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第23話 それって「7つ目の技」ってことだよね?

 「な、何なのよこの声!?」

「うわ!耳が壊れそう!」


 鼓膜を震わす咆哮に、リンテとロスタが悲鳴をあげた。

ガイスとフィアもカタカタと震えている。


 「ゴールドドラゴンだ。」


 ノイルが言うと、4人とも「ひっ!」と変な声を出した。


 「な、な、な、何でゴールドドラゴンがカンクにいるんだぞっ!?」


 ガイスの驚きはもっともだ。

ここは、勇者隊なら上位層でなくても攻略できる森「カンク」。

ゴールドドラゴンなどという最強種の魔物がいるはずがない。


-学院長が仕組んだ罠か?

 いや、魔物を操るなんてことが出来るはずがない。

 となると、ただ迷子になってカンクまでやってきてしまったと考えるのが妥当か。


 魔物を操るには、それを生み出した魔王を超える魔力を有さねばならない。

一説によれば、魔王の魔力は100000を超えていたと言われている。

そんな魔力を有した人間は、これまでに魔王を倒した勇者・レヴィアース以外いないはずだ。


 「おそらくは、間抜けなゴールドドラゴンが迷子になったのだろうな。」

「そんなことがありえるんですか、お兄様?」

「分からん。ただ、俺たちにゴールドドラゴンが接近しているのは事実。叩くぞ。」


 リンテが「は?」という顔をして言う。


 「何言ってんのよ!?逃げるわよ!」


 そして駆け出そうとするが、その首根っこをノイルが掴んだ。


 「何を言っている。ゴールドドラゴンなら、何頭も倒したと言っただろう。」


 繰り返すが、正確には54頭である。


 「ガイス、俺以外の全員にダークルームを使え。魔力の色からして、ライトゴールドドラゴンだ。後は、全員そこから見ていろ。一瞬で蹴りをつける。」

「お兄様、1人で戦われるつもりですか!?」


 尚も不安がるフィアの頭を撫でて、ノイルは優しく言った。


 「大丈夫だ。俺は強い。フィアも強い。俺たちはみんな強い。ガイスのルームの中にいれば、傷1つ付かない。お前らは、もう出来損ないじゃなく最強だろ?」


 その言葉に、全員がはっとさせられる。

フィアが、自分の頭を撫でていたノイルの手を強く握った。


 「分かりました。ここは、お兄様にお任せします。」

「ノイル、早く帰ってきなさいよ。」

「ノイル君、頑張って。」

「みんなの守りは、任せろだぞっ。」


 ノイルは胸の前で拳を強く握り、「ああ」と答えた。

そして、ライトゴールドドラゴンの魔力がする方へ駆け出す。


-話している間にだいぶ近づいているな。

 魔力が濃くなっている。

 残り50mといったところか。


 しかし、100m走っても魔力が濃くなるばかりでライトゴールドドラゴンの姿は見えない。


-おかしい。

 この魔力なら、もう真上にいてもいいはず。


 と、さらに50m走ったところでようやくその巨体があらわになる。


 「何!?」


 その姿を見たノイルは、思わず叫んだ。

ノイルがこれまで戦ったどのドラゴンよりも2倍は大きい。

そしてどのドラゴンよりも高い魔力を有していた。

暗闇に、ライトゴールドドラゴンの金色の眼が光る。


-あれはまさか魔眼か!?

 魔眼を持つ魔物など聞いたことがないぞ!?


 その目で確かにノイルを捉えたライトゴールドドラゴンが、攻撃を開始した。


-ゴガァァァァ!


 巨大な光の弾丸が、圧倒的なスピードで20個放たれる。


 「空離剣ナンバーフォー!」


 ノイルはすんでのところで、その全てを回避した。

その代わりに、弾丸の衝突した盛りの木々がなぎ払われ炎上する。


 「こいつは、なかなかエグイな。」


 この時、ノイルは確信した。

これほどの魔力を持つ魔物が、迷子になるはずがないと。

それすなわち、この魔物が誰かに操られているのだと。

ノイルはその誰かを考え始める。

もちろん、空離剣ナンバーフォーを使ったままなのでライトゴールドドラゴンの攻撃は当たらない。


-誰が操っている?

 1番可能性が高いのは学院長だ。

 ただ、奴からはそんな莫大な魔力は見えなかった。

 しかし、それ以外の選択肢が浮かばない。


 ふと、ノイルは視界の隅に人影を捉えた気がした。


-フィアたちか?

 いや、俺は信頼してくれている以上はこっちに近づかないはずだ。

 つまり…


 「第三者がこの場にいるな。」


 そしてノイルは元の空間に戻り、人影のあった方へ一気に距離を詰める。


 「空滅剣ナンバースリー。」


 人影は消えていたが、そこには金色の髪の毛が落ちていた。


 「手がかりには間違いないな。」


 ノイルがそれをしまうと、ライトゴールドドラゴンからまたもや弾丸が飛んでくる。

その全てを回避すると、ノイルはライトゴールドドラゴンの魔眼を見すえて言った。


 「どこの誰に操られたか知らんが、もう十分だ。終わりにしようぜ。」


 もちろん魔物に人の声が届くはずもなく、さっきよりも多い24個の弾丸がノイルを襲う。

その瞬間、ノイルの口角が上がった。


 「魔弾剣ナンバーセブン!」


 ノイルが24回、剣を振る。

全ての弾丸を斬った。

いや、弾いた。

24個の光の弾が、それを生み出したライトゴールドドラゴンに向かって飛んでいく。


 これが、「魔弾剣ナンバーセブン」。

ノイルが新人戦前の2ヶ月間で練習していた、7つ目の技である。

全ての魔法を斬るのではなく、全ての魔法を魔力そのままに弾き返す。

つまり相手が攻撃魔法を使ってくれれば、魔力0のノイルも同等の攻撃魔法が使えるという訳だ。


-ゴガガガァァァァァ!!


 全ての弾丸をまともに食らったライトゴールドドラゴンは、そのまま地面に落下した。

ノイルがその傍に寄って剣を振る。

ライトゴールドドラゴンの巨体が、消滅した。


 「さて、フィアたちの方へ戻るか。」


 ノイルが歩き出す。



 「やはり、現れたわね。七剣セブンソードの使い手が。」


 その姿を木陰から見守る影があったことに、ノイルは気が付かなかった。

人影の金髪が揺れる。

「ふふっ」と笑いをこぼして、影は闇に溶けていった。

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