第27話 それって「エルフの金髪」ってことだよね?
「それでは、各自が調べたことを照らし合わせていこう。」
ノイルたちの休暇最終日。
それぞれが圧倒的な集中力で全ての本を読破し、必要な点をノートにまとめ終えた。
この辺り、ノイルに影響されて4人の精神力も異常になってきているといえる。
「それじゃあ、まずは私からね。」
最初に成果を報告するのは、勇者学院初期の歴史を調べたリンテだ。
「勇者学院の設立理由や基本的な制度に関しては、変な点は見つからなかったわ。どちらかといえば、歴代の学院長ね。」
そう言って、リンテは自分のノートを広げた。
丁寧な字で、初代から5代目まで150年間の学院長がまとめられている。
「初代学院長は、勇者からの依頼を受けて30歳で就任しているわ。そこから30年間、つまり60歳まで学院長を務めている。この人以降の学院長は、みんな彼の子孫ね。そして彼は、60歳の時に突然立場を退いているの。」
そしてリンテは、ノートに記された2代目学院長のデータを指さす。
「それで次の日から急にやってきたのが、その2代目。初代の息子ということになってるわ。でも、妙なのはここからなのよ。」
リンテが、2代目から5代目までのノートを続けて指でなぞる。
「全員、60歳で突然退任して次の学院長がやってきているの。やってくる人もみんな必ず30歳。それも全員、まるで若返ったかのように初代学院長の若い頃にそっくりなのよね。そして同じように歳を取ってやめていく。さすがに、偶然とは言えないわ。」
頷いて聞いていたフィアも、自分のノートを広げた。
「私が担当した範囲でも、同じことが起きています。リンテさんの言った通り、全員か30歳で就任して60歳で退任していますね。」
「僕のところもそうだったよ。」
「僕のもだぞっ。」
どうやら、500年間にわたって学院長は奇妙な方法で交代し続けているようだ。
「それで、退任した学院長はどうなっている?」
ノイルの問いに、リンテは両手を広げた。
「それは資料が無かったわ。ただ、退任した学院長が表舞台に立ったことは1度もないわね。」
ガイスがノイルに質問する。
「1週間前にノイル君か言っていた『器』という話が本当なら、学院長は60歳で新たな器に乗り換えているということになるぞっ?」
「そうだな。」
これまでの話から、ノイルは自分の仮説が正しいことを確信していた。
言葉にして考えをまとめつつ、4人に解説していく。
「おそらく、学院長の中身はその初代の男から変わっていない。使っている器も、初代の体だろうな。だから、同じように歳を取っていくのだろう。」
「でも、人間の体はそんな長い間もたないよ?それに体が若返るなんて、どんな治癒魔法を使っても無理だよね?」
ロスタの言うことはもっともだ。
しかし体の若返りに人間以外の生物が関わっているとしたら、話は変わってくる。
「俺はこの学院長の件に、エルフが関わっていると思っている。資料が少なく、詳細な調査は出来なかったがな。」
「エルフ?」
フィアが首を傾げる。
「エルフって、絵本とかによく出てくるあのエルフですか?」
「そうだ。エルフに関する話の中に、種族としてとても長命だというものがある。彼らの長寿の秘訣が、学院長の一件に関わっている可能性もあるということだ。あくまで、推測の域を出ないがな。」
「それに」と、ノイルは例の金髪を取り出した。
「カンクで拾ったものだ。あの場所に、間違いなく俺たち以外の第三者がいた。エルフは金髪が特徴だからな。これも1つの手掛かりかもしれない。」
「でも、金髪ならナタリアちゃんも金髪なんだぞっ?」
「確かにな。だが、俺がこの金髪をエルフだと思った理由は他にもある。」
そして、ノイルは自分のノートを広げた。
「魔王討伐にエルフが同行していた記録がある。それも、かなり戦力になっていたようだ。つまり、エルフは勇者や魔王と肩を並べて戦える魔力を持っていたということだ。だとしたら、エルフに魔物が操れても不思議ではない。」
様々な方向に飛んだ話を、最後にノイルはまとめた。
「要は、ゴールドドラゴンはエルフに操られていたかもしれないということだ。そして、そのゴールドドラゴンの存在を学院長は知っていた。つまり、学院長とエルフには何かしらの接点がある。その接点が、学院長の謎の長寿の秘訣という訳だ。」
「確かに、筋は通っているわね。」
リンテが納得する。
ロスタとフィアも頷いた。
ただ、ガイスだけはよく分からないという顔をしている。
「どういうことなんだぞっ?」
ノイルは、あの金髪を持ち上げて目の前にかざしながら答えた。
「簡単に言えば、今回の謎を解く鍵はエルフということだ。」
ノイルが髪の毛をしまったところで、フィアがはっとしたように顔を上げた。
「お兄様、先程の金髪をもう一度見せていただけませんか?」
「ああ、いいぞ。」
ノイルから金髪を受け取り、フィアは自らの手で暗闇を作る。
ノイルがやった時と同じように、金髪は光り輝いた。
「おお、フィアもエルフの髪が暗闇で光ることを知っていたのか。」
ノイルが感心して言う。
フィアは頷くと、頭を抱えて何かを思い出そうとし始めた。
「どうしたの?フィアちゃん。」
ロスタが聞く。
尚も目を瞑って考えいたフィアが、ぱっとその目を開いた。
「思い出した!」
「何を?」
「私、これ見たことあります!」
そう言って、金髪をつまみ上げる。
そして言った。
「カミーラ家のお父様の書斎に、これと同じく暗闇で光る金髪がありました!ひょっとすると、それもエルフのものなのかも!」
-カミーラ家か。
久しぶりに聞いたな。
それにしても、面白い物を持っているではないか。
ノイルは、そんな金髪の存在など知らなかった。
しかし、少しでも手掛かりになる物はぜひ手に入れたい。
「よし、それを手に入れるぞ。」
ノイルは椅子から立ち上がった。
「お兄様それは無理ですよ!私たちは、カミーラ家を出た身ですよ?」
フィアが慌てて言う。
するとノイルは、にやりと笑って言った。
「俺たちが取ってくるのではない。向こうに、持ってこさせるのだ。」
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