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第16話 それって「火だるま作戦」ってことだよね?

 「それでノイル。作戦はどうするの?」


 迎えた新人戦。

会場は、学内の森。

いよいよ、ノイルたちのトーナメント初戦が始まる。

対戦相手は、A組のディノンノ・ケールという男子生徒が率いるパーティーだ。

直前にノイルが真眼で見たところ、三能スリーが2人に二能ツーが3人の構成だった。


 「とりあえず、私がメテオライト・フォールを使って…」

「いや、待て。」


 リンテの声を遮って、ノイルが言った。


 「初戦から、いきなりメインの攻撃魔法を見せてしまうのはつまらないと思わないか?」


 ノイルの顔は楽しげに笑っている。


 「じゃあどうするの?」

「初戦の作戦だが…」


 ノイルがささやき声で作戦を伝えた。


 「あはははは!それは、すごく面白い作戦だぞっ!」

「さすがお兄様です!」

「さすがだよ、ノイル君。」


 ノイルの作戦に4人が爆笑する。


 「本当…あんた…よくそんなこと思いつくわね…あはは…。」


 リンテが笑い泣きしながら言った。


 「では、これでいこう。」


 そう言うと、ノイルはリーダー同士の挨拶へ向かった。


 「いやぁ。君たちが初戦の相手でラッキーだよ。」


 黒髪の短髪で眼鏡をかけた男子生徒が、意地の悪い笑みを浮かべて言う。

その口ぶりには、絶対に負ける訳が無いという余裕が漂っていた。


 「君たちってさ、出来損ないだから貴族の家を追い出されたって聞いたよ?本当、僕たちと同じステージに立つってだけでおこがましいよね。」


 男子生徒、相手リーダーのディノンノの嫌味をノイルは聞き流す。

ディノンノなどに構わず、ノイルは真眼を使って冷静に相手の戦力を分析していた。


-ふむ、水属性は1人だけか。

 しかし、そいつも二能ツーで光属性の魔力の方が強い。

 やはり、さっきの作戦が最適だな。


 「ねぇ、出来損ないさん。聞いてんの?」


 ディノンノがいらだって言った。


 「おっと、すまない。すぐに勝ててしまう未来が、はっきりと見えすぎてしまってな。少し、ぼーっとしてしまった。」

「何だと…?」


 ノイルの挑発は、ただのやり返しではない。

あえてディノンノをいらだたせることで、彼の詳細な情報を得ようとしているのだ。


-いらだつと、地属性の魔力が強まったか。

 こいつは三能スリーだが、1番得意なのは地属性なのだな。


 これが、サリシアの言っていた「相手の心理や大まかな思考が分かる」真眼の力だ。

ノイルは、六剣シックス・ソードだけでなく真眼もどんどん高い精度に向上させていた。


 「まぁいいさ。出来損ないは今のうちに吠えておけ。エリートと落ちこぼれの差を直ぐに見せてやる。」


 吐き捨てるように言うと、ディノンノは自らの陣営に戻った。

ノイルも、戻って準備を整える。


 「いいか。相手は完全に油断している。初戦は一瞬で終わらせるぞ。」


 ノイルが、改めて作戦を伝達する。


 「俺は、リーダーの黒髪を叩く。フィアはあの女子生徒、ロスタはその隣の男、ガイスはあっちの男を頼む。リンテは、黒髪の隣にいる女だ。」


 4人が頷いた。


 「この試合で使う技は2つだけ。フィアやリンテ、ロスタにはやや不満かもしれないが、勝ち進んでいけば必ず各自の技を使う時が来る。とりあえず、この初戦を突破しよう。」


 全員で、「おー」と拳を突き上げる。

ノイルが準備完了の合図を送った。

監督者は、B組を担任する男性教師だ。

両パーティーの準備が出来たことを確認し、男性教師が声を上げた。


 「1回戦開始!」


 ノイルたち5人が、しっかり互いの顔を見合わせて頷いた。


-行くぞ!

 行きますよ!

 行くわよ!

 行くよ!

 行くぞっ!


 ガイスが魔法を発動する。


 「ファイヤールーム!」


 ノイルたち全員が、炎に包まれた。


 「何…やってんだ…あいつらは…?」


 ディノンノ側が、あっけに取られる。

しかし、ディノンノは直ぐに状況を理解した。

いや、状況を勘違いした。


 「はっ、何かの防御魔法か!?いきなり逃げとは、さすがは落ちこぼれだな!」


 防御魔法というのは間違っていない。

ガイスもそのつもりで開発した魔法だ。

しかし、ノイルの六剣シックス・ソードと組み合わせることで「ファイヤールーム」は防御魔法の域を超えた。


 「空滅剣ナンバースリー!」


 ノイルが、自パーティーと相手パーティーとの間を斬る。

当然のごとく、ディノンノ側の前にノイルたち5人が出現した。

そして、その5人は「燃えている」のである。


 「ば、馬鹿な!早く防御魔法を…っ!」


 ディノンノが慌てふためく。

魔力の乱れから、ノイルはそれをより鮮明に感じとった。

ノイルが開始前に目をつけていた二能ツーの女子生徒が、水属性の防御魔法を発動しようとする。

しかし、遅すぎた。


 「ウォータ…」

「行け!」


 ノイルの掛け声で、フィアたちがそれぞれの担当生徒に向けて「体当たり」する。

繰り返しになるが、ノイルたちは「燃えている」のである。

どうなるかは、目に見えていた。


 「熱い…っ!」

「お、おい突っ込んでくるなよ!うわぁぁ!」

「きゃー!!」


 ノイル曰く、名付けて「火だるま作戦」である。

一応、新人戦では治癒士ヒーラーの教師がついているため、どんな攻撃も許されることになっている。

とはいえ、ディノンノたちも開始数秒で燃やされるとは思っていなかっただろう。


 「言っただろう?勝てる未来がはっきり見えた、と。」


 そう言うと、ノイルもディノンノに体当たりした。


-1回戦

 勝者:ノイル フィア リンテ ロスタ ガイス

 敗者:ディノンノ ケントナ ガシェル ファリー トアント

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