第13話 それって「出来損ないたちの過去」ってことだよね?
ノイルたちは、「ちゃんとした魔法が使えない」というリンテの攻撃魔法を見るために、勇者学院の敷地内にある森にやってきた。
この森は、より実践的な訓練を行うために設けられているもので1つの街ほどの広さがある。
その外れの方で、リンテが攻撃魔法を発動しようとしていた。
「わ、笑わないでよ!」
「笑わないさ。気にせず、思いっきりやってくれ。」
「行くわよ。メテオライト・フォール!」
リンテの声に合わせて、ノイルたちの頭上5mに直径10mはあろうかという巨大な隕石が浮かび上がった。
かなりの大魔法だ。
さすがは、魔力2000超えといったところか。
「ちょっ!リンテさん!?」
フィアたちが慌てふためく。
「ま、まさかこれを落とすんじゃないでしょうね!?」
ノイルは動揺する3人を落ち着かせると、なぜか顔の赤いリンテに言った。
「俺が斬るから気にするな。思いっきり落とせ。」
「…してるわよ。」
リンテが赤面したまま何かを呟く。
「すまん。聞こえなかった。」
「落としてるわよって言ったのよ!今、現在!隕石は落下中なの!」
その言葉にノイルたちは上を見上げたが、隕石の位置はまるで変わっていない。
ノイルは完全に察した。
「つまり、『ちゃんとした魔法が使えない』というのは速度が遅すぎるという意味か。」
「ええそうよ!なんか文句ある!?」
噛みついてくるリンテに、ノイルは平然と言った。
「そんなことなら、気にするな。このパーティーにいる限り、速度の遅さなど何の問題にもならない。むしろ、これだけの大きさの隕石を落とせるのだ。最高の攻撃魔法だろう。」
「速度が問題にならないって…本当?」
「ああ。見ていろよ。」
そう言うと、ノイルは剣を抜いて隕石のちょうど真下に立った。
やはり、動いているようには見えない。
「衝撃波もあるだろうから、しっかり距離を取れ!いいな!」
フィアたちにしっかり距離をとるよう促すと、ノイルは隕石をしっかりと見据えた。
「まさかお兄様、それを落とすんじゃないですよね!?」
「落とすぞ!だから離れておけ!」
「ほ、本当に落とすの…?」
フィアたちが慌てて走り出す。
-よし。もう大丈夫だな。
フィアたちが避難したのを確認し、ノイルは剣を振った。
「空滅剣!」
隕石と地面との間の空間を斬って消滅させる。
当然、0距離になった隕石は地面に激突した。
まるで、ノイルが木に激突しまくっていた時のように。
-ズガガァァン!
けたたましい音と砂ぼこりが上がった。
「お兄様ぁぁ!」
ノイルが下敷きになったと思ったフィアたちは、慌てて隕石に駆け寄る。
そんな心配をよそに、ノイルは隕石の上に座っていた。
「お、お兄様ぁ!無事でしたか!?」
「無事も何も、怪我をする要素がないだろ。」
「いや、ノイル君…。普通は怪我とかじゃなくて死ぬよ?今のは。」
呆れ返っているロスタの横に、ノイルが飛び下りた。
そして、衝撃で固まっているリンテに言う。
「どうだ。リンテが魔法を撃ち、俺が斬って落とす。速度など、何の問題にもならないだろう。」
「え、ええ…。そうね…。」
リンテはまだ放心状態だ。
「それにしても、あれだけほこりが舞ったのに一切汚れていないな。」
ノイルが他の4人を見て言った。
「うん。ガイスさんが炎の防御魔法を発動してくれたんだよ。」
ロスタの言葉を聞いてノイルが見ると、確かに焦げ跡がある。
それもかなりの広範囲にわたってだ。
「ガイス、そういえば君は魔力数値を言ってなかったよな。どれくらいなんだ?」
「あれ?自己紹介で…言い忘れたのかな。魔力数値はね、えっと…」
ガイスが、自分の証明書を確認する。
「えっと、4687だぞっ。」
「「「4687!?」」」
フィア、リンテ、ロスタの声が重なった。
