第25話 それって「図書館と暗闇」ってことだよね?
「あれはどういうことなの?」
新たな学院長と軽く言葉を交わし、そのまま昼休みは終了した。
そして放課後、ノイルたちは図書館にやってきている。
周りには他の生徒もいて、ときおりノイルたちに視線が送られていた。
「ノイル君が言った通りに、新しい学院長は来たけど…。学院長が斬られたのに、何事も無かったように新しい人が来るなんておかしいよね?」
ロスタの言葉に、ノイルを除くメンバーも同意する。
「お兄様、どういうことか教えていただけますか?」
ノイルは4人に顔を近づけるように言い、小さな声で話し始めた。
「大きな声では言えないことだがな。あの年老いたフレストは、ゴールドドラゴンがカンクにいることも知っていた。本人は否定したが、奴がゴールドドラゴンをカンクに仕向けた可能性もある。」
「可能性」とは言ったものの、ほぼ100%黒幕はフレストで間違いないだろうとノイルは確信していた。
「学院長が魔物を?確かに、意地の悪い奴ではあったけどそんなことが出来るの?」
「普通の人間には無理だな。」
そう言った後、ノイルはより声を潜めてささやいた。
「だが、フレストは人間ではない可能性がある。」
ノイルの言葉に、4人とも眉をひそめた。
ノイルは、ささやき声のまま続ける。
「奴からは、人間とは思えない禍々しい魔力を感じた。どちらかというと、魔物に近い魔力だな。感情が揺らいだ時の魔力の乱れ方も、魔物が怒った時のそれとよく似ていた。詳しいことはまだ調べなければ分からないが、奴が人間ではない可能性はかなり高い。」
ふと、ガイスが疑問を呈した。
「でも、ノイル君が学院長を斬った時には断罪剣を使ってたぞっ?それで体が消滅したなら、やっぱり人間だったんじゃないかと思えるんだぞっ?」
ノイルは、「いい目の付け所だ」と笑った。
「器はな、人間だった。だが、中身は違う。言ってみれば、魔物が人間の体を乗っ取っていたという感じだな。だからこそ、今日新たな器で現れた。」
「新たな器…?」
「何だ、気付いていなかったのか。あの若い男の中身は、昨日までの老人フレストと同じだぞ。」
「「「「…え?」」」」
4人の声が重なった。
全員、ぽかんとした顔をしている。
他の生徒がいなくなったことを確認し、ノイルが近づけていた顔を離して言った。
「魔力の波長が完全に一致した。間違いない。若返ってはいるが、中身はフレストだ。」
「でもお兄様、彼は昨日のフレストとは態度がまるで別人でしたよ?」
「誤魔化せていると思っているのか、あるいは遊んでいるのだろう。お前たちがフレストだと分かっていないことに気付いて、からかっていたつもりなのかもな。」
「奴の心情はともかく」と、ノイルは話を進めた。
「俺たちは、もっと調査する必要がある。奴の正体を探るためにもな。という訳で、これから1週間はこの図書館の本を色々調べるぞ。」
「具体的には何を調べるの?」
「そうだな。まずは、勇者学院の歴史を調べたい。それから、500年前のことも一応調べておくべきだな。」
魔物を操れるとすれば、魔王かそれに匹敵する魔力を持つ者だけだ。
魔王の生きていた、そして勇者に倒された500年前のことを調べれば何か掴める。
ノイルは、そう思ったのである。
「新人戦からのクエストと、続けて大きなイベントがあったことを理由に1週間の休みを貰った。レミルスから許可は出ている。だから、明日は朝からここに来て調査を始めるぞ。」
「休みって私たちの分も?」
ノイルは、何を今更という表情で答えた。
「当たり前だろう。いくら俺でも、1週間でこの量の本は調べられないからな。」
図書館には、約50000を超える書物がある。
ノイルの調べたい歴史関連の書物だけでも、ざっと8000冊はあるだろう。
「明日からは、活字で脳が破裂しそうね。」
リンテの言葉に、みんなが笑った。
---------------------------
暗闇の中。
ここは、誰も知らず誰も寄り付かない封印の場所。
その漆黒の中で、2つの影が会話していた。
「とうとう、現れたのね。」
「はい、アルルス様。この目で見ましたから間違いありません。」
アルルスと呼ばれた影が、ロウソクに火を灯す。
その火に照らされて、2人の女の横顔が浮かび上がった。
2人とも綺麗な金髪を持ち、見た目20代くらいの若々しさだ。
「アイーラ、その男の名前は?」
アイーラというその女は、よく見ればノイルがカンクでその気配を感じた女である。
ノイルが拾った金髪は、彼女のものだ。
「ノイル、というようです。その剣術はまさしくあの“女”そっくりでした。もしやすると、彼女が指導したのかもしれません。彼が、彼女の言っていた“最後の勇者”なのかも。」
「そうか。」
アルルスは天を仰ぎ、懐かしむように言った。
「懐かしいな。あの“女”の剣術は今でも鮮明に覚えている。あれから500年。そりゃ、私らも歳を取るか。」
アルルスの言葉は、まるで彼女とアイーラが500年前から生き続けているかのようだ。
「そうですね」とアイーラが頷く。
ただ、すぐに緊張した顔になって言った。
「しかし“最後の勇者”が現れたということは、それだけ目覚めが近いということです。ゴールドドラゴンがカンクに現れたこともその証拠。そして何より、今私たちがこうしていることがその証拠です。」
アルルスも、神妙な面持ちになって言った。
「もって2,3年というところか。それ以上過ぎれば、“魔王”が目覚めてしまう。」
アルルスは確かに、「魔王」と言った。
500年前に最強の男である勇者が倒した魔王が、目覚めると言ったのだ。
「そうなれば、あの“女”の手を借りなければならなくなりますね。」
アイーラの言葉に、アルルスは首を横に振った。
「それでは解決にならない。何としても、そのノイルという男が成長しなくては。今回は、あの“女”では駄目なのだ。あの剣士、“女勇者レヴィアース”ではな。」
読んでいただいてありがとうございます!!
広告の下にスクロールしていただいて「★★★★★の評価」と「ブックマークへの登録」をよろしくお願いします!
特に「☆☆☆☆☆」が「★★★★★」になるとすごく嬉しいです!!
どうかどうかよろしくお願いします!!




