第22話 それって「兄妹のコンビプレー」ってことだよね?
「行ってらっしゃい。頑張って来るのよ。」
レミルスに見送られ、ノイルたちは学院を出発した。
クエストの間は、学校を公欠扱いとなる。
進級に何ら影響はない。
「お兄様、まずはどこまで進みますか?」
フィアが、地図を見ながらノイルに聞く。
今日ノイルたちが目指すのは、南の森「カンク」だ。
勇者学院からは、歩いて丸1日程の距離がある。
空滅剣を使えばすぐに着かないこともないのだが、目立ちすぎるので歩いていくことにした。
「そうだな。まずは、このラルークという街まで進もう。そこで1度休憩し、日が暮れるまでにカンクに到着する。どうだ?」
4人とも、緊張した面持ち頷いた。
-少し、表情が固いか。
まぁ、緊張する気持ちも分からないではないが。
4人の緊張を解すべく、ノイルが言う。
「そう顔を強ばらせるな。もし、俺たちがこのクエストを完璧にこなしたらどうなる?」
「学院長の思惑が外れる…?」
ロスタの言葉に頷き、ノイルは続けた。
「そうだ。また1つ、貴族からの勝ち星が増える訳だな。どうだ?ワクワクしないか?」
4人とも、今度は笑って頷いた。
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「ノイルを始めとする生徒5人、クエストへ出発致しました。」
院長室で、レミルスが窓の外を眺めるフレストに報告する。
「そうか。報告ご苦労。これで、厄介払い完了じゃな。」
フレストの言葉に、レミルスは眉をひそめた。
「どういうことです?」
すると、フレストは向き直って言った。
「実は、カンクにブロンズドラゴンとは別の魔物を放っておいたのじゃ。その魔物とはな…」
「何ですって!?」
フレストが口にした魔物の名前に、レミルスは驚きの声を上げた。
「で、でも、どうしてそんな魔物を?それに、『魔物を放つ』なんてことが出来るのですか?」
フレストが、意地の悪い笑みを浮かべて答える。
「なぜ出来るかは、ワシにも分からん。この間から急に、魔物と心を通わせられるようになったのじゃからな。それでも、なぜやるかは簡単に答えが出る。」
少し間を空けてから、フレストは鋭い眼光でレミルスを見て続ける。
「これ以上、貴族でない者たちにのさばられては困るのじゃよ。ここで奴らを消し、正しい勇者学院を取り戻すのじゃ。」
「しかし、勇者学院の実力主義は代々の理念では?」
「知ったことか。」
フレストが吐き捨てるように言う。
「今のワシにあるのは、ただ奴らを消さねばならぬという衝動のみ。そのためなら、手段は選ばぬ。」
そして冷酷な笑みを浮かべる。
その目は到底人のそれとは思えない程、狂気に満ちていた。
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日が暮れる直前になり、ノイルたちはカンクに辿り着いた。
夜が迫り、森の暗闇がその黒さを増して不気味な雰囲気を醸し出している。
ロスタが上ずった声で言った。
「ね、ねぇ。本当に今から行くの…?朝まで待ったりしないの…?」
「安心しろ。」
そう言うと、ノイルはフィアとアイコンタクトを取る。
フィアが頷き、光魔法を発動した。
「ムーン・ボール。」
フィアの手から小さな輝く球体が浮かび上がり、5人の頭上を照らす。
ノイルたちの周りだけ、真昼のような明るさだ。
「ありがとう、フィア。」
「いえ、お兄様♡」
ノイルに褒められて、フィアが照れのあまり体をくねらせる。
ムーン・ボールに照らされた影も、同じく揺れた。
「どうだ?これで進めるだろう?」
ノイルが言うと、ロスタは力強く頷いた。
森の中に入ってから、ノイルはずっと真眼を使い周りの様子を探っている。
-やはり、ラピリアや魔王城と比べると魔力が弱いな。
この程度なら、フィア1人でも十分だろう。
そんなことを考えていると、ノイルはやや強い魔力を発見した。
ゴールドドラゴンの魔力に似ているが、それよりもはるかに弱い魔力。
ブロンズドラゴンの魔力だ。
「少し止まれ。」
ノイルは4人を立ち止まらせると、改めて魔力を見極めにかかった。
-間違いない。
弱くてもドラゴンの魔力だ。
それに青色ということは、学院長の言っていたウォーターブロンズドラゴンだろう。
すると、ウォーターブロンズドラゴンの魔力がわずかに強くなる。
ウォーターブロンズドラゴンが近づいてきているのだ。
-真っ直ぐこちらに来ている訳ではないな。
まだ気付かれていないということだ。
それなら、先制攻撃で叩くまで。
ノイルは4人の方を向くと、素早く指示を出した。
「ウォーターブロンズドラゴンが近づいている。まだ、こっちには気付いていないようだ。変に大魔法で他の魔物を刺激しても面倒臭いことになる。一瞬で決めるぞ。」
「なら、私のメテオライト・フォールは無しね?」
「ああ、すまないな。」
リンテに答えてから、今度はフィアに言う。
「ここは、フィアと俺で戦ってみよう。フィアは思いっきり、グラウンド・ボールを撃ってくれ。あとはそれを、俺が魔増剣で増やす。いいか?」
「分かりました、お兄様。」
「よし。」
顔を見合わせて頷くと、2人は駆け出した。
同時にガイスがロックルームを発動する。
2人が明るい炎に包まれた。
ウォーターブロンズドラゴンの巨体がその明るさに気付き、ノイルたち2人の方へ飛んでくる。
「今だ!」
剣を鞘から抜き、ノイルは叫んだ。
その声を受けて、フィアが全力の攻撃魔法を放つ。
「グラウンド・ボール!」
勢いよく放たれた弾丸が、少し前を走っていたノイルの横をかすめる。
時間にして約0.1秒。
その刹那の間に、ノイルは剣を8回も振った。
「魔増剣!」
8個に増えた弾丸が、ウォーターブロンズドラゴンを完璧に捉える。
-グォォォォ!
ノイルが、修行中に何度も聞いた断末魔の咆哮が上がった。
見事な、兄妹のコンビプレーだ。
-よし、完璧だな。
ノイルはウォーターブロンズドラゴンに近づき、その息が絶えていることを確認する。
フィアたちも傍にやってきた。
もう既に、ファイヤールームは解かれている。
「やりましたね、お兄様!」
「だな。」
フィアは、自分の魔法でブロンズドラゴンを倒したことが信じられないといった感じだ。
かなり興奮している。
多少は、兄との共同作業という興奮もあるのだろうが。
「これが、ドラゴンなのね。」
「うわ、すごく大っきいよ。」
「2人とも、これを一瞬で倒すとはさすがだぞっ!」
3人も、ドラゴンを見て口々に感想を述べる。。
と、ノイルは猛烈な違和感を覚えた。
真眼を凝らす。
すると、明らかにブロンズドラゴンのレベルではない魔力が広がっていた。
-この魔力は、まさかゴールドドラゴンか?
ノイルの思考も束の間、カンクに響くはずがない咆哮が響く。
-ゴアァァァァ!!
そのけたたましさは、まさしくゴールドドラゴンのものだった。
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