第14話 それって「初勝利」ってことだよね?
「君がノイル君だよね?」
パーティー結成翌日、午前中の座学を終えて食堂に向かおうとしたノイルたちに、1人の男子生徒が声をかけた。
「そうだが。」
「午後の実践で、試しに模擬戦の相手になってくれないかな?」
基本的に、午後は各パーティーごとに内容を決めて実践を行うことになっている。
ただし、模擬戦を行う場合は教師の許可が必要だ。
「それは構わないが、許可は取ってあるのか?」
「もちろん。それじゃあ、訓練用の森で待ってるよ。」
そう言うと、男子生徒は別の生徒の方へ走って行った。
おそらく、彼のパーティーメンバーだろう。
「今の生徒を知ってるか?」
ノイルの質問に、フィアが答えた。
「よくは知りませんが、名前くらいなら。アトミア家の次男、セリユス・アトミアさんです。」
「なぜ俺たちに、対戦を申し込んできたのだろうな。」
「悪意は感じなかったし、たまたま目についたんじゃないの?」
-そんなところか。
リンテの言葉に納得したノイルは、食堂へ向かった。
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「それでは、セリユス班とノイル班の模擬戦を行います。」
模擬戦の場所は、昨日ノイルたちが隕石を落とした場所の反対側だ。
「各パーティー準備をしてください。5分後に開始とします。」
監督者を務めるレミルスの声で、各パーティーが固まって作戦を確認する。
とはいっても、結成したばかりのパーティーでは連携などほとんど無い。
軽い動きの確認くらいだ。
「で、どうしますか?お兄様。」
「そうだな。勝負をつけようと思えば、1分もかからない。みんながそれで良ければ、さっさと終わらせてもいいと思う。」
「僕としては、さっと済むのがいいと思うぞっ。」
「僕もそうかな。」
「私もよ。」
-決まりだな。
「やることは簡単だ。リンテが、メテオライト・フォールで隕石を出す。それを、俺が斬って落とす。どうだ?」
「はい!さすがお兄様、完璧な作戦です!」
「こんなの、作戦とも言えないわよ…。」
リンテが冷静にツッコンだ。
模擬戦では、開始前に各パーティーのリーダーが互いに挨拶を交わすルールになっている。
「よろしく頼む。」
「ああ、よろしくね。」
「少し聞いてもいいか?」
「なんだい?」
セリユスがにこやかな顔のまま、首を傾げる。
「なんで、急に俺たちに声をかけたんだ?」
ノイルの質問に、セリユスの表情が嘲笑へ変わった。
「そりゃ、全員が貴族の家を追い出された落ちこぼれでしょ?気持ち良く勝てそうじゃん。」
-なるほど。そういう理由か。
セリユスが尚も挑発する。
「まぁ、せいぜい3分ぐらいは持ってくれよ?」
ノイルも、皮肉な笑みを浮かべて返した。
「そちらこそ、3分ぐらいは持ってくれ。」
「何様のつもりだよ。」
セリユスが不快な顔でパーティーメンバーの元へ戻って行く。
ノイルも戻った。
「何を話してたのよ。思ったより、長かったわね。」
リンテが、待ちきれないという風に言う。
ノイルは、一通りの会話を4人に話した。
「随分と、舐められているようだぞっ!」
「本当ね。だから貴族は嫌なのよ!」
リンテとガイスが憤慨した。
ノイルがなだめるように言う。
「実戦が始まればこちらのものだ。瞬殺してやろう。」
全員が強く頷く。
ノイルが、レミルスに合図を送った。
相手パーティーは、もう準備が出来ていたようだ。
「それでは、開始!」
レミルスの声で、セリユス班が動き出す。
「メテオライト・フォール!」
リンテも、攻撃魔法を発動した。
頭上に大きな隕石が現れる。
「避けろ!衝撃波に備えて、結界を張れ!」
セリユス班が散開し、防御職の生徒が結界魔法を発動した。
いや、しようとした。
結界が完成する前に、5個の隕石が落下したのである。
もちろん、直接当たっては死んでしまうので頭上30cm程のギリギリの位置で止まっている。
「馬鹿…な…?」
「何…で…?」
両パーティーから、驚きの声が上がった。
それもそのはず。
ノイルのパーティーメンバーたちが聞かされていたのは、「空滅剣で隕石を落とす」ということだけなのだ。
「魔増剣で人数分に増やした隕石を空滅剣で落とし、空離剣を使い頭上30cmのところで空間から斬り離す」などということは聞いていないのである。
両パーティー、あっけに取られてしまった。
「そこまで!勝者、ノイル班!」
レミルスの声が響く。
ノイルたちのパーティーにとって、記念すべき初勝利だ。
勝負が決したのを確認し、ノイルが魔滅剣で隕石を消し去っていく。
セリユス班はまたもや、あっけに取られた。
「何なんだ…お前は…。」
セリユスがノイルを睨みつける。
「ただの貴族の落ちこぼれだ。」
ノイルは一言だけ答えて立ち去った。
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「お疲れ様でした!」
午後の授業も終わり、ノイルたちは祝勝会をしていた。
会場は、ノイルとフィアの部屋だ。
「愛の巣」が云々とフィアがごねたのだが、結局フィアはお兄様の言うことを聞いて部屋を開放した。
「それにしても、あんな技で戦うとは思わなかったぞっ!」
「あんな技」とは、魔増剣のことだ。
一応ノイルは六剣の解説をしたものの、まだ見せたことは無かった。
「ああ、ちょっとしたサプライズだ。」
「というか、1個1個の技を出すのが早すぎるのよ。あの短時間で3つの技を使っただなんて、本当に信じられないわ。」
フィアを除く3人のノイルを見る目は、驚きを通り越して呆れである。
フィアはもちろん、「お兄様大好き!」という目だ。
「そう驚くほどのことではない。相手が結界を張るのが遅すぎたならな。ガイスなら、もっと早く張れただろう?」
「確かにその通りなんだぞっ。」
「ガイスもガイスで異常なのよ!」
この5人の中にあって、リンテがツッコミ役としての立場を確立しつつあった。
「それにしても、模擬戦がこの調子では新人戦も大したことなさそうですね。」
「新人戦か…。」
勇者学院では2ヶ月後に、1年生の全パーティーによる対抗戦が行われる。
それが、通称新人戦だ。
「当面1ヶ月は、各自がレベルアップを図る形でいいだろう。その後は、連携を高めていくという感じでどうだ?」
「いいと思うぞっ!」
「はい!私もお兄様の力になれるよう、頑張ります!」
リンテとロスタも頷いた。
-1ヶ月か…。
アレを試してみる期間にするかな。
ノイルの頭の中には、新たな剣術の技が閃いていた。
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