第24話 それって「学院長の謎」ってことだよね?
翌々日、クエストを達成して院長室に報告にやってきたノイルを、フレストは驚いた目で見た。
しかし、すぐに笑いを浮かべて言う。
「そうかそうか。さすがに、ブロンズドラゴンはきつかったかのぅ。逃げ帰ってきたのじゃな?」
「いや、確かに倒してきたぞ。」
フレストは、尚も余裕の笑みを浮かべている。
ノイルの言葉を信じていないのだ。
「そんな訳があるか。なぜならあそこには…」
そこまで言って、フレストが慌てて口を塞いだ。
その様子を見て、ノイルはフレストがライトゴールドドラゴンの存在を知っていたことを確信する。
「あそこには何だ?続きを言ってみろ。」
ノイルは鋭い目をして問い詰めた。
フレストがしどろもどろになって答える。
「あ、あそこにはブロンズドラゴンが…」
「だから、それは倒したと言っただろう。お前が言おうとしたのは、もっと別の魔物の名前だ。」
フレストの魔力が大きく乱れる。
明らかに動揺しているのが、ノイルには手に取るように分かった。
しかし、それでもフレストは口を割らない。
「し、知らぬぞ。ワシが依頼したのは、ブロンズドラゴンの討伐。それだけじゃ。」
これ以上問い詰めても無駄だと判断したノイルは、椅子に座って構えているフレストに顔を近づけて言った。
「そうか。お前がそういうのなら、証拠を見せてやろう。訓練用の森に来い。」
「証拠じゃと?くだらぬ。そんな物があるのなら、今ここで見せてみろ。」
フレストの強がりに、ノイルは剣を抜いて答える。
「いいのだな?ここでアレを出せば、この建物は崩壊するぞ?」
「何?」
「俺が持っている証拠はな、ゴールドドラゴンだ。それも、化け物クラスの大きさのな。」
「ゴールドドラゴン」という単語に、フレストの顔色がさっと変わる。
そして、その重い腰を上げた。
「いいじゃろう。森に行ってやる。」
その言葉を聞いて、ノイルは一時的に剣を納めた。
訓練用の森でノイルは他の4人と、フレストは例の背の高い男と合流した。
「さぁ、その証拠とやらを見せてみるのじゃ。」
「いいだろう。」
フレストの言葉に頷くと、ノイルは剣を振った。
すると、何も無かった空間に突如としてライトゴールドドラゴンの巨体が現れる。
24個の弾丸の跡があることからして、一昨日ノイルが倒した個体に間違いない。
「馬鹿な…」
全員があっけに取られた。
フィアがノイルに戸惑った様子で聞く。
「お兄様、このドラゴンがどうしてここに…?」
「何、簡単なことだ。」
剣をしまったノイルが答えた。
「空離剣でこいつの空間を斬り離し、目立たないようにしてから持ってきた。」
そう、ノイルが戦いの後にライトゴールドドラゴンを消したのは魔滅剣ではない。
空離剣だったのだ。
「どうだ、フレスト。」
ノイルがフレストの方へ向き直って言う。
「お前は、この魔物の存在を知っていた。その上で、厄介払いのために俺たちをクエストに向かわせた。そうだな?」
「し、知らぬ。」
明らかに動揺しながら、それでもフレストは否定した。
尚も、ノイルは質問を続ける。
「カンクにゴールドドラゴンが現れる訳がない。こいつを操ったのは、お前か?」
「な、何も知らぬと言っているだろう!」
そしてフレストは、一目散に逃げ出した。
ノイルが再び剣を抜き、空滅剣で距離を詰めてフレストを捕らえる。
その首筋に刃を当て、ノイルは冷たい目で言った。
「言え。正直に話せ。俺たちを危険に晒したのは、お前だな?」
「知らぬわ!」
-命の危機に面しても尚、否定するか。
やはりこいつは…。
ノイルの頭の中に1つの仮定が浮かぶ。
そしてその仮定が筋の通った事実であることを、真眼でフレストを見たノイルは確信した。
ノイルは剣を振り抜き、フレストの首をはねる。
フレストの体が消滅した。
「お、お、お兄様!?」
「ちょ、あんた何やってんのよ!?」
「ノイル君、さすがにまずいよ…。」
「やりすぎなんだぞっ!」
4人が慌て始める。
それを静止し、ノイルは言った。
「慌てるな。俺の仮定が正しければ、明日には新たな学院長が来る。フレストはまだ、死んでいないはずだ。」
「どうしてそんなことが分かるの?」
ロスタの問いに、ノイルは「明日になれば分かる。」とだけ答えた。
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その明日になった。
「本当に信じられないわよ。いくら感じ悪いからって、首を斬るなんて。」
「そうグズグズ言うな。昼休みになれば、きちんと説明する。」
リンテに言うと、ノイルはレミルスに近づいて言った。
「すまないが、俺たち5人に明日から1週間程度の休みをくれないだろうか?何せ、新人戦から直ぐにクエストと忙しかったからな。メンバーの疲れも大きい。」
レミルスは少し考えた後、頷いて許可を出した。
「いいわよ。あなたの言うことももっともね。ゆっくり、休んできなさい。」
レミルスは、ナタリアと並ぶ数少ないノイルたちの理解者だ。
決して、貴族でないノイルたちを見下したりはしない。
「ありがとう。」
礼を言うと、ノイルは教室を出ていった。
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昼休みになり、ノイルたちは院長室の前にやってきた。
「本当に、大丈夫なんでしょうね?」
不安がるリンテに頷いて、ノイルは扉を開ける。
「失礼するぞ。」
「ほう、落ちこぼれたちが来たか。」
室内にいたのはフレストと瓜二つの、しかし彼よりもはるかに若い男だった。
「誰…?」
戸惑う4人に、ノイルが言う。
「こいつが、新たな学院長だ。」
その言葉に、若い男も頷いた。
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