第33話 それって「全能の妹」ってことだよね?
「いくぞ。」
「いきますよ。」
2人のリーダーの声が重なる。
戦いの火ぶたが、切って落とされた。
ノイルたちそれぞれが、戦う相手に向かって駆け出す。
「いいでしょう。あなたたちがその戦い方を望むなら、受けてたちます。」
クリエストたちも、迎え撃つ姿勢を見せた。
「「「「「さて、最強を証明しますか。」」」」」
ノイルたち5人の声が重なった。
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フィアが相手にするのは、同じく攻撃職のサレイド。
短く刈られた茶髪に大きな傷跡の残る顔、そして圧倒的な体格が特徴の男だ。
「フィアといったな。なかなかいい魔法を使うそうじゃねぇか。」
向かってくるフィアに、サレイドが話しかける。
「だが、俺には勝てねぇ。最強の攻撃魔法がどういうものか、見せてやる。」
そう言うと、サレイドはフィアをしっかりと視界に捉えて攻撃魔法を発動した。
「ウォータートルネードォォ!」
サレイドの右手に、小さな水竜巻が発生する。
それを地面に投げつけると、一気に巨大な竜巻になった。
回転も加速していく。
「食らえ!」
サレイドが押し出すように右手を動かす。
手の動きと共に、竜巻がフィア目がけて突き進み出した。
竜巻の動きをしっかりと見極め、フィアが竜巻をかわす。
竜巻のスピードは超高速。
それを回避したフィアを見て、サレイドは楽しげな笑みを浮かべた。
「やるじゃねぇか。身体能力も高ぇようだな。」
「その程度の攻撃では、私に当てられませんよ。」
「そうか、ならこれはどうだ?」
サレイドが、押し出していた右手を自分の体側へ引き戻す。
すると、通り過ぎたはずの竜巻が進路を変えて戻ってきた。
背後から、勢いをましてフィアを襲う。
-避けきれませんね…。
回避不可能と判断したフィアは、竜巻目がけて魔法を放つ。
「グラウンド・ボール!」
水属性と相性の良い地属性の大量の弾丸が、竜巻に無数の穴を開ける。
竜巻の勢いはどんどん減退し、フィアの手前で消滅した。
「俺の魔法を相殺とは、ますますやるじゃねぇか。」
自慢の攻撃魔法を消されたにも関わらず、サレイドはやはり楽しそうだ。
「俺の魔力数値は5500。そして今俺は、8割くらいの力でウォータートルネードを撃った。それを相殺したから、お前は4400以上の魔力はを持っているということだ。」
そして再び、右手に竜巻を浮かべながら言う。
「4000を超える魔力とその運動神経。そりゃあ、1年のガキ共が負けても仕方はねぇ。だがな」
サレイドの右手に力がこもり、竜巻が赤く染まる。
「1年と3年、それも3年のトップとでは格が違うということを見せてやる。全力でいくぞ。」
赤い竜巻を、サレイドが地面に叩きつけた。
「ファイヤートルネードォォ!」
回転しながら燃え盛る炎が、草原の草を焼き払いながら突き進む。
サレイドの全力の魔法と言うだけあって、スピードも大きさもさっきのウォータートルネードとは段違いだ。
「どうだ!どんなに足掻いたところで、回避も相殺も出来ねぇだろ?」
サレイドが勝ち誇ったように言う、が。
「ウォーター・ボール!」
フィアが放った弾丸により、またしてもサレイドの魔法は相殺された。
「何…だと…。」
呆然とするサレイド。
「ありえねぇ…。俺の全力のファイヤートルネードだぞ…。まさかあいつの魔力が、俺より上だってのか…。」
「そうですよ。」
ぶつぶつと呟くサレイドに、フィアがはっきり言った。
「あなたの魔力数値は5500。そして私は」
少し間をとって、フィアはゆっくりと言った。
「6841です。」
「あ…?」
そう、新人戦前の時点で5400を超える魔力を手にしていたフィアだったが、その後も訓練を止めなかったのだ。
過酷に自分を追い込み続けた結果、フィアの魔力数値は6841を記録。
計測を担当したレミルスが、驚きのあまり気を失ったほどだ。
「馬鹿言うんじゃねぇ!」
「馬鹿を言っているつもりはありませんよ。さて、戦いを終わらせましょうか。」
フィアが、1歩1歩サレイドに近付いていく。
サレイドも慌てて、竜巻を浮かべた。
しかし、焦りのためか竜巻が不安定になる。
対してフィアは表情を変えず、冷静に歩みを進めていた。
「これがもしただの模擬戦なら、こんな技は使わないんですけどね。」
フィアが右手に力を込める。
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ!」
サレイドが、苦し紛れに不安定なままのファイヤートルネードを放った。
「ウォーター・ボール。」
しかし当然、フィアに相殺されてしまう。
左手でウォーター・ボールを放ったフィアの右手には、まだ力が込められたままだ。
「私はどうしても許せないことが1つだけあるんですよ。私がいくら出来損ないと罵られようが、一向に気にしませんがね。」
「お兄様を侮辱することだけは許せません!」
スピードを上げ、一気にサレイドの胸元へ飛び込む。
「オール・ボール!」
勢いそのままに、5色の鮮やかな弾丸を至近距離から放った。
まともに食らったサレイドが、大きく吹き飛ぶ。
地面に頭を強打し、そのまま気絶した。
「私も甘いですね。この状況で、手加減してしまうとは。」
フィアが本気で弾丸を放てば、サレイドの体に大穴を開けることも出来た。
しかし、フィアはそれをしなかったのだ。
-大事なのは勝つこと。
殺すことじゃない。
そう言い聞かせ、フィアは深呼吸して気持ちを落ち着かせた。
「オール・ボール」。
全ての属性の「ボール」を、1つの弾丸にまとめて放つ魔法。
全能という特別な才能を持ったフィアが、異常な訓練の末に複数の属性を同時に使えるようになり編み出した、フィアだけの魔法。
魔力数値に絶対的な差がある上に、魔法のレベルが違うのだ。
サレイドが敵うはずもなかった。
「出来損ないに負けた気分はいかがでしょう?」
伸びているサレイドに近付き、フィアが言う。
気絶しているサレイドは、何も答えられなかった。
-フィアVSサレイド・エルン
勝者:フィア
敗者:サレイド・エルン
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