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第31話 それって「目指すは魔王城」ってことだよね?

 「それでは、行ってくる。」


 レミルスに挨拶を告げ、ノイルたちは学院を出た。

学院生のうちにクエスト依頼を受けるだけで異例だというのに、ノイルたちは早くも2度目である。

さすがに学院内でも噂が広がったようで、歩き出すノイルたちにいくつもの視線が送られている。

他の学院生も見に来ているのだ。

もちろん、応援するような視線はない。

「失敗して2度と帰ってくるな」という意地の悪い視線である。


 「ほら、あなたたちは授業です!教室に戻りなさい!」


 レミルスが、影から見ていた生徒たちに呼びかけた。

その声に、生徒たちはしぶしぶ校舎へ入っていく。


 「頑張ってくるのですわよ〜!」


 大声が響いた。

声の主は、ナタリアだ。


 「ナタリア様!?」

「あんな奴らを応援するなど、どういうおつもりですか!?」


 外野のうるさい声を気にせず、ナタリアが手を振る。

ノイルたちも、手を振って返した。


 「本当に、いい人よね。」


 リンテの言葉に、歩きながらみんなが頷く。

ノイルたちの姿が見えなくなったところで、あーだこーだ言う生徒たちは気にも留めずにナタリアは校舎へ戻った。


 「前回と同じルートでいいのかな?」


 ロスタが聞くと、ノイルは首を横に振った。


 「いや、今回はクエストに多少の時間をかけていいことになっている。その時間があれば、魔王城に行って帰ってくるには十分だ。早速、ラピリアを目指すぞ。」


 「ラピリア」という単語に、一瞬フィアの顔がひきつる。

しかし、すぐに気合いの入った顔になると言った。


 「分かりました!戦う用意は出来ています!」


 しかし、そんなフィアにノイルはあっさりと返す。


 「何を言う?ラピリアまでは、戦闘は不要だ。」

「え?でも、魔物がたくさん…」

空離剣ナンバーフォーを使ったまま進む。魔物がいくら攻撃してこようが、空間が違うんだ。戦う必要はない。」

「なるほど。さすがノイル君だぞっ。」

「魔王城を無血開城って訳ね?」

「そういうことだ。」


 笑顔のまま5人は北を目指す。

その姿を、影から見つめる数人の人影があった。


 「北を目指していますね。」


 1つの人影が言う。

話しかけられた影は、しばらく経ってから返事をした。


 「奴らの目的地はカンクのはず。何が目的かは知らないが、予定変更だ。奴らの進行方向が変わったことを、ゼリトリフ様に伝えろ。」

「かしこまりました。」


 人影が1人、走り去っていく。

しばらくして、男を2人連れてきた。

ゼリトリフとゴイルだ。


 「奴らの目的地が変わったというのは本当か?」

「はい。北へ進んでいるようです。」


 ゼリトリフが怪訝そうな顔をする。


 「ラピリアにでも行く気でしょうか?馬鹿な奴らですね。死にに行くようなものです。」


 ゴイルが嘲笑気味に言った。

その言葉に頷いてから、ゼリトリフは影たちに言った。


 「ラピリアに入られてはまずい。奴らは“我々”貴族の手で潰さねばな。上手くタイミングを見て、始末してこい。」


 影が一斉に頭を下げる。

そして、ノイルたちを追って静かに走り出した。


---------------------------

 半日ほど歩き、ノイルたちは魔物の領地の外れにある人気のない草原にやってきていた。

ラピリアまで、あと数時間は歩く必要がある。

もちろん、空離剣ナンバーフォーは使ったままだ。


 「平和だね〜。」

「そうですね〜。」

「平和よね〜。」

「平和なんだぞ〜。」


 口調と裏腹にフィアたち4人の顔が死んでいるのは、襲ってきた魔物たちが体の中をすり抜けていくという気持ちの悪い体験を繰り返しているからである。

ノイルただ1人だけは、何ら気に留めていないのだが。


 「ここらで、昼飯にするか。」


 そう言うと、ノイルは草原に腰を下ろした。

どっと溢れる疲れをあらわにしながら、4人も腰を下ろす。

昼ご飯には、フィアが全員分のサンドイッチを作ってきていた。


 「はい、これみなさんの分です。」


 フィアが、1人1人に小分けにしたサンドイッチを手渡す。

ノイルに渡す時だけ、耳元へ小声でささやいた。


 「お兄様と私のにだけ、特別なお肉を使ってるんですよ。」

「聞こえてるわよ、フィア。」


 ノイルの顔に近づいてつい興奮してしまったフィアの声は、ばっちりとリンテたちに聞かれていた。


 「ま、いいけどね。」


 そう言って、リンテがサンドイッチにかぶりつく。

と、そのサンドイッチをウォータードラゴンフライという小型の魔物がすり抜けていった。

その名の通り、トンボのような姿をした魔物だ。


 「ちょっと!今、サンドイッチに魔物が付いたんだけど!?」


 悲鳴を上げるリンテ。


 「安心しろ。空間は斬り離されている。魔物は一切触れていないから大丈夫だ。」


 冷静…というか感覚が麻痺しているノイル。


 「そうですよ。大丈夫です、リンテさん。」


 お兄様の言うことなら基本的に同意するフィア。


 「美味しいね〜。」

「うん、美味しいんだぞっ。」


 我関せずという感じのロスタとガイス。


 「はぁ…」


 ため息をついたリンテは、仕方なくサンドイッチをかじった。

…魔物の通っていないところだけ。



 「さてさて。」


 早々と食事を終えたノイルが、4人に聞く。


 「どうだ?ラピリアに入る前に、軽く準備運動でもしておくか?」

「いいへふぉ、ふぁひふぉすふふぉ?」

「飲み込んでから喋れ、リンテ。」


 リンテは水でサンドイッチを流し込むと、もう一度言った。


 「いいけど、何をするの?」

「軽い戦闘だ。」

「でもお兄様、戦う必要はないって…。」

「そのつもりだったんだがな。」


 そう言うと、ノイルは地下に向かって呼びかけた。


 「おい、出てこい。相手してやるぞ。」

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