第21話 それって「クエスト依頼」ってことだよね?
「夜分遅くにすまんのぉ。」
院長室にやってきたノイルたちの前に、学院長であるフレスト・ロードレイが座っている。
準々決勝後にノイルを馬鹿にした、例の白ひげの老人だ。
「何か用か?」
ノイルの言葉に、背の高い男が反応した。
「学院長の前だぞ!口を慎め!」
そして、ノイルの頬目がけて張り手を飛ばす。
しかし、その手は空を切った。
「すまんな。何せ、日中にあんなことを言われたばかりだ。少しは警戒もするというものだろう。」
男はノイルを、忌々しげに見る。
ノイルは、予め自分たちの空間を空離剣で斬り離していたのだ。
「警戒した方が良い」という、ナタリアのアドバイスを受けてのことだった。
「昼の件が気に触ったのなら、謝ろう。じゃが、わしがお主らを呼んだのはそんな目的のためではない。」
少し間を置き、フレストは言った。
「お主らに、クエストの依頼をしたいのじゃ。」
「クエスト…だと?」
「クエスト」とは、魔物討伐の任務のことだ。
通常は、勇者学院の卒業生である勇者隊が引き受けることになっている。
「私たちはまだ1年生ですが。なぜ、クエストを私たちに依頼するのでしょうか?」
フィアが質問する。
「確かに、お主らは1年じゃ。じゃが、1年とは思えぬほど強い。そこで、勇者学院の生徒をクエストに参加させるための試験としてお主らが選ばれたのじゃ。お主らなら、強い魔物相手にも死ぬことは無いじゃろ。」
「つまりは、実験台になれということか。」
ノイルが言った。
「悪く言えばそうなるかの。じゃが、これはお主らの力を信用してこその依頼じゃ。上手く事が運べば、勇者学院のより一層の発展に繋がるのじゃよ。どうじゃろう、やってくれるかのぉ?」
ノイルは意外にも即答した。
「分かった。そのクエスト、受けよう。」
「お兄様!?」
フィアが驚く。
ノイルはあっけからんと言った。
「何、気にするな。魔物を狩ってくるだけだ。難しいことではあるまい。」
「ほぉほぉ。頼もしいのぉ。」
フレストが笑みを浮かべる。
それとても下卑た笑みだった。
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ノイルたちが帰った後、背の高い男がフレストに言った。
「上手くいきましたね。」
フレストがまたあの笑みを浮かべて答える。
「ああ、馬鹿な奴らだ。」
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「お兄様、本気ですか!?」
改めてナタリアの部屋に戻ったノイルを、フィアが問い詰める。
「資料を見てくださいよ。これですよ!?」
フィアは、ノイルの前に学院長から渡された資料を突きつけた。
討伐対象のモンスターとして、「ウォーターブロンズドラゴン」の名が記されている。
「ブロンズドラゴンなんて、勇者隊の中でも選ばれし人たちが討伐するモンスターですよ!?これは明らかに罠です!」
「確かにな。」
ノイルも、これが学院長からの罠であることは分かっていた。
ノイルたちにあえて難しいクエストを与え、それを失敗させて笑い物にしようというのだろう。
あるいは、レベルの高いモンスターと戦って死ねばいいとすら思っているかもしれない。
「罠だと分かってて、この話に乗ったんですの?」
「そうだ。」
ナタリアの問いに、ノイルは即答する。
「俺は、ブロンズドラゴンなんか見たことがないが、」
「それはみんな一緒よ!」
リンテのツッコミが入った。
「ただ、ゴールドドラゴンなら何頭か倒した。それより弱いブロンズドラゴンも、普通に倒せるだろう。」
全員があっけに取られる。
「ノ、ノイル君。今何て?」
「ん?ゴールドドラゴンなら何頭か倒したと言ったぞ。」
正確には、54頭である。
「で、でもゴールドドラゴンってドラゴンの最強格だよ?それを倒したって言うの?」
「そうだ。だから、ブロンズドラゴン相手でも問題あるまい。」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。」
リンテが慌てて言う。
「確かゴールドドラゴンって、ラピリアにしかいないはずよね?前に言ってたあんたの修行場所ってまさか、ラピリアなの?」
「いや、もう1つゴールドドラゴンが生息する場所がある。」
そしてノイルは、少し間を開けて言った。
「魔王城だ。俺は、そこで修行をした。」
全員、動きが止まる。
思考回路が完全にショートした。
秒針が2周して、ようやく時が動き出す。
「はぁぁぁぁ!?あんた、魔王城に行ったの!?この世界最悪のあの魔境に!?」
リンテが大声を張り上げる。
ノイルは、平然と答えた。
「いや、なかなか住みやすいところだったぞ。手頃な魔物もいたしな。」
「あんたねぇ…」
リンテがあきれかえると同時に、先程ショートしたフィアたちの思考回路が暴走し始めた。
「さすがです!お兄様!」
「うん。すごいね、それならこのクエストも余裕だよ。」
「ノイル君はすごいぞっ!」
その光景を、リンテやナタリア、ヒュルミエが呆然と見つめる。
そんなリンテに、ノイルが声をかけた。
「どうした、リンテ。ひょっとして、不安なのか?」
「ふ、不安なんかじゃ全然ないわよ!」
ツンデレのテンプレのようなセリフで、リンテが答えた。
「安心しろ、俺が守ってやろう。」
「あ、あんたなんかに守られなくても平気よ!私が、ドラゴンなんか隕石でやっつけてやるんだから!」
リンテが両手をぶん回す。
他のパーティーメンバー同様、ハイになってしまったのだ。
その様子を見て、ノイルは言った。
「よし、明日出発するぞ。」
4人が「おー!」と答える。
その流れを見ていたナタリアが、ヒュルミエにボヤいた。
「そりゃ、強いですわよね。」
「ええ。」
「そりゃ、勝てませんわよね。」
「ええ。」
明日、出発である。
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