声には出さなかったものの、ノイルも驚く。
魔力数値4000超えとなれば、勇者学院のほんのひと握りしか持たない数値だ。
「すごい…。」
「いや、それほどでもないぞっ。僕から見れば、ノイル君の方がすごいぞっ!」
ロスタの呟きに、ガイスが謙遜した。
そもそも、魔力数値の平均は400ぐらいだ。
1000を超えているフィアも十分すごいし、2000超えのリンテも特別な才能といえる。
おそらく、呪いが取り除かれた今のロスタも2000超えの魔力を持っているだろう。
-しかし、4000とはな。
ここまで考えて、ノイルはなぜガイスが家を出たのか不思議になった。
リンテやロスタの場合は何となく想像がつく。
しかし、圧倒的な魔力を持ち精度の高い魔法を使えるガイスが家を出る意味が分からない。
「ガイス、少しいいか?」
「どうしたんだい?」
「差し支えなければ教えて欲しいのだが、君ほどの才能の持ち主がなぜ家を出たんだ?」
ガイスはしばし逡巡した後、こう言った。
「立ち話もなんだからね。場所を変えないかい?」
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という訳で、ノイルたちは再び図書館に戻ってきた。
「僕が生まれたソーテスト家について、何か知っている人はいるかい?」
全員が首を横に振った。
「まぁ、遠い地方の家だから仕方ないね。ソーテスト家っていうのは、代々男しか生まれない家系。つまり、僕みたいな女の子が生まれるなんてことは前代未聞だったんだぞっ。」
代々男しか生まれない家系に生まれた女の子と、代々優秀な人材を排出する家系に生まれた無能。
ノイルは、自分とガイスを重ねて話を聞いた。
「女の子なんて出来損ないだ〜ってなっちゃって。それで、僕は男の子として育てられることになったんだぞっ。」
「その『僕』という一人称はそのせいか?」
「そうなんだぞっ。それでまぁ、ずっと男として生きさせられて来たんだけど勇者学院に合格した次の日くらいに耐えられなくなっちゃったんだな。家出をしちゃったんだぞっ。それで、今の僕はもう貴族の息子でも娘でもないって訳なんだぞっ。」
ガイスは終始明るめに話したが、性別を偽らされて生きさせられたのだ。
辛いことだっただろう。
「ガイスさんも、辛かったよね。」
ロスタが声をかけた。
「僕なんかもさ、ろくな魔法が使えないから出来損ないだって言われてきたんだ。それでも、親の面子のために無能だけど裏口入学させられちゃった。そんな実力無かったのにね。あ、今はもちろんノイルのおかげで変われたけど。エリートばっかりの中で、自分を偽るのは不安だったなぁ。」
リンテも頷きながら言った。
「私もよ。勇者学院に合格したって報告したら喜んだくせに、魔法を見せたら家の恥になるって追い出されたのよ。確かに合格出来たのは、魔法実践で隕石なんて落とせないから浮かべるだけで高い点になったからだけど。だからって、出来損ないって追い出すことはないじゃない。」
-出来損ない…か。
俺も、そうやって家を追い出されたんだったな。
ノイルの頭に、ふとゼリトリフの顔が浮かぶ。
頭を振って、ノイルはゼリトリフを追い出した。
そして、少ししんみりした空気を変えるべく声を上げる。
「何、家を追い出されたくらいで気にするな。現に、俺は剣術を磨いて強くなった。リンテの魔法の速度も解決された。ロスタも、治癒士としての道が開けた。俺たちは当然、ガイスを女性として受け入れている。そうだろう?」
みんなが頷いた。
「驕った貴族の言った言葉や、やったことなど気にするな。逆に見せてやろうじゃないか。奴らの言う『出来損ない』が『最強』になれるってことを。」
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