第34話 それって「大逆転のツンデレ」ってことだよね?
「私の相手…あなた…?」
「ええ、私が相手よ。」
リンテとティリスが向かい合う。
ティリスは身長が低く顔も幼い。
一見して、9,10歳にも見える感じだ。
途切れ途切れの喋り方も相まって、より幼女に見える。
「あなたの魔法…聞いてる…。隕石…落とす…合ってる?」
「まぁ、大体は合ってるわ。」
実際には「落とす」ことは出来ないのだが。
「あなた地属性…魔力…高くない…。私の方が…高い…。火属性…すぐ勝てる…。」
「それはどうかしら?」
ティリスがその幼く無表情な顔を横に傾け、リンテを挑発した。
「一能…魔力は…3000無いくらい…。魔眼も…未開眼…。それで…勝てる…?」
「それ、いつのデータかしらね?」
リンテがにやりと笑う。
そして、自らの攻撃で戦いの幕を切って落とした。
「メテオライト・フォール!」
ティリスの頭上に、巨大な隕石が浮かび上がる。
隕石は、以前にも増して大きくなっていた。
「やっぱり…隕石…。大きいけど…私には…当たらない…。」
ティリスが頭上を見上げ、ゆっくりとした動作から攻撃魔法を放った。
「火星…。」
赤茶色の球体が、隕石に激しく衝突する。
隕石が砕け、そのまま消滅した。
ティリスの放った火星は、まだ空中に浮かんだままだ。
「ね…?私には…当たらない…。相殺ですら…ない…。魔力の差…歴然…。」
「さすがにやるわね…。あんた、魔力どれくらいなの?」
「魔力数値…5918…。」
-そりゃ、隕石も消されるわよね。
リンテもやや魔力は上がったものの、現在の数値は3424。
まだまだ、ティリスの魔力には遠く及ばない。
「5918か。ざっと2500くらい足りない訳ね。」
「そう…あなたは…3400…くらいなのね…。2500の差…埋まる…訳がない…。あなた…勝てない…。」
ティリスの言う通り、魔力数値にこれだけの差がある時点で勝敗は決していた。
…普通ならば。
しかしリンテには、その圧倒的な差を埋める彼女だけの魔法があった。
「レゾナンス!」
リンテが両手を広げて叫んだ。
すると、彼女の周りの空気がビリビリと振動する。
そして、その体が緑色の光に包まれた。
「何…?」
相変わらず無表情のまま、ティリスが首を傾げる。
「私のオリジナル魔法よ。」
光に包まれたまま、リンテが答えた。
緑色の光が消え、そこに立っているのは明らかに雰囲気の変わったリンテだ。
右目が紅く光り、艶のある黒髪は右半分が脱色したように白くなっている。
「その目…魔眼…。それに…オーラ…変わった…。」
突然の変貌を警戒しつつ、ティリスが聞く。
「レゾ…ナンス…?どんな…魔法…?」
「そう簡単に、教えると思う?」
オリジナルの魔法は、その開発者にとって貴重な財産だ。
その構造や発動方法を他人に教えることなど、ほとんどない。
ましてやリンテが、敵であるティリスに教えるはずがなかった。
「それも…そう…。それに…どんな魔法…使っても…魔力差…変わらない…。意味…ない…。」
「それはどうかしらね。」
リンテが改めて戦う構えを取る。
ティリスもそれに応じ、2人が睨み合った。
仕掛けたのは、リンテだ。
「メテオライト・フォール!」
再び、隕石を出現させる。
「さっきと…結果…変わらない…。火星…。」
ティリスの魔法が、隕石を破壊し消し去る。
しかしリンテはまたしても、隕石を浮かび上がらせた。
「メテオライト・フォール!」
「無駄…。火星…。」
ティリスの前に、隕石は全て打ち砕かれる。
それでも懲りずに、リンテは「メテオライト・フォール」を使い続けた。
隕石が砕かれる度に破片が飛び、砂埃が上がる。
「火星…。一体…何が…したいの…?時間…稼ぎ…?」
「その通りよ。メテオライト・フォール!」
「火星…。それ…無意味…。いつまで…続ける…?時間…経っても…魔力差…埋まらない…。むしろ…あなた…魔力…無駄使い…。」
「それが、そうでもないのよ。メテオライト・フォール!」
「火星…。強がり…いらない…。精度…落ちてる…。魔力残量…少なくなってる…。でしょ…?」
と、リンテがメテオライト・フォールの使用を止めた。
「魔力…尽きたのね…。」
「逆よ。」
砂埃が収まり、リンテの姿をはっきり捉えたティリスは、その目を疑った。
リンテの右目はより紅く輝き、その髪は全てが綺麗な白髪になっている。
「何を…したの…?」
「時間稼ぎが終わったの。ここからが、本番よ。」
そしてリンテは、一際大きな声で叫んだ。
「メテオライト・フォール!」
その声に、ティリスが頭上を見上げる。
しかし、隕石は現れない。
-引っかかった!
ティリスの精神に、一瞬の隙が出来る。
その隙を、リンテは見逃さなかった。
「グラビティ!」
重力魔法を発動。
ティリスの周りの重力だけが3倍になり、ティリスは思いっきり地面に崩れ落ちる。
「罠…かけた…。」
「そんなところね。」
リンテはただ「メテオライト・フォール」と叫んだだけで、実際には魔法を発動しなかったのだ。
そしてティリスが気を取られている隙に、重力魔法を発動。
彼女を地面に縛りつけた。
「かなり…強い…。抑え…込まれる…。」
「逃げられないわよ。」
「でも…魔力差…ある…。私の…勝ち…。」
そう言うと、ティリスは地面に抑え込まれたまま攻撃魔法を発動した。
「太陽…。」
轟々と燃える巨大な球体が、リンテに向けて放たれる。
しかし、それは1mも進まずに地面に落下し消滅した。
「なぜ…?」
「重力に引っ張られて落ちたのよ。」
「ありえない…。魔力差…絶対的…。あなたの…重力魔法…落とせるわけ…ない…。」
「いつまで、私の魔力があなたより低いと思ってるのよ。」
「でも…魔力は…。あっ…!」
ティリスがはっとして顔を上げる。
「レゾナンス…。共鳴…。まさか…!?」
「そのまさかよ。ただ、それ以上は教えられないわね。」
そう言うと、リンテは紅く輝く右の魔眼を軽くつむった。
「う…あ…。」
重力がより強くなる。
強烈な圧迫に耐えきれなくなり、ティリスは気を失った。
それを確認して、リンテが重力魔法を解除する。
「出来損ないの大逆転ね。」
ティリスに近づき放った声は、彼女の小さな体には届かなかった。
「レゾナンス」。
その意味は共鳴。
その名の通り、リンテの属性である「地」と共鳴する魔法だ。
大地と共鳴し、大地の魔力を自らのものにする。
集めた魔力を右の魔眼で増幅し、自身の魔力を段違いに高めるという魔法である。
その結果…
「大体6400ってところね。」
リンテはティリスを上回る魔力を手にし、2400の魔力差を大逆転して勝利したのだ。
リンテがレゾナンスを解除する。
そのまま、膝から地面に崩れ落ちた。
「やっぱり、本来入らない魔力を詰め込むのはきついわね…。何とか、改良しないと。そうだ、あの魔法を…」
戦いを終え、既に新たな強さへ思いをはせるリンテだった。
-リンテVSティリス・ムクトス
勝者:リンテ
敗者:ティリス・ムクトス
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