべた。


 「問題ありません。」


 そして、胸元から小さな笛を取り出す。

クリエストがそれを、力いっぱいに吹いた。


 「何のつもりだ?」

「驚かないでください。今私が吹いたのは、ゴールドドラゴンを呼び寄せる笛です。あと数分もすれば、巨大なゴールドドラゴンがやってきます。さすがのあなたでも、ひとたまりもないでしょう?」


 クリエストの脅しにも、ノイルの表情は変わらない。


 「どうしましたか?恐怖のあまり、顔が固まっていますよ?」


 挑発するクリエストに、ノイルは低く言った。


 「自分の力で戦えないようでは、お前は終わりだな。」

「何ですって…?」

「何が最強の男だ。ゴールドドラゴン如きの力を借りねば、お前の軽蔑する平民1人とも戦えないのか?」

「笑わせないでくださいよ。」


 クリエストの声に、怒気がこもる。


 「ゴールドドラゴン如き?あなたは出来損ないのあまり、世界の仕組みすら知らないのですか?ゴールドドラゴンは最強の魔物。そして、それを操れる私も最強なのです。」

「そうか。なら、ゴールドドラゴンを倒したら最強を超えてしまうな。」

「はっ。強がりはやめなさい。」


-グオォォォォォォ!!


 ゴールドドラゴンの咆哮が響く。


-火属性か。


 近づく魔力の色から、ノイルはファイヤーゴールドドラゴンが接近していると判断した。


 「やってきましたよ。」


 クリエストが勝ち誇ったように言う。


 「ゴールドドラゴンです!さぁ、出来損ないの欠陥品はこの世界から消えてください!」


-グオォォォォォォォォ!!


 さらに激しい咆哮と共に、ファイヤーゴールドドラゴンがその巨体を現した。

ノイルが、それに向かって剣を構える。


 「最強っていうのがどういうものか、見せてやろう。」


 そのまま、一気に距離を詰めた。


 「空滅剣ナンバースリー!」


 その速度に、クリエストが目を見開く。

しかし、すぐに落ち着きを取り戻した。


 「あなたこそ正気ですか?ゴールドドラゴンに戦いを挑むとは!」

「いたって、な。」

「何!?」


 ファイヤーゴールドドラゴンが攻撃を放つ隙もなく、ノイルはその頭上に立っていた。


 「いいか。最強っていうのは、こういうことだ。」


 ノイルが、ファイヤーゴールドドラゴンの巨大な頭に剣を突き立てる。


 「魔滅剣ナンバーワン!」


 空中に浮かぶ巨体が、一瞬にして消滅した。


 「馬鹿な…ありえません…。」


 ぶつぶつと呟くクリエストに、地面に降り立ったノイルが近づく。

その手には、鞘から抜かれた剣が握られたままだ。


 「何をする気で…」

不斬剣ナンバーファイブ。」


 ノイルが、クリエストの戦意を斬って消滅させた。

地面に崩れ落ちるクリエスト。

その体を、強引にノイルが持ち上げた。


 「さあ、」


 その顔を至近距離で覗き込んで言う。


 「この一件、色々と話を聞かせてもらおうか。誰の指示でやったかとかな。」


 クリエストはただただ、ノイルを怯えた目で見ていた。


-ノイルVSクリエスト・フォビール

 勝者:ノイル

 敗者:クリエスト・フォビール

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