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第26話 それって「図書館での調査」ってことだよね?

 「はぁ…こんな量、1週間では無理よ…。」


 ノイルが積み上げた本の山を見て、リンテが愚痴をこぼした。

ぱっと見150冊はあるだろう。


 「この本を1週間で片付ける。これがリンテの担当だ。よろしくな。」


 そう言って立ち去ろうとするノイルを、慌ててリンテが引き留めた。


 「ちょ、この量を私1人でやるの?」

「そうだ。」


 そして、ノイルは端のテーブルを指さす。

フィアがせっせと本を読んでは、気になったところをノートにまとめていた。


 「フィアはもう始めてるぞ。それに、フィアのノルマは240冊だ。」

「そりゃ、フィアはあんたの言うことなら何でもやるわよ…。」


 ため息をつきつつ、リンテも1番上の本を手に取る。

タイトルは「勇者学院録1」。

勇者学院500年の歴史をまとめた本で、1年につき1冊の計499冊ある。

今年の分は、まだ発行されていない。

リンテの担当は、1年目から150年目までだ。

151年目から400年目までを、フィアが調べている。


 「分かったわよ。気になったことがあれば、メモしとけばいいのね?」

「ああ、頼んだぞ。」


 リンテはまた1つ大きなため息をついて、本を読み始めた。


 既に、ロスタとガイスもそれぞれの担当に取り掛かっている。

ロスタの担当は、魔物の生態系に関してまとめられた本と、401年目から450年目までの歴史。

ガイスの担当は、魔物の住む4つの森の地理的な条件が記述された本と、451年目から499年目までの歴史だ。


-さて、俺も取り掛かるか。


 ノイルの担当は、500年前に勇者と魔王の戦いが行われた頃の歴史だ。

関係する資料は厳選して300冊といったところ。

ノイルはひとまず、1番簡単に戦いのことがまとめられた本を読み始めた。

書かれたのは約100年程前となっている。


 序盤の内容は当時の時代背景だ。

共に魔力を持つ人間と魔人と呼ばれる種族が、干渉することなく暮らしていたこと。

さらにエルフと呼ばれるまた別の種族も存在し、こちらは人間と良好な関係を築いていたことなどが記されている。

エルフにも、かなり高い魔力を持つ者がいたようだ。


 中盤では、魔王と勇者それぞれの生い立ちが説明されている。

魔人に生まれた高い魔力と過激な思想を有する少年が、その力でのし上がって魔人の王である魔王になった。

対して、人間側に高い魔力を持って生まれた少年が勇者レヴィアースだ。

幼い頃から魔法に剣術にと圧倒的な才能を発揮し、その実力ゆえに高い評価を受けたと書かれている。

さらに、勇者レヴィアースは貴族の生まれであると強調されていた。


-全く、100年前から貴族というやつは変わらんな。


 ノイルは苦笑しながら、続きを読み進めた。


 終盤に入り、いよいよ勇者と魔王の戦いが描かれる。

事の発端は、魔王が利権のためにエルフを攻撃したことらしい。

人間居住地にやってきていた一部を除いて、エルフは全滅させられた。

良好な関係にあったエルフが滅ぼされたことで、明日は我が身と人間は警戒を強める。

そして、魔王に対抗するための選抜部隊を結成。

そのリーダーとなったのが、勇者レヴィアースという訳だ。


 魔物を生み出し戦う魔王に対して、勇者レヴィアースはその巧みな剣術と高い魔力で応戦する。

2人の魔力は拮抗しており、なかなか決着がつかなかった。

そんな中で、勇者レヴィアースはわずかに生き残ったエルフの力を借りて魔王城まで辿り着く。

そして、最後は魔王との一騎打ちとなり勝利して世界を救ったということが書かれていた。


 勇者を称えるために多少の脚色はされているかもしれないが、大筋の話はこれで間違いないだろう。


-こうしてみると、エルフの存在感がかなり強いな。

 エルフといえば、おとぎ話にはよく出てくるものの現在は完全に滅んでいるはず。

 しかし、魔王攻略に力を貸せるほどの魔力を持つ種族が、魔王亡き後に簡単に滅ぶとは思えない。


 何かエルフにも謎があると考えたノイルは、山の中からエルフ関連の本を探す。

しかし、子供向けのファンタジーな本はあるものの信用出来る詳細な書物はなかった。

仕方なく、ノイルは子供向けの本をめくり始める。

ふと、ノイルはあることに気付いた。


 「どの挿絵も、金髪だな。」


 本の挿絵の中では、どのエルフも金髪に若々しい見た目で描かれている。

ちょうど今読んでいる絵本では、「その金髪は暗闇でも光り輝く。」と記されていた。

ノイルは、カンクで拾った金髪を取り出す。

試しに本の影で暗闇を作ってみると、その金髪がわずかに光り輝いた。


-ひょっとすると、あそこで見かけた人影はエルフのものか?

 高い魔力を持つものなら、どこかで生き延びていてもおかしくない。



 多くの物語の中でも、エルフは長寿の生物として描かれている。

ノイルの考えは、やや現実味を帯びていた。


 しかし、詳細な資料がない以上は調べようがない。

カンクにもう一度行くという手もあるが、ひとまずはこの本の山を片付ける方が先だとノイルは判断した。

エルフについては、また新たに機会を作って調べるつもりなのだ。


-みんな、よくやってくれているな。


 4人の様子に満足し、ノイルはまた別の本に取り掛かった。

読んでいただいてありがとうございます!!


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